第2話

以前からスグルは変な夢を見たことがあるが、小説のネタに使ったのはかなりまとまった話の夢を見たからだ。

それはこのような話だ。


ここはYS国。XN国との戦いに明け暮れた中、武力によらない道を探してきたが、それが甘かったのか、奇襲など、狡猾な手を使うXN国を前に城の防御も風前の灯であった。一方で科学力はYS国の教育振興の政策のおかげでXN国を凌駕していた。そのYS国では、10年ほど前からついに意識の実体を解明、思念通信ができるようになっていた。さらに思念をエネルギーとして風を起こしたりもできることが分かった。

それらを解明した科学者は私の家庭教師でもあるカレン先生だ。(その息子は私の親友マイク。カレン先生には従騎士のアキラ、マサルも習っている。)私の父は、その利便性、危険性を初期に見い出し、城の従者との連絡技術に応用、技術流出を防いだ。思念制御する装置は小型化され手首につけるようなものにもなった。私もイタズラでつけて、風でものを飛ばしたりした。そして、ある時、手首につけたまま寝てしまったのだ。その時の夢を私は鮮明に覚えている。私は水の中を泳いでいた。そして、そのあと水から大人達に出されて、医療機関に運ばれていた。「苦しい。。」と思ったその時、カレン先生に叩き起こされた。「ショウ君!貴方、思念バンドをオンにしたまま長時間つけてはいけないと言ったでしょ。大丈夫だった?」

ぼくは、溺れていた夢をひきづってダルさあったが、「大丈夫です。すいません。なんか変な夢を見てました。」と言うと、カレン先生は訝しげに、「夢?どんな?」

「溺れてました。病院に運ばれて。」

「ふーん、あなた、泳ぎは得意だったわよね。まあいいわ。さて、これから幾何をやるわよ。」

「はい。」私は頭を掻きながら、得意な幾何の世界に入って行った。

 その数日後のことだ、カレン先生が慌ててやってきて先日の夢のことを詳しく聞かれた。どんな感じだったか。何を見たか。その後何か変わったことはないか。僕は特に無いと答えた。一体何なんだろう?あんなに慌てて。カレン先生が慌てていた理由がわかったのはしばらく後のことだ。


以上が最初の小説ネタに使用した内容の概要だ。

コメントを寄越した他の二人が描いた続きと言うのは、カレン先生が慌てていろいろ聞いてきたところだ(僕の文体にして上記ではつなげた)。


そしてつい先日見た夢はさらにリアルで明示的なもの。

「スグル君、私はショウと言う。私が送った内容はわかったかな?ここは君のいる世界とは別世界だ。しかし、先に送った話はこちらの本当の話なのだ。もうすぐ我々の島は乗っ取られる。その前に私の意識、思念コ-ドを転送する。君に少し協力してもらいたいのだ。シンクロの量子性がわかったことで、こちらの世界の危険から逃れるためそちらの別世界に向かうことにした。侍女の二人は先にやった。

従者のマサル、アキラ、そして侍女の二人には思念バンドを前から付けさせて、こちらの世界に関して私のようにシンクロ先に知らせるようにはしてきた。上手く繋がっているといいが。

侍女の彼女達には思念コ-ドの解放キ-を持たせていない。従者や私に会わなかったら、そちらの世界では解放しない方が彼女らのためだ。マサルとアキラに会えるといいのだが。説明はここまで、後はそちらに行ってから。」


これが先日見た夢で今回アップしたことの概要だ。ショウから協力を頼まれたことや侍女らに解放キーを持たせなかったことは書かなかった。もしかすると、この二人が侍女?


スグルが見たショウが語る内容がスグルに送られた後、ショウのいた世界、ベ-タ界では次のような状況になっていた。


XN国の兵士が城内に入り込んでくる。王室の住居区域に最初に入って来た兵士はベッドに寝る3人を見て兵士仮面を脱ぐとガッカリした様子で呟く。

「チッ、クソ、ショウの奴、行ってしまったか。

マサルにアキラも。」

「陛下、隣室に侍女も二人入っています。」

後方から兵士が駆けて来て伝える。

報告を聞いたリ-ダ-格の者は、腕について焦げて壊れたものを見る。

「この装置は本当に転送装置なのか。奴ら、別世界への転送を制御出来るようになったのか?」と呟いた。


 スグルの方に話を戻す。しずかとあみを前にしてスグルはショウの話を更に話そうかどうか悩んだが、やはり仲間を増やさないと何も進まないと思い、「あのさ、信じられないかもしれないけど、そのショウって人が先日現れたんだ、夢に。それを書いた訳なんだけど、、協力を頼まれた。そして、寝ている間に、この設計図を覚えるように、そしてこれを作ってくれと。」

横から図面を出す。しずかとあみはじっくり見た後

「え-と、何ですかこれ。難しそう。」としずかがまず素直な感想を口にする。

どうやら電子機器の図面らしい。

「これを作って欲しいらしい。何故か記憶は鮮明で何とか書けた。でもどうやって、なんだけど。。」

するとあみが

「うちのヒデ兄ちゃんに相談してみる?つくばの研究所にいるんだけど。何やら難しいことやっていて。」

「こんな怪しい話聞いてくれるかな?」

「あ、それは大丈夫、根っから怪奇、オカルト好きなので。それに欲もないし。」

スグルは

「ありがたい、是非聞いて見て。」と体を乗り出すと、

「じゃあいっそ皆でこれから行こうよ。すぐだよ、つくばエクスプレスで。」あみは立ち上がり、3人は連れ立って行くことにした。


つくばは多くの研究機関、企業の研究所があるが、あみの兄は、その中にある電子工学関係の法人研究機関に属していた。3人はヒデのいる研究機関に行き、受付で兄を呼び出す。「あみ、休みの日になんだ、あ、デ-トか?初めまして、兄のヒデです。」スグルを見た兄の反応にあみは慌てて訂正する。「違うよ、お兄ちゃん、相談したいことあるの。」「何、駆け落ちか?まさか妊娠して金かかるとか?」とヒデが焦り気味な声になると、「だからそう言うので無く、」あみは顔を赤くして兄の話をさえぎる。

「あのう、私、相川スグルといいます。ちょっとこれ見ていただきたいのですが。」

スグルが見せると、ヒデはしばらく呑気に眺めていたが、途中から真剣に見出した。「なんだ、これ?規則性はありそうだけど。まあ、みんなとりあえず俺の部屋へ。」

何やら図面をスキャンして読み込み、コンピュータ解析してから、画面に結果を映し出す。

「これはすごい。」ヒデはため息をつきながら呟く。

スグル達が画面を覗き込むと、さっきの図面とは似て非なるものがそこにあった。

「これは、さっきの図面を俺が開発した相似性抽出解析ソフトで解析させた結果だ。考古学での利用が主だったんだが、もしかするとと思い、マスデ-タを参照して再構築させた。もとのは使用している記号が変わっているけど、電子工学の図面だ。」

「これ作れますか?」

「ああ、回路はかなり簡略化されているし、ほぼ出来そうだが、材料で無さそうなのが量子材料だな。ただ、先だって代用になりそうな材料の論文を読んだ。試作くらいなら出来そうだ。1ヶ月くれるか?」

「ありがとうございます。お願いします。あとこの話は内密に。」

「だろうな。この図面はおふざけで書けるものじゃあない。外に公表するものでないこともわかるよ。危険性もありそうだが、あみも関わるようならしょうがない。」

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