第21話 討伐団の団長
アラン団長は赤色の鎧に身を包み、長剣を携えていた。入団試験の時のような兵装ではない。本気で魔物を狩るための兵装だろう。長剣は鎧と同じ赤錆色の刀身をしている。鎧も魔物の血を浴びたのか、所々錆びているように見える。それにしても鎧も長剣も鮮やかな赤色だ。
「どうした牛頭、かかってこぬならこちらから行くぞ。」
アラン団長が牛頭の親玉に踏み込む。速い。一瞬で間合いを詰めた。牛頭の親玉は後ろに下がりながら、何とかアラン団長の剣を弾いた。だが後ろにのけぞっている。アラン団長は休む暇を与えない。そのまま連撃を放つ。
「キィン!キィン!」
鉄棍と長剣の交わる音がする。牛頭の親玉もなんとか応戦しているが、アラン団長の方が上手だ。窓の端にいたはずの牛頭の親玉は最上階の中央まで押されていた。
「さすがアラン団長!皆!牛頭を包囲せよ!」
まだ戦える残りの団員で牛頭を包囲する。すると窮地と見た牛頭が例の魔術を使用した。震脚一発、黒い光が牛頭の周りを稲妻のように放たれる。すると持っている鉄棍を振りかぶり、黒い光を取り囲んでいる団員たちに飛ばしてきた。
「うわぁ!黒い雷だ!」
団員たちが盾で防ごうとするも、その盾をするりと抜けて攻撃してくる。食らったものは痙攣してその場に倒れ込んでしまった。牛頭はアラン団長にも黒い雷を放ってくる。するとアラン団長は長剣を自分の顔の前に構え、何やら拝んでいるようなしぐさを見せると、赤錆色の長剣が白い光に包まれた。さっきも長剣に白い光を纏わせていた。これはドミニクが掌から出す白い光と同じ光だ。アラン団長は飛んでくる雷を白い光を纏わせた長剣で薙ぎ払った。
「貴様の力はこの程度か、ならば押して参る。」
アラン団長は長剣に白い光を纏わせたまま、牛頭の親玉に踏み込んだ。牛頭の親玉の鉄棍と剣が混じる、そのたびに牛頭の親玉の鉄棍は押されていた。アラン団長の下からの斬撃に、とうとう鉄棍が弾かれ、胴体ががら空きになった。アラン団長はさらにもう1歩踏み込み牛頭の親玉を袈裟に斬った。悲鳴と共に牛頭の親玉は崩れ落ちる。取り囲んでいた団員たちが、絶好の好機を逃すはずは無かった。
「今だ!続け!」
団員たちは持っている剣を牛頭の親玉の身体に突き立てた。牛頭の親玉は何本もの剣を突き立てられ、膝から崩れ、瀕死の状態だった。アラン団長は再び剣を拝むように顔の前に近づけ、白い光を剣に纏わせると牛頭の親玉の首を一閃した。牛頭の親玉の首が落ち、身体もゆっくりと倒れた。
「ふぅ。まぁこんなところか。」
アラン団長が鞘に剣を収めた。元気の残っている団員たちは皆勝どきを上げた。
「やった!やったぞ!魔物を打ち倒したぞ!さすがアラン団長!」
皆ボロボロになりながらも満面の笑みで肩を組んで弾んでいる。しかし、アラン団長の顔はまだ険しかった。窓に近づき、窓から外を見つめている。どうしたのか俺が尋ねると、
「まだ終わってないと思うんだがな。そろそろか。」
すると大きな鳴き声が外から聞こえた。牛頭の鳴き声ではない。もっと甲高く、しゃがれた声が聞こえる。翼の音が聞こえたと思ったら。4つの窓を赤い龍の姿が横切った。そのうちのひとつの窓に止まったのは、伝説の赤い龍だった。
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