この独特な建物を見る限り半信半疑だったが、実際に店内に入ってみると、予想以上の店内の様子に思わず小さな声が出た。


「かわいいだろ?」


するとおばあさんが私の横でそう言うので、私はその問いかけに「はい!」と頷く。

私は店内の奥へと歩き進めながら、色んな雑貨品を見ていく。

すごい…普通のショッピングモールだったらあまり見かけないような、独特なデザインの鞄や帽子、鏡やポーチなどが並んでいる…。

アクセサリーもたくさんあって綺麗だけど、もしかしてこれ全部、おばあさんが作ってるとか?

…いや、そんなわけないか。


私がそう思っていると、おばあさんが言った。


「それで?あんた、あの山へ行って何をしようとしてたんだい?」

「!」


そう言って、真剣な目をして私のことを見つめてくるから、その瞬間おばあさんに私がしようとしていたことが「バレたな」と思った。

だから、私はアクセサリーのコーナーに目を向けながら、呟くようにおばあさんに言う。


「……もう全部、終わらせようと思って」

「…」

「もうどーせ死ぬから全部言いますけど、私、高校の時からもう10年くらい好きな人がいるんです。でもその人、明日、私じゃない別の女と結婚しちゃうんですよ。私とはもう二度と一緒にいられないんです」


私はそう言うと、何気なく、目の前に掛けられてあるエメラルドグリーンのネックレスを手に取る。

…“願いが何でも叶うネックレス”だって。

笑っちゃうよね、どうせ何一つ叶わないくせに。


私がそう思っていると、少しの間黙っていたおばあさんが、再び口を開いて言った。


「はあぁ…若いねぇ」

「!」


そんなおばあさんの思いも寄らない一言に、私は思わずおばあさんの方を見る。

…そんな呑気な返事ある?

こっちは真剣にショックを受けてるって言うのに。


しかし、私がおばあさんの方に目を遣ると、おばあさんが私の方に歩み寄りながら言葉を続けた。


「いいじゃないか。例えその男が振り向いてくれなくても、お前さんはその男を好きでいて幸せだっただろ?10年っていう長い期間、その人を想い続けられることはそんな簡単なことじゃないはずさ」

「そりゃあそうかもしれないですけど…でも…」

「結婚したら相手の悪い部分が浮き彫りになって見えてくる。だから、片想いって言う今の期間が一番幸せなんじゃないのかい?」

「…っ」





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