五話目 魔法少女は鍛えたい・つー

 ◇ ◇ ◇


 さてはて、どうしようかな。

 芹香ちゃん――クリムセリアの実力は今のでよくわかった。わかったけど、さぁ。なんていうか、その、あの。

 ……今の魔法少女、弱すぎない?

 いや、違うかな。弱いって表すのは語弊があるかも。ううん、魔法の使い方が悪いって表すのが一番適切かも?


 クリムセリアの魔法は炎を操る魔法みたい。その炎はどこから来てるのか、クリムセリアの魔力から生まれてるわけだ。そう、きっと、魔法への理解度が足りてないんじゃないかな。私が言うのもなんだけれど。

 とりあえず、クリムセリアを起こしに行こうか。ちょっと脅かしすぎちゃったみたいだから。

 でも、ああしないと魔法撃てないと思ったからなぁ。的があるのとないのとで、全然力の入れ具合って変わるし。あっ、てか係の人に言えば的ぐらい用意してくれたかな? 失念してた。


 あれぇ。だとすると、私が的になる意味、なかったかも?

 ……この考えは黙っておこうっと。


「クリムセリア、大丈夫?」

「……美羽、さん?」

「ごめんね。ちょっと脅かさないと撃てないかなって」


 すぐさま近くによって、その場で尻もちをついてしまっている芹香ちゃんへ起き上がる手助けの手を差し出す。

 腰抜けちゃったかな? と思ったけれど、大丈夫そう。

 私の手を取って、何とか立ち上がることができた。


「あと、ごめんだけれど、相手が変身中なら魔法少女名で呼ぶ癖をつけようね」

「あっ、はい。わかりました。えと、ルミコーリアさん」

「さんも外そう。上下関係がある様にみられるとまずいから」

「……わかり、ました。ル、ルミ、ルミコーリア」

「うんうん、その調子その調子」


 なんか少し照れてるみたいだけれど、何だろうね。

 まあ、今のが心の傷になってないみたいで良かった。かなり怖がらせちゃったみたいだから。

 大丈夫そうなら、ケアよりも本題に入っちゃおうか。


「まずわかったことなんだけれど……クリムセリア、あなたはまだ全力を出せてない」

「はい。……え?」


 大分意外だったのかな。凄い驚かれちゃった。

 それもそうか。これまで全力でやってたはずなのに、本気を出せてないーだなんて言われて驚かないわけないもんね。

 でもこれは、前向きに捉えれば強くなる余力がかなりあるってことだもん。悪いことじゃないよね。


「魔力って意識してる?」

「魔力、ですか? あの、魔法を使ってるときに使ってるらしいものですよね?」


 魔力の存在自体はちゃんと認識してるのね。じゃあ話は早いや。


「当然魔力を多く籠めれば魔法は強力になる。でも、それだけじゃ効率が悪いの」

「効率……ですか?」

「うん。なんて例えようかな……物を投げるとき、腕を思いっきり振るだけじゃなくて、ポーズとか投げ方も大事になるみたいなあれなんだけれど……」


 ふんふんと興味深そうに聞いてくれてる。

 ピンとは来てなさそうだけれど……いいかな! 大事なのは、クリムセリアが強くなることだから。


「ちょっと見ててね……」


 普段はそこまで意識してないけれど、今回は実演なのでわかりやすくしよう。

 ステッキを持つ手に魔力を込めて振るう。ぶおんと豪快な音が鳴った。

 次は、ステッキだけじゃなくて全身に魔力を込めて振るう。音だけじゃなくて、風が周囲に吹き荒れた。


「うん、こんな感じ。どう、わかった?」

「……あの、いいですか?」

「わからないことがあったら幾らでも聞いてね。何かわからないことがあった?」

「あの、その、魔力のそんな細かい動かし方、わからないです……」


 今度は私が目を丸くする番だった。

 魔力の細かい制御方法がわからない、か。考えたこともなかった。私はできるし。練習した覚えもない。

 だからといって、できないことを責めるのは間違ってる。できるようになる方法を考えなくちゃ。

 うーん。うーん。うーーーーーん。

 あっ、一個方法ひらめいた。


「クリムセリア、ちょっと手を出してくれる?」

「はい、わかりました」

「ありがと。よしっと」


 クリムセリアの手を握って、私は呼吸を整える。

 やったことはないけれど、多分できる。気がする。


