第18話 討伐団とドミニクの決意
討伐団の作戦は日暮れから行われた。篝火を用意し、これから夜中の作戦が決行される。金の塔に上る団員のの先頭はニース隊長が名乗り出た。
「ここで名乗り出なきゃ、何が隊長だよ。いやもう隊長はクビになったか。元隊長だったな!がっはっは!」
と声高に笑っていた。そして、
「アラン団長はドミニクの護衛と、最後に8階まで到達してから加勢してください。ドミニクが倒れたら元も子もない。それに敵の親玉を倒す主戦力は温存しなければなりません。敵の親玉はアラン団長にお願いしますよ。」
これにアラン団長はゆっくりと頷き、
「賢明な判断承知した。猛牛と呼ばれる其方の力存分に発揮せよ。ニース隊長。」
と返答した。これには他の団員も鼓舞されたようで、
「俺たちももニース隊長に続くぞ!討伐団たるもの死ぬも本望!俺の屍の後に花が咲くなら!」
と叫ぶ団員に、
「大丈夫さ!ドミニクがいるんだから!皆で生きて帰ろう!」
とニース隊長がフォローした。団員たちはドミニクの存在を重要視していた。
「頼むぞ!ドミニク!俺たちが魔族を打ち倒してやるからよ!」
「俺たちの面倒は見てくれってか?」
ワッハッハ!と歓声が上がるなか、ドミニクは苦笑していた。ドミニク自身もそんな大役を任されると思っていなかったのだろう。しかし、ここで弱気になっては、討伐団の士気も下がる。ありったけの強がりでドミニクは言う、
「どんな傷でも治して見せます!どんどん飛び降りてください!」
その意気だと討伐団の団員は大楯を叩いた。歓声が上がる。ドミニクはどこまで覚悟しているのだろうか。もし討伐団を治療できなかったら、それは全滅につながるかもしれない。もし自分が体力の限界で途中で倒れてしまったら…。それを考えない馬鹿ではないだろう。しかし、ドミニクは、
「必ず皆さんを治して見せます!僕の命が尽きようとも!」
と強気な言葉を放つ。鼓舞するつもりなのか、それとも自分の力量を見誤っているのか。俺なら絶対にそのセリフは吐かない。何の保証があるのだ。ないだろう。ただの根性論でしかない。しかし、討伐団の面々は、
「そうでなくっちゃな!皆!ドミニクに命を預けてみようぜ!」
と歓声が上がった。俺には全く理解が出来なかった。ドミニクが倒れてしまったら、回復の保証のない作戦だ。この作戦は団員に捨て石になれと言っているのと同義である。しかし、ニース隊長が続けた、
「ドミニクなら大丈夫だ!あれだけ飯を食らうんだ!体力は十分だろう!皆の者俺に続け!」
団員たちの大笑いと共に、ニース隊長は金の塔の4つの門に突進していった。俺は不意を突かれて遅れて門に向かって行った。しかしながら、この討伐団はどうかしている。俺が所属していた護衛隊とは雰囲気が違う。護衛隊ならこのような無茶な作戦に対して、論理的に、クレバーに違う解決策を出していたはずだ。しかし討伐団の面々ときたらどうだ?皆ニース隊長のようであるではないか。自分の命を惜しまない。傭兵稼業には自分の命を守ることが最優先であると俺は教わってきた。なのにどうしてだ?皆己の命を捨てたがるように見える。そうまでして名誉が欲しいか?俺にはわからなかった。すると、ニース隊長は、
「サイラス、ドミニクを信じよ、お前を信じるドミニクを信じよ。お前が己だけを信じればいつか足元をすくわれる。お前を信じるドミニクを信じよ。」
と俺に言って、最前線に駆けて行った。
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