第3話

 あみの兄貴は実は大変優秀な研究者で近隣の大学に准教授ポストも持っていた。図面内容を分散させて、全体がわからないように依頼したものの製作もしてくれた。

1ヶ月後試作品が出来たとスグルに連絡が入る。あまり話を広げたくなく、また妹を危険に晒したくないので二人で試作品を試すことにしたいとのこと、もちろん同意する。

 

 日曜のヒデの研究室で両腕にリストバンドを付けスイッチを入れる。スイッチは左腕のリストバンドについている。右利き用ということかもしれない。スグルの意識に夢で会ったショウが現れた。スグルがショウからパスワ-ドのように聞いた思念コ-ドは同期するために個々人で違う発火高周波の周波数だった。ショウは話す。「ありがとう、スグル。僕を信じてくれて。一つのボタンだけで意識のシンクロはできるが、もう一つのボタンを押すと完全同期となりシンクロが完成する。僕がスグルの体も使えるようになる。心配しなくていい。支配するわけでなく、君が拒否意識を持てば外れる。」

スグルは緊張しながら完全同期ボタンを押す。


スグルの目の色が薄く変わった。そしてヒデに向き合う。

「貴方がヒデさんですね。私はスグルさんの体を借りて、こうして貴方と話しています。スグルさんは本件同意してくれていると思う。この会話も彼は見ていますが、彼に後で確認してもらうため念のため録画しましょう。お願いします、ヒデさん。さて、貴方のこの機器でなんとか私はスグルさんと同期を完了しました。彼は私であり、私は彼です。貴方にもう少しお願いしたい。あと4つこの装置を作ってほしい。4人の思念コ-ド仕様で。そして少し貴方の研究室を借りたい。いいでしょうか?」

「いや、使用するのはセキュリティーが難しい。夜間で私がいる間なら使っていいが。」

「充分です。あとこの世界の元素構成など、一般知識をまずは教えてください。私の世界との違いを理解したいので。」

その夜、ショウに即興のような講義で、周期表の知識から、地球上での元素組成、性質をヒデは講義し、その後、別世界技術をショウから教えられたヒデは、この世界が変わってしまうその技術に驚愕する。これが現状で世界に公表できないことを残念であると共に世界のためにもそれがむしろ当然だと確信して、ショウとのいくつかの密約を快諾した。ショウも、こちらの世界、ショウはアルファ界と呼ぶが、そのいろいろな知見を興味深くまた驚きながら学んでいた。


 さらに1ヵ月後にスグルはあみとしずかを呼び出し、つくばに向かった。皆もう夏休みに入っていた。これまでも二人には1週ごとくらいに連絡して、状況についての共有、夢を見たか、など情報交換はしていた。あみはバンド活動にも興味があるらしく、ヒデ兄さんの進捗とともに音楽などの話題もメ-ルしてきたりもしていた。ヒデの部屋に行くと、ヒデからリストバンドの技術の説明を簡単に二人にして、二人はリストバンドをつけた。スグルから「これを外すことも問題ない。でも協力してほしい。最初に見たのは意識の通信、テレパシーのような同期なのでお互いが夢で見ることができたが、彼らは思念波で人の情報を送っているらしいんだ。もう先方の人は意識がない。別世界から来ている人を意識として実体化させてあげたい。同期相手の君たちにしか出来ないので。」と話すと、あみは

「少し怖いですが、もちろんやります。友人が出来るようで期待もしてるんです。スグルさんはどんな感じですか?すでに実体化している相手に会ってますよね?」

スグルはやはり相手とは夢のような状態でしか会ってはいないけど、完全に同期すると体が相手のものみたいになっているのは少し気味が悪いとも正直に話す。

そして、スグルは同期ボタンを2つ押し、ショウになる。


スグルの目の色が変わり、話す調子も変わる。

「はじめまして、私がショウです。何か変な感じですが、スグルの話した通りです。どうか私の仲間を解放してほしい。心からお願いする。」そう話すと同期ボタンを一つ切った。これでスグルとして会話の内容は共有できる。

あみとしずかは、しばらく呆然としてから、「なんか、なんか、本当のことらしいね。」しずかははしゃぎながらあみの肩を叩いて話しかけ、そしてしばらく二人で話した後「まあ、まずは思念波同期のみで話してみます。シンクロできるのが私達しかいないのならしょうがないですからね。」


ショウから戻ったスグルはホッとして、「ありがとう、そうだね、まずは話しをしてみてほしい。あとは他の二人をどう探すかだね。snsにあまりに情報出すのは危険性もある。しかし続きについての議論を持ちかければ。このようなリストバンドが向こうにもこちらにもない現状では相手が夢に出てこないはずなので何も感じてないと思うし。思念波が漂ったままと言うのか分からないけど、シンクロ相手が用意できないと何も始まらない。君たちの相手だけでなく、マサル、アキラと言う仲間も送られているらしいんだ。」

「格好いいヒトだといいね。あみ!」と呑気なしずかだが、

「う-ん、どうだろう。他の2人のメ-ルの感じはケンカ腰の風だったし。」

確かに。こんな話を他の2人にしても協力得られるかどうか。

あみとしずかは夜に同期相手と話してみることにしてヒデと4人で食事だけしてこの日は家路に着いた。

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