「これから、私の魔力をクリムセリアに流します」

「えっ」

「それで色々と動かすので、体で魔力の動きを感じ取ってください」

「えっ」


 戸惑ってるけれど、これが一番早そうだから仕方がないよね。

 それじゃあ、魔力を流してっと。


「うっ、くっ。ル、ルミコーリア。これ、すごい、くすぐったいですぅ……」

「苦しいかもだけど、よく感じてね。魔力を細かく動かす感覚っていうのを、覚えて」

「うぅ……」


 クリムセリアは身もだえしてるけれど、本当に我慢してもらうしかない。

 数をこなして覚えてもらうでもいいのかもしれないけれど、感覚を知ってるのと知ってないのとでは練習効率も大きく変わる。

 ほら、体操とかでも補助ありでできる感覚を掴ませる練習法あるでしょ? それと同じようなものだよ。


 一通り全身の魔力を動かす感覚を味わってもらえたので、クリムセリアから手を放して解放してあげる。

 本当にすごくくすぐったかったのか、クリムセリアは息が凄い切れちゃってる。


「大丈夫? ごめん、そんなにつらかった?」

「はぁ、はぁ。はい、いえ! 大丈夫です」


 一瞬だけ本音が漏れてた気がする。聞こえなかった振りをするけれども。


「それで、どう? 真似できそう?」

「真似は……今すぐには無理そうです」


 クリムセリアはその場で、自分の中の魔力を上手く操ろうとしているけれど……うん、ぎこちなさそうだね。

 ただ感覚は確かにあるみたいで、ぎこちないながらも明らかに魔力の動きが変わってる。


「その調子でもう一回魔法撃ってみよっか」

「え?」

「いいからいいから。ほら、魔力の動きをしっかり意識して、魔法だけじゃなくて、魔法を放つときにも魔力を込めるのを意識して――」

「ク、クリム・フレア!」


 おっ、これはいい感じ。

 思った通り、放たれた炎の玉は、明らかにこれまでよりも大きな爆発を立てた。

 威力はまずまずの上がり具合かな。


「……ルミコーリアっ!」

「うんうん。強くなってたね」


 こちらを勢いよく振り返ったクリムセリアの瞳は爛々と輝いている。

 こんなに早く効果が出るとは私も思ってなかったけれども、強くなれるという実感を得られたのは良い成功体験じゃないかな?


 クリムセリアには、何回か同じように魔力の制御を意識して魔法を撃ってみてもらった。

 それで分かったのは、やっぱり細かい制御をすぐに意識するのは難しそうっていうこと。

 効果は出てる。前よりは強くなってる。でも、今すぐに一段階上に到達するのは難しい。そんな現実。


 こればっかりは継続して練習してもらうしかないのかな?

 何かいい方法はないかな? ちょっと、私の同期達の事を思い出してみようかな。

 あの子たちは何かいい方法を使ってたりは……あっ。

 そっか。そういう手もあるか。


「クリムセリア」

「はい、なんですか?」

「剣と弓、どっちがいい?」

「はい?」


 私の同期の子に、常に木剣を持ち歩いている子がいたんだけれど、その子はその方が魔法をイメージしやすいからって言ってた。

 つまり、今のクリムセリアに必要なのは、イメージしやすさなんじゃないかな。

 炎の玉を生み出して飛ばす。だと、どこにどう集中すればいいのかわかりづらい。けれど、剣にして振るったり、弓の矢に変えて飛ばすとかなら、魔力の制御をどうすればいいのかイメージしやすくなると思うんだ。


 そのことを説明してみると、これも驚いた様子だった。そんな発想があったのか、みたいな。

 なんか、今日驚きっぱなしだねってからかったら、頬を膨らませて怒られた。そしてお返しみたいな感じで抱き着かれて抱きしめられた。なぜに。


 そんな感じで、私たちの訓練初日は、クリムセリアが戦うためのスタイルを考えよう、というところで終わりを迎えたのでした。

 ……時間をしっかり見てたのは褒めて欲しいな。おかげで、芹香ちゃんは門限をきっちり守ることができたんだから。芹香ちゃん自身は、凄いまだまだ続けたそうにしてたけれど、中学生はきちんと門限を守ろうね! お姉さんとの約束だぞ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る