番外編「小さき守り神の日常」

 ボクはポチ。この土地を守る、大地の精霊だ。

 普段は森の奥で眠っているんだけど、この前、悪いニンゲンの罠にかかって動けなくなっちゃった。もうダメかと思った時、ボクを助けてくれたのがタクミだった。

 タクミは、なんだか不思議な匂いがした。他のニンゲンとは違う、暖かくて、優しい匂い。だから、ボクはこのニンゲンについていくことに決めたんだ。

 タクミのやることは、見ていて飽きない。

 最初は、臭い草やウンチを集めて山を作っていた。他のニンゲンたちは「汚い」って言ってたけど、ボクにはわかった。あれは、大地が元気になるゴハンだ。ボクもちょっとだけ、力を貸してあげた。そしたら、カチカチだった地面が、あっという間にふかふかになった。タクミはすごく喜んで、ボクの頭をいっぱい撫でてくれた。くすぐったいけど、嬉しい。

 タクミの畑で育つ野菜は、特別だ。

 ボクの力もあるけど、タクミの知識がすごい。野菜たちが気持ちよく育つ方法を、全部知っているみたい。だから、ボクも安心して力を注げる。そうしてできた野菜は、甘くて、味が濃くて、最高に美味しい!

 特に、タクミが作ってくれるゴハンは絶品だ。

 茹でたり焼いたりするだけじゃない。潰したり、混ぜたり、なんだかよくわからないけど、魔法みたいに美味しいものが出てくる。リナが作るシチューも美味しいけど、タクミのゴハンは、毎日食べても飽きない。

 最近、村の様子が変わってきた。

 最初はタクミのことをいじめていたニンゲンたちも、今では「タクミ先生」なんて呼んで、言うことをよく聞いている。タクミが作った美味しい野菜とゴハンのおかげだ。ニンゲンって、単純で面白い。

 でも、悪いやつもいた。

 ゴーンっていう、嫌な匂いのするニンゲン。タクミのこと、いっぱいいじめてた。雨が降らなくて、みんなが困っている時も、邪魔ばっかりしてた。ボク、ちょっとだけイタズラしてやったんだ。あいつが歩く道に、硬い木の根っこをにょきりと生やして、転ばせてやった。ざまーみろ!

 大変なこともあったけど、最後はみんな笑っていた。

 山みたいに積まれたカラカラ芋を見て、みんな泣きながら喜んでた。タクミも、すごく嬉しそうだった。その顔を見ていると、ボクも嬉しくなる。

 そして、昨日の夜。

 タクミが、リナに「ケッコンして」って言ってた。リナは、すっごく嬉しそうだった。二人がぎゅーってしているのを見て、ボクもなんだか胸がぽかぽかした。

 これから、もっともっと美味しい野菜が食べられそうだ。

 ボクは、この二人と、この村が大好きだ。

 だから、これからもずっと、ボクの力でこの土地を守ってあげようと思う。

 美味しいゴハンのために。そして、大好きなタクミとリナが、ずっと笑顔でいられるように。

 ボクは小さき守り神。今日も明日も、この幸せな畑の上を、元気に駆け回るのだ。

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