魔女が営む雑貨屋さん【指輪編】

みららぐ



10月1日。


心の中に激しい大雨が降り続ける私とは対照的に、現在の空には雲一つない快晴が広がっている。

場所は見慣れない小学校の近く。

私はこの小学校の裏にある山で、27年の人生を終わらせようとしていた。


いったい私に何があったのか?

話を聴けば「そんなことで!?」と皆が驚くかもしれないが、10年もの長い間想いを寄せていた男性が、明日、別の女性と結婚してしまうのである。

私が独り山へ入るべくとぼとぼと歩いていると、そこへ突然、聞き慣れないおばあさんの声に呼び止められた。


「あら、お散歩かい?」

「…?」


その声が聞こえた瞬間、私はゆっくりと顔を上げて辺りを見渡した。

すると、ついさっきまでは気が付かなかったが、私が歩いていた小学校の裏側には何故か変わった場所にお店があって、どうやらその店主のおばあさんが私に声をかけてきたようだった。

おばあさんはちょうど店の前をホウキで掃いていたらしく、いったんその手を止めると、私の方をじっと見つめる。


…まずいな。今から死にに行くこと、バレちゃったかな。

私がそう思いながらも、


「そうですよ。今日は天気が良いですからね」


と答えると、おばあさんがそんな私に言った。


「だったら私のお店に寄ってみないかい?」

「え?…ここ、なんのお店ですか?」


そんなおばあさんの言葉に、私はおばあさんの背後に建っている真っ黒で独特な雰囲気の建物に目を遣る。

…何だか、おとぎ話にでも出て来そうな、異様な雰囲気を放ってるな…。

そう思っていると、やがておばあさんが言った。


「ここは雑貨屋だよ」

「!」

「変わった商品がいっぱいあるから、5分だけでも寄ってみないかい?面白いよ」

「…」


私はそんなおばあさんの言葉を聞くと、「じゃあ5分だけ」とその言葉に頷いた。



…………



「失礼しまーす」

「どうぞどうぞ」


やがておばあさんに案内されて入った店内は、もう10月だというのにキンキンに冷房が効いていた。

いや、確かに10月にしてはまだまだ夏の暑さは残っているけれど、何もこんなに店内を冷やさなくたって。


だけどそれと同時に、予想していたよりも店内は普通の雑貨屋さんでちょっと驚いた。

中にはカバンや帽子、アクセサリーや時計などの雑貨品がところ狭しと並んでいる。


「っわぁ…!」





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る