「白い花が咲き誇る季節を守ってくれたのは」

 スノウフラワーと呼ばれる幻の花。

 雪が降り積もる冬の間、枯れることなく美しい花を咲かせる。


「金持ちって、そういう変わったものが好きだよね」

「金持ちは、そういう変わったものを自分の手中に収めることが大好きだから」


 冬になると、大量のスノウフラワーが刈りつくされる。

 スノウフラワーはすべて高額で取引され、人々の懐を温める宝と称されていた。


(でも、賢い人なら気づいているよね)


 スノウフラワーは、もうすぐ絶滅してしまう。

 人々はスノウフラワーを刈りつくす一方で、育てる努力をしなかったのだから。


「サンタさん、スノウフラワーを守ってください」


 雪がしんしんと降り積もる夜、窓の外を見つめながらサンタクロースに願いを託すための手紙を書いた。


「サンタさんは、神様じゃないんだから」

「だって、クリスマスにはスノウフラワーが咲いてほしいの」


 サンタクロースが、本当に願いを叶えてくれるのか。

 不安と期待が入り混じった気持ちで、深い眠りへと落ちた。

 目を覚ましたとき、世界が真っ白に染まっていますようにと祈りを込めた。


「素敵な贈り物をありがとう」


 スノウフラワーを育てる努力をした人たちがいた。

 大切な大切な人類の宝を守ろうとした人たちがいた。

 人々は、そんな事実を知らないけれど。


「春になったら、この降り積もる雪と共に溶けてしまいたい」


 最後の育てる人サンタクロースは、そんな言葉を残して空へと旅立った。

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