主人公の璃玖は目覚めると牢屋のなかにいた。異世界転生か異世界転移をしてしまったのだと、璃玖は慌てる。愛する家族やペットが恋しい。悲嘆に暮れる璃玖の前に、獣人ベルトホルトが現れる。
どうやら、ベルトホルトが璃玖を閉じこめているらしい。しかし、なぜかとても優しくもしてくれる。ベルトホルトとの不可思議な交流のなかで、二人はお互いを信頼し、特別な感情を育てていくのだが――
冒頭から謎がいっぱい!
ベルトホルトは璃玖に好意的なのに、上記のとおりで、なぜか彼を牢に閉じこめてるんです。
敵だから?
あるいは、璃玖が気づかぬうちに罪を犯した?
もしかして、璃玖を守るためなのでは?
と、この不思議な状況の理由に興味津々で読み進めました。しかも読み進むうちに、ベルトホルトと璃玖の関係がどんどん変化していって……謎だけでなく、この二人がどんな結末を迎えるのかも、ドキドキ、ハラハラしながら見守るようになりました☆
話が進めば進むほど、ベルトホルトと璃玖の関係は深まる。
なのに、こんなに大切にしている璃玖を自由にさせない、ベルトホルト。
……
…………
冒頭の謎が、ラストが近づけば近づくほど深まるんですよ。
で、最後に明かされる秘密に、ビックリしつつも納得!
四万字程度の中編とは思えない、読みごたえでした。
ちなみに、個人的に特に好きだったのは『幕間』エピソードです。
この『幕間』 はベルトホルトの視点で語られていて、彼の苦悩が手にとるように伝わってきます!
あと、作中に登場する動物たちの描写も必見!
作者様ご自身も、こういう動物たちが大好きなんだろうなというのが、文章の端々から伝わってきました♪
主人公の璃玖は、気が付くと見知らぬ場所にいた。どうやら、獣人たちが暮らし、魔法もある異世界のようだ。しかし、どうやってここにきたのか、何故ここにいるのか、全くわからない。
けれど、世話をしてくれる獣人のベルトホルトは、無口で不愛想だが、璃玖に優しくしてくれる。次第に彼に惹かれていく璃玖だが、やがて世界の真実が明かされる。
打ちひしがれる璃玖だが、顔を上げて一つの決断を下す――。
種族を越えて思い合う二人が、ひたすら尊いです。情景描写も美しく、物語に入り込むことができます。二人の物語を、その先にあるものに、思いを馳せてみてください。
世界観、そして主人公たちの関係性がとても魅力的な作品でした。
主人公である璃玖は気が付くと見知らぬ世界に来ていた。そこは今まで住んでいた場所とは異なり、「獣人」のようなものが支配しているのがわかる。
いわゆる異世界に来てしまったのかと戸惑う中で、璃玖は獣人のベルトホルトのもとに住まうことになる。「ニンゲン」である璃玖のような存在はこの世界では地位が低く、獣人たちに支配される状況にあることが見えてくる。
でも、ベルトホルトは何も知らずにこの世界に来てしまった璃玖のことを心配し、親身に身の回りの世話をしてくれる。
そうして少しずつ、璃玖はベルトホルトと過ごす時間を大切に思うようになっていき……。
なんといっても、璃玖の内面の揺らぎ、そして寡黙ながらも静かに璃玖のことを慮ってくれるベルトホルトとの関係性の変化していく様に強く引き込まれました。
そして、本作は「とある有名なSF映画作品(二本)」と世界観として合致するところがあります。
果たして、「その映画」とはどの作品か。映画好きながら読みながら推理していくのもまた一つの楽しみともなります。
璃玖とベルトホルトの間に横たわる、「とある事実」がもたらすもの。二人は一体どんな運命が待ち受け、どんな決断をすることになるのか。
壮大な一個の物語、強くオススメです!