「命を終わらせない砂時計 」

 世界のどこかに、時を戻す砂時計があると言われている。


 時を戻したい人。

 時を戻さず、先へと進みたい人。

 人類にはそれぞれの歩み方があるから、時を戻す砂時計探しに全力を出す人はそんなにいなかった。


 ……だけど、執念ってものは恐ろしい。

 本当に時を戻す砂時計を見つけてしまった人がいた。


 でも、時を戻す砂時計を見つけた人がどうなったのかは知らない。

 どんな人生の歩み方をしたのかも知らない。


 だって、世界は時が戻ったとしても覚えていない。

 時が戻ったと気づく人たちは、なんらかしらの当事者だけ。


 時を戻す砂時計。

 それに触れた人は、どんな人生を歩んだのだろうね。




「なんで……」

「生き返った……生き返ったぞー!」


 私の住む村は、流行り病で多くの命が失われた。

 私も、その1人。

 命を失った私たちは、もう2度と大好きな人たちに会うことができない。

 そう思っていた。


「私たち……亡くなったはずだよね……」


 なぜか、多くの命が救われた。

 なぜか、亡くなったはずの命たちが蘇った。


「生き返ったってことは、時を戻す砂時計を使った誰かが時間を戻したってことになる……」


 私たちの命は、誰かの手によって握られている。


「流行り病の対策をしなくちゃ……」

「誰かが時を戻してくれるんだから、流行り病になってもいいんじゃない?」


 時を戻す砂時計を持っている何者かが、自由自在に時を戻すことができるということ。


「本当にまた、その人が砂時計をひっくり返してくれるの……?」


 死ぬことができなくなった村。

 人が死ぬことが許されなくなった村。

 それは幸福? 

 それとも……。

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