二度目の人生は雑用のままじゃ終わらせない

原 妃真

第1話 転生

俺は陰キャだ。


クラスの陽キャたちにはいつも容姿でいじられたり、暴力やパシられるなんてこともざら。


そんな俺はいつも先輩や同級生、更には後輩にまでも雑務や掃除などを任されるせいで、いつも帰宅時間は九時をゆうにすぎる。


なんなら、先生も黙認してくる。


もう限界だ…明日には絶対に言い返してやる…なんて言葉もいつも言うだけになっている。


「……コンビニに寄っていこうかな」


俺はいつもお世話になっているコンビニへ向かった。


「いらっしゃいませー…あ、後藤君。今日もパシられたの?」


「まぁ…はい……」


「もう、全く……昨日も、一昨日も言い返すって、言って何も成果なしでしょ?」


「ははは…まぁ、口ではなんとでも言えるってことです」


そういう引け腰なところがダメなんだよ…と、言われたがまぁいつものことだ。


そうして、いつも通り缶コーヒーとパンだけ買って帰ろうとした……が、


「いらっしゃい……ひっ…!?」


「おい、そこの店員、金を出せ。でなければ、撃つ」


振り返るとそこには、強盗がいた。


「で、でも…ここのレジは店長がいないと開けられなくて……」


「ごちゃごちゃうるせえ!さっさと……」


こいつも、本当に撃つ気はなかったかもしれない。

が、こいつは……トリガーを引いてしまった


その光景を見たときに俺は……いや、俺の足はもう、動いていた。


激しい銃声を聞きつつ俺は、目の前が真っ暗になった……




気づくと、そこは晴天の青空が広がっていた。


「っ、まぶし……」


だが、何かがおかしい気がする。


いつもと違う空……少し、青すぎる気がする。


「………そ……ら……?」


「あら?こんなところに赤ん坊が……」


赤ん坊?何を見ていっているんだ。

俺はもう大学二年で……っ、おい、何して……


俺は手を伸ばして抵抗をしようとした────が、


「届かない……?」


短い…?いや、丸い……いや、これ…………

まるで、赤ん坊みたいな…………まさかっ!?


「あー、あーっ」


「はいはい、こんなところに一人で寂しかったのね、すぐにうちに連れて行ってあげるから!」


もしかして、俺……



転生……した?





あれから一週間───


俺はどうやら、異世界へ転生したらしく、グレイティアという名前がつけられた。

俺を拾ってくれた彼女はスパルティーヌという名らしい。


「はーい、あーん」


「んっ……むぐぅ」


この世界には小さい時からあげられるご飯があるらしいのか、母乳はなかった。残念。


ああそういえば、俺は普通に日本語を喋っているつもりでも向こうにはただの

「あー、あー」という声に聞こえるようだ。


どういう原理なのかが気になるが……


窓の外を見つめると、あったのは二つの月。


この世界は不思議で、現実世界の知識だけでは理解しがたい現象が当たり前である。

例えばだが……魔法もある。


俺が夜空を見ふけっていると、後ろから鳴き声がした。

そう、この家にはスパルティーヌの実の娘がいるのだ。


「う、ぅう、えーん!!」


「あらあら、フィルちゃん、少し待っててねー」


この家ではフィル、と呼ばれているが、本名はフィルレイトというそうだ。

かっこいい名前。少女なのに……うらやましい。


「あー、あーっ」


「はいはい、待っててね、すぐに行くから!」


ふぅ、転生前は何もせずにただ優しく養ってほしいと思っていたが、

こうやっておねだりしてやってもらうの自体が申し訳ない。


……だが、考えても仕方がない。


俺はこの世界では…絶対に、無駄にはしない。


「二度目の人生だ。今度こそ、俺は何かを掴んでやる」


俺は拳を空に掲げながらそう誓った──────。


そうしたとき、どこからか「ふふ、あら可愛い」と笑っている声があった。

俺の決意など露知らず。

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