第4話 明石施設長の視点
大島様(妻の旧姓)が「さくらの森」に入居された日を、私は今でもよく覚えています。
初対面のときから、穏やかな笑顔と柔らかな物腰が印象的な方でした。
スタッフにもすぐに馴染み、周囲の空気を和らげてくださる存在でした。
介護施設という場所は、日々の業務に追われる中で、どうしても「効率」や「手順」が優先されがちです。
けれど、大島様はその空気を変えてくれる方でした。
スタッフが焦っているときも、言葉少なに、でも確かな眼差しで「大丈夫よ」と声をかけてくださる。
その一言が、どれほど現場を支えていたか——私たちは皆、知っています。
最期の時間、私が大島様の傍にいたのは、施設長としてではなく、一人の人間としてでした。
あの穏やかな表情を見たとき、私は「この仕事をしていてよかった」と心から思いました。
そして、大島様の旅立ちを見送ることができたことを、誇りに思っています。
※この話は義母の他界後に実際に明石さんから伺った話でした。
つづく
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