第28話 僕は知ってますよ
間。
「お前・・・本当にルートヴィーズなのか?」
「そうだったよ」
間。
「なぜ俺を仲間に入れたいんだ?」
「なぜってなぜ?入れたいからでしょ?」
「コクーテだぞっ」
「そう」
「・・・コクーテ?」
マンデナッチの顔色がいっそう悪くなる。
「どういう・・・どういう意味ですか?さっき飛行船が・・・」
「そう。お迎え」
間。
「俺は・・・行けない・・・」
アデレートの苦悶の顔。
「なぜ?」
沈黙。
「なぜ?」
「俺は人殺しだ」
「知ってるっ。僕は知ってますよっ、ハイネスっ」
「何を?」
「マスターの妻が、男を作って逃げたという噂をっ。そしてそれが嘘だということをっ」
「ああ、君・・・コクーテに入りたいんだね」
「そうですっ」
「なぜ嘘だと?」
「あれは俺が流した噂だ。本当のな」
アデレートは渋い顔をした。
「詐欺師だったんだ。相手が・・・」
「それで?」
「店の金がだんだん、計算が合わなくなってきて、夜中に妻が家を抜け出すのに気づいてから、浮気を疑うようになったんだ・・・」
「それで・・・殺しちゃったの?」
「墓場ですよっ、墓場っ。墓場で密会していたのですよっ」
「ああ。墓場の管理も葬儀屋がやるんだったね」
「ええっ」
「それで俺は・・・妻のあとを追って、墓場で男とケンカになったんだ」
「それでカッとなって?」
「違うっ。カッとなったのは相手で、ナイフを取り出して来たんだ。避けたり組み合いになったりした時、ヤツの腹にナイフが刺さった。ショック死だ・・・」
「で、妻の方に制裁を?」
「違うっ。そのナイフで自分の首を切って自殺したんだ」
「は?なぜ?」
「知るかよっ。俺は墓荒らしに見つかって売られそうになったが、妻が持ち逃げした金で雇って、二人を埋めさせたんだよ」
「僕は気づいてましたからねっ。偶然見回りに行ったら、真新しい堀後があったんだ。そしてマスターの妻と男が逃げたと噂がたったっ」
「俺はミスター・マンデナッチが気づいていることに気づいてたんだよ」
「・・・なんですって?」
「それからの御ひいきで、毎回あなたの目が言うんですよ『僕は知っていますよ』って」
「気づいていたことに、気づいていた?」
「ますます気に入った。だから時々、警察軍に情報を渡してたんだね」と彼。
「ああ、そうだよ。もしかして俺の前に現れたのは、計算だったのか?」
「・・・それは秘密。言えない」
「僕、もっと情報持ってますよっ」
パヒュン。
頭を撃ち抜かれたマンデナッチは、前に倒れる。
彼は銃を持っている腕をおろす。
「うるさいの、嫌いなんだよね。こいつ必ず裏切る。警察軍にアディを売るよ」
「俺は・・・」
「しっ」
彼は口元で立てた人差し指を、アデレートの唇に当てて黙らせた。
「それ以上は言わないで?」
「・・・ルー・・・」
「そう・・・ルーでいい・・・」
なんだか、
泣きたくなってきた。
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