第22話 交差する策略
―夜。
小ぶりな花束を片手に、ロイド。
ノック。
リクがはにかみながらドアを開ける。
「やぁ」
「ハァイ・・・」
* * *
「準備はいいか?」
「ああ・・・」
腰の剣に手をかけるミヅチ。
黒い肌を持つもの達が、バンダナで口元を隠し、武器を手にしている。
男達はうわさの《レイガフ》の秘密基地へ派手に侵入した。
* * *
ルートヴィーズは目を開ける。
まだアデレートは帰って来きていない。
* * *
「お客さん、閉店ですよ」
アデレートは眠りこけた酔っ払いを揺り起こす。
* * *
キス。
リクとロイド。
* * *
もぬけの殻の《レイガフ》の秘密基地。
* * *
《キンコウセン》の秘密基地。
マロイは寝ているはずのリーダー、レネスのもとに向かう。
ドアをノック。
返事は無い。
「開けますよ?」
ベッド。
横たわったレネス。
異臭。
マロイは思わず口元を押さえる。
そこには、裸の女と共に胸を一突きされ、死んだレネスの姿。
「どうしたんすかぁ?」
のんきな声で部下が部屋をのぞきこむ。
停止。
数秒の間。
マロイが呟いた。
「やつらだ・・・《レイガフ》のやつらだっ」
* * *
翌朝の午前中。
未だルートヴィーズは休んだまま。
アデレートとリクに、レネスの死が知れることとなった。
「レネスが・・・?」
驚き顔のリク。
グラスをふいている店主、アデレートの耳にも情報が入ってくる。
「ああ。胸を一突き、だと」
「たしか、タイリも・・・」
「なぜそれを知ってるんですか?」
二人は入り口の方に向く。
「ハァイ、ミスター・マンデナッチ・ジュニア・・・ああ、いえ。ミスター・マンデナッチ」
「ああ、店主から聞かれたんですか?」
「風のうわさで」
「そんな筈はないが・・・まぁ、いい。店主、いつものボトルを」
「了解」
「なぁ、お嬢さん、あんたロイドとかいう《レイガフ》のリーダーとできてんだろ?」
近くに座っていた、黒ヒゲの客が言う。
リクは準備していたかのように、肩をすぼめてみせた。
「あの男、レネス殺しの容疑者らしいぞ?」
「さあ、調理場、調理場っと」
リクはしらを切り通し、調理場へ。
黒ヒゲ男はグラスを片手に舌打ち。
「ひっかからねえか」
* * *
―・・・数日後。
近隣ではロイドが《レイガフ》のリーダーであることが噂になり、またレネス殺しの容疑者として捜索されたが、「捕まった」という情報は入らなかった。
アデレートはリクにそれとなく聞いてみたが、彼女はかぶりを振るだけだった。
黒ヒゲの客が、毎日のように同じような質問をしてくるので不審を感じ始める。
ルートヴィーズは復帰。
今はテーブルに料理を運んでいる。
客が入ってくる。
金髪のロングヘアーを二つに分けて三つ編みにしている。
「いらっしゃ・・・・・・ロイッ・・・」
「しっ」
あえて派手な格好をしているロイドは口元に人差し指をかざす。
幸運なことに、カウンターには一人も客が座っていない。
やたらロイドについて情報を集めている黒ヒゲも店内にはいなかった。
ロイドは声をひそめる。
「リクは?」
「今調理場だよ。どこに隠れてた?」
「それは言えない。しばらくここに泊めてくれないか?」
「それはいいけど・・・かくまって、って意味じゃないだろうね?」
「俺がレネスを殺したと?」
「そういう噂が流れてる。警察軍が動いてるんだぞ」
「分かっている。でも俺はレネスをやってない。部下にも命令してないし、調べたが部下がバカをしたわけじゃないみたいなんだ」
「部下にスパイがいかもしれない、と?」
「かもしれない」
「それでここに」
「そういうこと。基地はもう安全じゃない」
「了解。六号室が空いてる」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます