第2話 忍者来たりて5秒でボキボキに折られる
サメの
その村の集落からかなりの距離を置いて、一軒のあばら
家には、両親を
娘は名を「おヒメ」といった。
彼女の親は生前「漢字にするなら
自身が「望まれない子」であったことを思い出させるこの名まえを、彼女は呪いのように感じていた。
彼女が家のそとに積んである
「おヒメぇぇぇ」
その者は村の若き男――「ゲス
ゲス
おヒメは「ひっ」と悲鳴をもらし、思わず尻をついてあとずさった。
「おっ
酔っているようだが、そればかりではない鼻をつまみたくなる口臭をただよわせ、ゲス
日ごろ野良仕事をしているだけあって、男のからだは、大きい。
同じく野良仕事に精を出しているおヒメではあるが、男女の体格差はくらぶるべくもない。
「やめっ、やめてぇ!」
手近にあった薪を投げ、男がひるんだスキにおヒメは
「たすけ、だれか、たすけて……!」
さけぶも、となりの家からは距離も遠く、日も暮れている。
日ごろの村からの扱いを考えれば、きこえたところで「自分をたすける者などない」というわかりきった事実が、おヒメの頭に重くのしかかってくる。
「逃げろ逃げろ。おらぁ、そのほうが
恐怖から足に力が入らず、ガクガクと山をのぼりかけたおヒメであったが、追ってきた男にあっさりとつかまってしまう。
男の
おヒメの抵抗もまたおのれの養分とするかのように、男がいきり立つ。
そうしておヒメの髪をつかみ、その頬をなぐる。
「痛ぇのは最初だけだぁ、すぐに
世にも醜い
おヒメの目からは涙がとめどなくあふれるが、しかしおのれの不幸を受けいれようとするかのようにくちびるを強く噛んで耐えようとする。
「これまで生きてきて、なんのよろこびがあったか……」
そのとき吐き捨てるようにこぼしたおヒメの
しかし――
「その粗末なモノ、しまったほうがよいでござるよ。失礼ながら拙者が手伝ってしんぜよう」
そう、突然どこかから声がひびいた。
まるで天から降ってきたかのごとき声に、ゲス
いったい、いつ、どこからやってきたのか。
ふと気づくと、彼のすぐとなりに、いかにも「忍装束でござい」といった服をまとった怪しげな男が音もなくたたずんでいた。
「なんだぁ、おめぇ……? 忍者みてなカッコしやがって。いまおらぁ忙しいんだ、さっさと
「ならばよかった、その忙しさを解消してしんぜよう」
「うっせ」
ゲス
忍者のような男はもろにその攻撃を受け、ボキボキと折れるような音を発してふっとんでいった。
「木の枝みてぇに
一瞬、まさか、天から
が、そのときであった。
「忍法、
お堂に鐘をひびかせたような、どこかぶきみさのにじむ
すると、先ほどボキボキに折られたはずの男の肉体が、なんということか、いく本もの折れた木の枝へ変じているではないか!
「おぬしも鈍い男でござるなぁ。ほれ、おのれの股間をとくと見よ」
今度はおヒメの頭の先に、気がつけば忍者が
忍者は言いながら、ふわりとおヒメに一枚の布をかけた。
「おめ、しつけぇヤツだなぁ……」
言いながら男が自身の股間へ目をやると、なんと、男の陰部がみじん切りされたウインナーのごとくモザイク
「うわぁぁぁ!! 痛でぇ、痛でぇよぉぉぉッ! おらのイチモツがぁぁッ」
悶絶する男をまえに、忍者はすっとクナイをとり出し、
「暴力でもって婦女子を手ごめにしようなど、言語道断。
と男のひたいにブスリと刺し、抜く。
そのひたいから、ブシャアアアと噴水のような勢いで血が
「あ、あ、ありがとうございます。なんと、なんとお礼を申してよいか……」
おヒメがかけてもらった布をかき寄せながら述べると、忍者は、
「なに、通りがかったついででござる。では、これにてごめん」
「お、お待ちください……!」
と呼びとめるおヒメに
ピクピクと指をふるわせ、その腹部からはグゥゥゥゥという音がはげしく鳴りひびく。
「こ、これは失敬。ちょっと、足が、もつれてしまい……」
と忍者が強がりらしきものを述べたところで空腹が頂点に達したのか、彼は失神してしまった。
おヒメはゲス
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