「誰にも読まれることのない物語を」

 ネット小説。

 読者数1から始まった物語。

 1が2になって、2が3になって……。

 読者数が増えれば増えるほど、支持者が増えれば増えるほど、作者の人生は豊かになる。

 出版社からのスカウト、アニメ化、ドラマ化、映画化など。

 想像もしていなかったメディア展開があなたを待っている。




 その一方で。




(誰にも読まれることのない物語も存在する、か……)


 何が人生大逆転?

 人生が変わる?

 そんなの大嘘吐き。


(人生を変えることができるのは、ほんの一握りの人だけ)


 ネット小説なんて、数が山のように溢れかえっている。

 ネット小説なんて、存在すら見つけてもらえない物語の方が多い。

 それが現実。

 それが、夢を見ないってこと。




 〇月〇日 閲覧数1。


 〇月〇日 閲覧数1。


 〇月〇日 閲覧数1。




(自分がインフルエンサーだったら、人生なんとかなったかもしれないのに……)


 だけど、自分は極々普通の一般人。

 ネット小説を読むことが趣味の、極々普通の一般人。

 大好きな作家さんが、こんなにも凄いんだってことを広めるための術を持たない一般人。


(引退しないで……大好きなんです……)


 大好きな作家さんが、引退する。


(もっと読みたかった……)


 もっと作品を読み続けたかった。

 でも、読者の数は1。

 私以外の読者が、見つからない。

 世界は広いっていうのに、この作品を読んでいるのは世界に私しかいないんだって。


「本当に書くのをやめちゃうのかな……」


 私のために物語を書き続けてください。

 そう伝えられたらいいのに。

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