エピソード9 似た者同士は似て非なるもの(警察学校編:神東ペア)

 もとより、あのメンバーはおかしい。


 いや、普通の人間ではある。だが、何というか、こう、言い表せないがある。こう、どこか、常人とはかけ離れているようなところがある気がする。


山口やまぐち先輩、何してはるんすか、こんな夜中に」

「お前らこそ、何故ここにいる夜中に出歩いている。早く、部屋に戻れ部屋に戻って自分の命を守れ

 何事にも動揺しない人間に言葉足らずすぎる人間。


「今の状況で自分の命を守れ言うのは俺の方やと思うんですけど。なんで山口先輩に言われなあかんのですか」

「何かあったら面倒だろう、神崎かんざき

「これから、油断している間に何かに遭遇して、その何かに増援呼ばれたり、刃物出されたらお前らがケガをする可能性がある。だから、部屋に戻って教官に連絡して欲しいってことじゃないかな」

 柔らかいくせに何故か、クセが強い人間。

「そんなん分かるか!」

「そんなの分かるか!」

 これだけのやり取りで、彼らが常人とはかけ離れた人間なのだと分からされた。



 山口一やまぐちはじめ

 神崎神座かんざきかんざ

 東京斗あずまきょうと


 今、僕はこの三人と一緒にいる。

 数分前まで東の発案で神崎・東と教官達に隠れて学校探検を行っていたところだった。罰則確定行為。

 ちなみに二人と仲が良い都鏡花みやこきょうかは眠いからとパスしていた。その代わりに何故が僕──葛篭つづら──が二人に同行させられることになった。


 なんで?


 そしたら、初任補修科しょにんほしゅうかの山口さんが合流したのだ。何か、グッスリ寝ているデカい人──確か北道きたみちさんだっけ──を背負いながら現れて。


 うん・・・・・・。常人とかけ離れているというか、何というか。問題児というか、問題発生させる才能の持ち主というか。問題に巻き込まれる能力の持ち主というか、──――全員が。


「ってか、どうして山口先輩は北道先輩背負ってんすか? 体格差エグないですか」

「襲撃されて、北道が気絶した。今から医務室に行く」

「・・・・・・どういうこと?」

「警察学校に侵入者が入ってきた。教官達は気付いていない。見回り協力をしていた山口先輩と北道先輩がそれを発見。侵入者の対応をしていた北道先輩がケガをして気絶した。侵入者は全員したから、医務室に北道先輩を連れて行くところ、と」

「そうだ」

 言葉足らずとして有名な山口さんと、何となくそれを理解する神崎のわけ分からん吹っ飛び会話。どうして、少しの言葉から、そこまで読み取れんの?


「襲撃された場所は」

「東棟一階第三講義室」

「俺、そこに行きますわ。東は先輩達とおってな。教官達への報告よろ」

「了解」

「東、北道の治療怪我の止血を頼む」

「了解しました。あれですね、ナイフで切られて出血箇所がある感じですね」


 山口さんの言葉に東はニコニコしながら答える。

 東も山口さんの翻訳をスラスラとするな。「治療頼む」で「ナイフで負傷、出血あり」まで読み取るな。天才か。翻訳家にでもなれや。


そうだ

「あ~、山口先輩、そういう治療苦手やもんな」

「じゃあ、葛篭君、神崎のことお願いね」

「んで、葛篭は俺と一緒に来てくれや。現場様子見と上手くいったら侵入者取り押さえるで」

「え、俺行くの?!」

 なるほど、皆が言っていた「頭おかしくなる会話」ってこれのことかと納得した。いや、神崎はまだ、東とか都よりはマシだと思っていた。そこまで翻訳できるとは思っていなかった。それにそこまで実働的だとも思ってなかった。たけど、東とか都と似た者同士か。


 というか、事態が悲惨。何これ。侵入者? 全員伸した?

 ・・・・・・バカ強いじゃん、山口さんと北道さん。強いって噂には聞いてたけど、それほどだとは思わないだろ。


「お前しかおらへんやろ。なんや、山口先輩の翻訳できるんやったら東と代わってもええで。無理やろうけどな」

「無理」

 北道さんは身長が滅茶苦茶高いのでよく、ずっと背負えてるな、と北道さんを背負いながら二人と話す山口さんの様子を見る。まったく重いという気持ちが顔に出てないじゃん。北道さん190cmはあったはずなんだが。

 つーか、翻訳は無理。絶対に無理。できない。絶対にできない。


「まあね、慣れてないとね」

「慣れても無理やろ。俺は無理やからな」

「・・・・・・俺の目の前で俺を侮辱するな文句を言うな

 少し、不機嫌な顔になる山口さん。あ、一応、そこには反応するんだ。ちょっと山口さんと神崎似てると思ったけど、神崎はそこすら笑って返すから、似てはいないな。

 あと神崎、お前は翻訳できてるから。


「あ、すんません。じゃ、行くで、葛篭」

「いや、はや?!」

 そして、神崎の方を見れば既に歩みを進めている。


 歩くの速!


 早足で東棟へ向かう神崎を追い、彼の隣まで追いつく。ふっと東達のいる後方に目を向ければ、東はニコニコ笑ってこちらを見ている。緊張感ないやつ。こういう事態に慣れてんのか、お前。顔に似合わずすぎる。

 東の隣にいる山口さんの方を見れば、滅茶苦茶不満そうな顔をしながら、こちらを見ていた。若干怖い。


「頑張ってねー、神崎~」

「おう、そっち頼むわ、東ー!!」

やりすぎる怪我するなよ、神崎、葛篭」

「はーい」

「俺も?!」

 後ろから東から神崎へ、山口さんから神崎と俺に掛けられた声。


 え、俺も変人メンバーにいよいよ、加入すんの?

 嫌だよ、俺。一般人でいたい。


「じゃ、行くで葛篭」

「・・・・・・うぃ」

 神崎の声に俺は変な声を出して頷くしかなかった。


 ・・・・・・罰則確定だね!! わーい。

「今日は徹夜だな」

「・・・・・・デスヨネー」

 ・・・・・・夜はまだまだ続くらしい。眠い。寝たかった。



 恨むからな、都。

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