第6話 たぬたぬくんもおさそいしてみよう

 たぬたぬくんがたぬきのまま川原かわらでおひるねしていたときのことです。


 小川おがわはさらさら、まるでこもりうた。

 おひさまぽかぽか、あたたかな午後ごごでした。


 ツンツン……


 おや?


 だれかがたぬたぬくんのふわふわしっぽをひっぱっていますよ。


「ひゃあっ!」


 たぬたぬくん、びっくり! いそいで草むらにかくれました。


 しっぽにいたずらしたのはちいさな女の子でした。


「よかった」


 女の子はどうやら、たぬたぬくんがしんぱいだったようです。


 女の子は川をあがってむらへ入りました。


 田んぼのあぜみちでバッタがぴょこんと出てくるとつかまえようと。


 ギコギコとまわ水車すいしゃを見つけると、くびをかしげ、じっと見て。


 お空をながめては、ながれるくもをつかもうと手をのばしたり。


 むこうからだれかがたらびっくりしてかくれます。


 ふしぎな子です。


 まるでふうせんみたい。

 あっちへこっちへ。

 ふらふら。

 ふよふよ。


(ああ、あぶないなあ)


 たぬたぬくん、ハラハラ。


 女の子が気になったたぬたぬくんは、そっとうしろをついていっていたのです。でも、こえをかけることはできません。


らない子だもん。なんていったらいいんだろ?)


 女の子はむら公園こうえんへ。


 公園こうえんでは人間にんげんのおともだちがいっぱいあそんでいました。


 女の子はかげからじっと、みんなを見ています。


(いっしょにあそびたいのかな?)


 ドロン!


 たぬたぬくんは人間にんげんの男の子にけると、女の子の手をひきました。


「い、いっしょに、いこ?」


 女の子はおどろいたようでしたが、「うん!」とおへんじすると、たぬたぬくんといっしょにみんなのところへはしりだしました。


「あ! たぬくん!」


「こ、この子もいっしょでいい、かな?」


「うん! もちろんいいよ!」


 みんないっしょ。

 女の子もいっしょ。

 みんなであそべばもう女の子もおともだちです。


「バイバイ!」


 カラスがくころ、たぬたぬくんはみんなとバイバイしました。ふしぎな女の子はでも、たぬたぬくんにバイバイしません。


「おうちはどこ?」


「あっち」


 女の子はずっとたぬたぬくんについてきます。

 バケバケの森はもうすぐそこ。

 人間にんげんは森には入っちゃダメなのに。


 たぬたぬくん、おろおろ。

 

「たぬたぬおにいちゃん、きょうはありがとう。またあそぼうね」


 そういうと、女の子はドロン! たぬきにもどって森のなかへ。


「たみちゃん?! けられるようになったんだ!」


 たぬたぬくん、ぽかん。


 ふしぎな女の子は、たぬたぬくんとはべつの家族かぞくの、いちばん下の子だったのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る