忍者 vs サメ
七谷こへ
第1話 砂浜に咲く真っ赤な「びきに」
暑い、夏の
それはいつの時代のことか、しかとは伝えられておらぬが、なんでも数百年前はむかしのことで、とあるちっぽけな
村の女が、ひとり、しずやかに砂浜を歩いていた。
例年よりもひときわ暑い夏の日のことで、女が少しの涼を求めたものか、判然とはせぬ。
女は、村一番のファッショニスタ「おタカ」であった。
ファッショニスタ――通常であれば「最先端のファッションを追い求める人」などの意味で用いられる語であるが、おタカは「最先端」などという言葉ではとうてい収まりきらぬ才能をもっていた。
その超越ぶりの
「なぜ?」
村の女は問うた。
「そこに、女の
おタカは夏の太陽のごとき熱で、答えた。
しかし……数百年前の、レジャーとしての海水浴という習慣さえなかったころの日本でのことである。
あまりにも
村の者にはファッションがわからぬ。
おタカの訴えはむなしく
「理解、されないものね……」
天才が、その才とともに与えられる孤独を、おタカもまた骨の髄まで味わっていた。
おタカはいまも「びきに」姿で砂浜をうろついている。
その
なめらかな白い砂浜。
青く透きとおった海。
そしてみずからの
これ以上のものがあろうとは思われぬ美の調和に、おタカはおのれのファッションセンスの正しさをあらためて確信していた。
「私は……美の普及を、あきらめない」
そう、決意を言葉にした、そのときだった。
海に、なにやら不穏な気配がただよったのである。
サメ映画の冒頭において、比較的高確率でビキニ美女がサメに喰われる……。
そのような事実を、サメ映画などまだ存在しない時代を生きる彼女が知らぬのは無理からぬことであろう。
しかし、知ると知らざるとにかかわらず、たしかににょっきりと、波を割ってあの三角のヒレが海に浮かびあがってきたのである!
バグンッッ!!
おタカはあわれにも、悲鳴をあげる
その血液は、ちぎれた腰からブシャアアアとすさまじい勢いで
「ヒャッハァァ!! 野郎ども、上陸だぁ!」
サメにまたがった
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