第4話
その夜、スグルは夢でショウと議論した。あみとしずかには試しをお願いすることにして、問題はマサル、アキラの同期相手を探すことについてだ。「なるほど、シンクロする相手との交渉だね。最初の話は知っている訳なので。待てよ、通信波を出せばいいのでは。ファ-ストコンタクトの内容はスグルに任せるが、技術面も含めて、ヒデ君に相談する方がいいと思う。送る内容はあみさんやしずかさんが同期に成功したら、サリーとハナと考える。」
「サリーとハナ?それが貴方の侍女の名前ですか?」
「こちらの世界の侍女というものの意味に合っているかどうかはわからないが、おそらくそのような者だ。」
思考は観念で理解するからか、言葉の壁がない、先日ヒデさんに聞いたら「おそらくだけど、犬をみたらイヌとdogが同時に意識されるようなものなので、お互いの意識の理解で拾っているから通じるんだろうな。俺らも近づこうとしている技術だが。」とのことだった。
2日後、スグルはあみとしずかと上野公園で待ち合わせた。いよいよ実体同期を試行するのだ。上野公園を選んだのは何か普通でないことが起こっても広いのでなんとかごまかせると考えたからだ。あみはすでに来ていて何故かすごくにこやかだった。いつもと感じが違うなあと、スグルは少し警戒しながら「調子はどう?」と聞くと
「悪くないわ。」と返ってきた。スグルはゆっくり座り「ところで、君はハナ?それともサリー?」と言うと、「お前に呼び捨てにされる覚えはない!」と急に怒鳴られ、周囲の注目を浴びた。しかし、スグルは落ち着いていた。ショウとはすでに実体同期済みだった。「この声がわかるか?この声は私、ショウだ。君は立場を危うくしてるぞ。あみさんに無礼を働くと許さない。」と言うとスグルはあみの左手のリストバンドを触り一つのボタンを押した。
あみはキョトンとした表情に変わった。そして「何!?私戻れた?」スグルは真剣な顔で「大変だったね。同期したら乗っ取られたか?すでに2つのボタンを押していたとは。」
「もうびっくり。リストバンドをオンにして寝たらハナさんが夢に出てきて、ショウのことを少し話したら私に任せてって言うので。起きて実体化もオンにしたら俺様状態..... 仲良くなれそうにないわ私。」言ってリストバンドを外した。
「さっきの態度はないな。あみがすごい拒否反応を示せば強制解除できるらしいけど。まあ悔い改めない限りしばらく放っておこう。さてところで、あっ、しずかさんがきた。」スグルはあみの後方を指さす。
あみが「しずか、調子はどう?」と聞くと「ネバ-ベターよ。」との返し。「しずかさんはサリーと話せた?」
スグルはあみがハナとシンクロしたならしずかは当然サリーなので聞くと「よく知っているのね?そう昨夜話したわ。ショウさんの無事を告げると泣いてた。ハナさんは?とも聞かれたけど。」
あみは苦笑いして「無事は無事と言っておいて。だいぶサリーさんはハナさんとは違うキャラらしいのね。」と話す。スグルはさっきの展開をかいつまんでしずかに話すとしずかは爆笑して「そう言うキャラなのね。ハナさんは。サリーさんはまだ実体化は望んでないみたいだけど。」
スグルはうなづくと
「まあ侍女の二人はそっとしておくとして、ショウの従者の二人にシグナルを出すつもりなんだ。でも変な奴だと思われるとなあ。」
「小説で説明するしかないです。続きを書いて、二人に接触する必要性を伝えるんですよ。」としずか提案すると、スグルもハッとしたような表情をすると「そうか小説か。でも直球でない方がいい気がするね。どう書くかだが。」
「本人達に責任と言うか使命感を感じさせるのがいいんじゃないかなあ。事実というか、いかに貴方達が必要とされているかを言うんです。承認欲求をくすぐるんです。」あみが呟くように言うと
「それだ、あみ!」
それを聞いていたしずかが「へえ、あみ!ね。貴方達、そんな感じ?」
スグルはあっと言う表情、あみは赤くなり下向いて黙ってしまう。
「まあ、若い二人なので、いろいろあるでしょうが目のやり場に困らない程度でお願いしますね。私はタロットカ-ドもやるので相性でも占いましょうか?」
「しずか!」
そう、スグルはあみと付き合い始めていた。このような出会いではあったが、スグルの小説のファンで、音楽にも詳しかったあみは自然とスグルとメールしたり、会う時間が長くなっていた。吉祥寺でのバンドのライブにも来てくれてスグルのバンド仲間にも紹介していたのだ。
初めて会った時の杏の視線にあみは少々たじろいだが、皆気楽な仲間のよう接してくれ自然に受け入れてくれたのであみはほっとしていた。「スグル、小説以外の活動もやってたんだな。瀬名学園のバンドメンバーでもないのに。」拓哉がスグルの頭を抱え込みぐりぐりしていると杏がやってきて「ほんと、いつの間にって感じよね。あみさんは音楽詳しいの?」
あみは焦りながらも「まあ、いろいろ聞くほうなんですが、バンド音楽はまだ初心者です。いろいろ教えてください。」というと杏はにっこりして「スグル、素直ないい子じゃない、気に入ったわ。私の妹分にする。」と宣言。スグルは飲んでいた水を吹き出す。「何だよ、妹分って。まあ、あみさえよければ。」
あみは愛想よく「よろしくお願いします。」と受けると、皆ほっとしたようだった。
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