第5話 うっかり百八兵衛のフェザータッチ
「それで、あなたがたはなんなのですじゃ。わが村になんのご用が……」
あらためてエッチ
夜もふけている。
「なに、そんな難しいことじゃァねぇ。一日にひとりでいい、村からイケニエを出してほしいだけだァ」
「い、イケニエを一日にひとり!? そんなことをしていたら、遠からずわが村から人がいなくなってしまいますじゃ。そんなご
「まあ、おれたちは別にいいんだぜ。任意でさし出してくれたほうが、よけいな体力をつかわずに済むってだけだからなァ。おれたちの神さま――〈サメ神さま〉は定期的に人を
「サ、サメ神さま!?」
それだけに海の怖さもまた、だれよりも
「ひぇあああ!!」
と悲鳴とともに腰をぬかした。
「ガッハッハ、なかなか想像力ゆたかな男のようだなァ! 先ほどもな、ずいぶんアバンギャルドな格好で海岸にいた
「か、海岸をひとり練り歩き、アバンギャルドな格好というと……村一番のファッショニスタであるおタカか!? あれほどそんな
「(格好は関係ないんだけど)まあ不運だったというほかないなァ。しかし、どうだ。おれも鬼じゃあねェ。村の人間を喰わせるのがイヤだというなら、いまは夏だ。祭りのひとつでも開催するんじゃねェか? 近隣の村から人を呼び寄せろ」
「た、たしかに『恋、しちゃお? 夏が大盛り悪ノリドキドキ大納涼祭』を四日後に開催する予定はありますが……」
「恋……なんて?」
「『恋、しちゃお? 夏が大盛り悪ノリドキドキ大納涼祭』ですじゃ。あ、むろんこの名前で最初から決まっていたわけではなく、『恋、してみる? 夏が大盛り悪ノリゴリゴリ大納涼祭』というのも候補にあったのですが……」
「ほとんど同じじゃねェか! とにかく、その祭りで人を呼び寄せ、大量に人を喰らわせてくれるンなら、しばらくこの村からイケニエは要求しねェと約束しよう」
「し、しかしその約束をまもっていただけるという保証は……」
「保証? そんなもんサメのエサにもなりゃしねェ。おまえらはおれを信用するしかねェんだよ。信じねェなら、いますぐ村をつぶす。村をつぶしたいのか、残したいのか、選択しなって言ってンだ。残したいなら、おれらにすがるほかはねェ」
武器もなく、屈強な野盗どもにかこまれたいま、反抗する手立てはない……。
それだけはなんとしても避けねばならぬ。
早くこいつらを追いはらって先ほどのつづきをしたいのだ。
「わかりました……従いますじゃ」
「あと言っとくが、『イケニエの要求をしねェ』というだけだ。祭りまでのあいだに海に近づくものがいれば、空腹のサメ神さまが喰っちまうのまではとめられねェ。村人には注意しときな」
「は、はい……」
「おれたちは海沿いに見つけた洞窟にいる。メシと酒ももらっていくぜ、大喰らいのヤツが多くてこまってるんだァガハハ」
ぞろぞろと野盗どもが出ていくとき、ひとりが「うぇ~い」と言いながらおババさまの肩へと軽やかにタッチした。
野盗一番の熟女好き――うっかり
「バカやろ! 許可も得ずに異性にふれるヤツがあるかァ! いや異性だけじゃねェ、あらゆる他人にまもるべき一線というものがある。おれの目のまえで、
「へい、すませんうっかりしてやした!」
うっかり
「愛の巣にジャマしたな」
そう言って、野盗どもは家を出、夜の闇にまぎれてゆく。
こんなことがあっては、さすがにそんな気分でなくなったかと思いきや、命の危険があったためかその反動で
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