二度目の人生は雑用のままじゃ終わらせない
原 妃真
第1話 転生
俺は陰キャだ。
クラスの陽キャたちにはいつも容姿でいじられたり、暴力やパシられるなんてこともざら。
そんな俺はいつも先輩や同級生、更には後輩にまでも雑務や掃除などを任されるせいで、いつも帰宅時間は九時をゆうにすぎる。
なんなら、先生も黙認してくる。
もう限界だ…明日には絶対に言い返してやる…なんて言葉もいつも言うだけになっている。
「……コンビニに寄っていこうかな」
俺はいつもお世話になっているコンビニへ向かった。
「いらっしゃいませー…あ、後藤君。今日もパシられたの?」
「まぁ…はい……」
「もう、全く……昨日も、一昨日も言い返すって、言って何も成果なしでしょ?」
「ははは…まぁ、口ではなんとでも言えるってことです」
そういう引け腰なところがダメなんだよ…と、言われたがまぁいつものことだ。
そうして、いつも通り缶コーヒーとパンだけ買って帰ろうとした……が、
「いらっしゃい……ひっ…!?」
「おい、そこの店員、金を出せ。でなければ、撃つ」
振り返るとそこには、強盗がいた。
「で、でも…ここのレジは店長がいないと開けられなくて……」
「ごちゃごちゃうるせえ!さっさと……」
こいつも、本当に撃つ気はなかったかもしれない。
が、こいつは……トリガーを引いてしまった
その光景を見たときに俺は……いや、俺の足はもう、動いていた。
激しい銃声を聞きつつ俺は、目の前が真っ暗になった……
◆
気づくと、そこは晴天の青空が広がっていた。
「っ、まぶし……」
だが、何かがおかしい気がする。
いつもと違う空……少し、青すぎる気がする。
「………そ……ら……?」
「あら?こんなところに赤ん坊が……」
赤ん坊?何を見ていっているんだ。
俺はもう大学二年で……っ、おい、何して……
俺は手を伸ばして抵抗をしようとした────が、
「届かない……?」
短い…?いや、丸い……いや、これ…………
まるで、赤ん坊みたいな…………まさかっ!?
「あー、あーっ」
「はいはい、こんなところに一人で寂しかったのね、すぐにうちに連れて行ってあげるから!」
もしかして、俺……
転生……した?
◆
あれから一週間───
俺はどうやら、異世界へ転生したらしく、グレイティアという名前がつけられた。
俺を拾ってくれた彼女はスパルティーヌという名らしい。
「はーい、あーん」
「んっ……むぐぅ」
この世界には小さい時からあげられるご飯があるらしいのか、母乳はなかった。残念。
ああそういえば、俺は普通に日本語を喋っているつもりでも向こうにはただの
「あー、あー」という声に聞こえるようだ。
どういう原理なのかが気になるが……
窓の外を見つめると、あったのは二つの月。
この世界は不思議で、現実世界の知識だけでは理解しがたい現象が当たり前である。
例えばだが……魔法もある。
俺が夜空を見ふけっていると、後ろから鳴き声がした。
そう、この家にはスパルティーヌの実の娘がいるのだ。
「う、ぅう、えーん!!」
「あらあら、フィルちゃん、少し待っててねー」
この家ではフィル、と呼ばれているが、本名はフィルレイトというそうだ。
かっこいい名前。少女なのに……うらやましい。
「あー、あーっ」
「はいはい、待っててね、すぐに行くから!」
ふぅ、転生前は何もせずにただ優しく養ってほしいと思っていたが、
こうやっておねだりしてやってもらうの自体が申し訳ない。
……だが、考えても仕方がない。
俺はこの世界では…絶対に、無駄にはしない。
「二度目の人生だ。今度こそ、俺は何かを掴んでやる」
俺は拳を空に掲げながらそう誓った──────。
そうしたとき、どこからか「ふふ、あら可愛い」と笑っている声があった。
俺の決意など露知らず。
二度目の人生は雑用のままじゃ終わらせない 原 妃真 @hiro_gggggg
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