②
この独特な建物を見る限り半信半疑だったが、実際に店内に入ってみると、予想以上の店内の様子に思わず小さな声が出た。
「かわいいだろ?」
するとおばあさんが私の横でそう言うので、私はその問いかけに「はい!」と頷く。
私は店内の奥へと歩き進めながら、色んな雑貨品を見ていく。
すごい…普通のショッピングモールだったらあまり見かけないような、独特なデザインの鞄や帽子、鏡やポーチなどが並んでいる…。
アクセサリーもたくさんあって綺麗だけど、もしかしてこれ全部、おばあさんが作ってるとか?
…いや、そんなわけないか。
私がそう思っていると、おばあさんが言った。
「それで?あんた、あの山へ行って何をしようとしてたんだい?」
「!」
そう言って、真剣な目をして私のことを見つめてくるから、その瞬間おばあさんに私がしようとしていたことが「バレたな」と思った。
だから、私はアクセサリーのコーナーに目を向けながら、呟くようにおばあさんに言う。
「……もう全部、終わらせようと思って」
「…」
「もうどーせ死ぬから全部言いますけど、私、高校の時からもう10年くらい好きな人がいるんです。でもその人、明日、私じゃない別の女と結婚しちゃうんですよ。私とはもう二度と一緒にいられないんです」
私はそう言うと、何気なく、目の前に掛けられてあるエメラルドグリーンのネックレスを手に取る。
…“願いが何でも叶うネックレス”だって。
笑っちゃうよね、どうせ何一つ叶わないくせに。
私がそう思っていると、少しの間黙っていたおばあさんが、再び口を開いて言った。
「はあぁ…若いねぇ」
「!」
そんなおばあさんの思いも寄らない一言に、私は思わずおばあさんの方を見る。
…そんな呑気な返事ある?
こっちは真剣にショックを受けてるって言うのに。
しかし、私がおばあさんの方に目を遣ると、おばあさんが私の方に歩み寄りながら言葉を続けた。
「いいじゃないか。例えその男が振り向いてくれなくても、お前さんはその男を好きでいて幸せだっただろ?10年っていう長い期間、その人を想い続けられることはそんな簡単なことじゃないはずさ」
「そりゃあそうかもしれないですけど…でも…」
「結婚したら相手の悪い部分が浮き彫りになって見えてくる。だから、片想いって言う今の期間が一番幸せなんじゃないのかい?」
「…っ」
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