愛おしい君

幽幻 桜

愛おしい君

叶うなら。ずっとずっとここにいたかった。君の隣。君との思い出が詰まった、この温かい家に。

君の「好きだよ」が大好きだった。

君の「愛してる」が私の何よりの生き甲斐だった。

君の……君の全てが、私の生きる意味だった。

でも、それももう叶わない。私はもう、君には触れられない。

ありがとう。

心の底からそう思うよ。

大好きだよ。

たった一人の、私の恋人。

私の頬を、涙が伝い落ちる。

この家から出なくちゃ。君の隣から離れなきゃ。何よりも温かい、君の体温。

好き。好きだよ。大好きだよ。

なのにどうして、離れなきゃならないの。

嫌だよ。離れたくないよ。

君は意地悪だ。最後の最後まで。

君の笑顔が頭から離れない。でも、その顔も、もう見られない。

私は顔を手で覆った。蘇るのは、君との記憶。

君はもう――――この世にはいないのに。

……私が泣く時はいつも、君の優しい掌が私の頭を撫でてくれた。でも、それももう与えられない。嗚呼……君は沢山、私に色んなものを与えてくれたね。

大好き。大好きだよ。でもね、君はもういないんだ。この家からも出ていかなくちゃいけないんだ。どれだけ祈ったって、どれだけ願ったって、君はもう帰って来ないんだ。辛いけど、前を向いて……生き続けなくちゃいけないんだ。

……さようならは、言わない。

でもね、一つだけ忘れないで。

君を一番愛していたのは私だよ。

それだけは、覚えておいてね。


またいつか会おうね。愛おしい君よ。

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愛おしい君 幽幻 桜 @mikoluna

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