同窓会なんか行きたくない
母校から同窓会の案内が届いた。
「こりゃ多分あのにっくき“仲田”もきそうな予感…」
あのクラスでは、なんだか仲田は常に中心にいたような気がした。あいつを囲う奴らが多いように見えてたし…
だから同窓会なんか行かない。俺はそう決めた。
どうせ今日もバーに出勤だしね…
その夜、バーに立ってると、
カランカラーン…
店のドアが開く音がした。
「らっしゃっせ〜…って…」
ドアの前にはあの仲田とその仲間達が続いて入ってくる。
『二次会はここでいいや〜…だってせっかくの同窓会に現れなかった奴がいるらしいからな…』
仲田はズカズカと入ってきては田中の目の前の席に座る。
『よぉ…田中太郎くーん…バカっぽい名前だな。久しぶり…なんでこないんだよ同窓会今日だよ⁇』
あいつは当時の変わらない俺を見下すような笑顔を浮かべた。
「学生時代みたいにまた喧嘩売りにきたんなら帰ってもらいたいんだが⁇もう俺たち学生じゃないんだぜ?それになんでわざわざここに…」
『なんでって…今日同窓会に佐々木も来てて、サプライズゲストに影山も呼んだみたいで〜ちょっと話したら、田中くんいないんだって言ってて寂しそうな顔浮かべてさ…そしたらここで働いてるのが忙しいからかなとか聞いちゃってさ…ここってゲイバーだよな⁇』
(余計なこと言うなよ直人⁉︎天然か⁉︎確かに変人扱いはされてたけど…て言うか来てたの⁉︎)
俺はそう心の中でつっこんだ…
「…たっ…ただのバーだよ⁉︎女の子の店員さんもいるし…今日はシフトに入ってないけど…」
『あっそ…とりま友情価格ってことで、今日は無料でいいよな⁇無理ならお前の給料から払っといてよ…俺たち名前が似ててよく間違われるくらい“仲良かった”よ、なぁ⁇』
仲田はまたムカつく笑顔で見てくる。
俺が困ってると…ママが参上‼︎
「ちょっとあんたら何言ってんのよ⁇ちゃかしにだけ来たならまじで出てって貰うわよ⁇座っただけでもチャージ料取るからね⁇見逃して欲しかったら早く帰んな⁉︎」
いつも高めの声で喋るママも、流石に低めの声で怒鳴る。
『チッ、座るだけで取られんのかよ…わーったわーった…帰るぞお前ら〜』
仲田達はそそくさと出ていった。
影山先生…いくなら連絡くれれば行ったのに…俺は後悔する。
すると、
ブーブー…
スマホが鳴った。影山先生からだった。
直人とバーで盛り上がった日に交換しといた連絡先からメッセージを送ってきたらしい…
“今日同窓会にいなかったね。当然いると思って楽しみにしてたらいないもんだから、確認の連絡くらいすれば良かったね。バーが忙しいのかもしれないと思ったからさ…連絡がこんな時間になってしまいました。もし仕事終わったら学校の前で待ってるから来てくれない⁇”
「先生を待たせちゃってる俺⁉︎」
思わず声に出すとママがスマホの画面をのぞいた。
『もしかしてこの間の素敵な先生から⁇待ってるの⁉︎もうすぐ行っちゃいなさいよ今すぐ⁉︎』
「でもまだ閉める時間じゃないっすよ⁉︎」
『別にもう今日はママのワンオペでいいわよ早く生きなさいよ〜‼︎』
ママが俺の背中を押して、ロッカールームに押し込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます