君が咲く場所

風がそっと吹き抜ける。


花びらは静かに揺れ、時間の狭間に溶けていく。


その瞬間だけ、世界がゆっくりと呼吸しているように感じた。


音も、言葉も、すべてが遠くなって、


ただ風と光と、君の存在だけが、確かにそこにあった。


一歩先にいる君の、髪が光に透けている。


目を輝かせながら、風に舞う花びらを追いかけて、舞い散る花びらと戯れる。


その姿があまりにも綺麗で、まるでこの景色の一部のように思えた。


いや、景色そのものだった。


花畑の中で、いちばん鮮やかに咲いているのは、君だった。


向日葵みたいな君。  


強くて、眩しくて。君がいるだけで世界が輝く。    


目の前に咲いている花たちよりもずっと鮮やかで、僕の視界を奪っていく。


どれだけ周りが色づいていても、僕の目は君だけを追ってしまう。


君が花なら僕は蜂。


君はいつもそこにいて、優しく揺れている。


僕はただ、君に引き寄せられて、そばにいる理由を探してる。


君がどうして僕を選んだのかは分からない。  


だけど、君がそこにいる限り、僕は君のそばから離れない。


「ねぇ、綺麗だね」


ふと、君が振り向いてそう言った。


君の瞳の奥に映る景色は、花と風と、そして僕。


その中に僕がいることが、少しだけ誇らしくて、少しだけ照れくさかった。


花なんて興味なかったのに、君が好きだと言うから、僕も好きになった。


君と見ることで、この景色はただの風景じゃなくなる。


誰かと共有することで、特別なものになるのなら。  


それはきっと君だから。


君に向日葵を六本贈ろう。


君の笑顔と同じくらい、あたたかくて眩しい向日葵を。


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