第9話 母四天王
地元に戻り俺達は喫茶店に向かった。
「ただいまー。いっくんこれおみや・・・げ?」
喫茶店に入りいっくんにぬいぐるみを渡そうと店内を見渡すとテーブル席に4人の女性が座っているのを確認して俺は固まってしまった。
「おいゆう、さっさと中に入ってくれよ。俺も座りたい・・・ぜ?」
「後ろが渋滞。ゆう、どうし・・・た?」
俺が出入り口で固まっていたので、智輝とヒロが文句を言いながら俺の脇から顔をだしてくる。そして俺と同じ光景を見たのか2人も固まってしまった。
「・・・よし!帰ろう。」
「・・賛成!直ちに解散。」
智輝とヒロが我に返り回れ右しようとしたら女性の声でまた動けなくなった。
「挨拶も無しに帰るのかい?そんな風には育てた覚えはないぞ!」
「「「ひぇっ!?す、すみません!」」」
反射で俺達は謝ってしまった。
俺達は怯えながらも4人が座るテーブルに近付いた。
「こ、こんにちは
「はい、こんにちは。ゆう君は挨拶できて偉いわねー♪」
「そうねぇ♪それに比べてうちの息子ときたら」
テーブルに座っていたのは、俺の母と鮎川母、それに黒瀬母と倉田母の4人だった。
「母ちゃん!店はどうしたんだよ!」
「今日は休業」
「か、母様、お、お仕事は?」
「お母様とお父様に代わってもらったわ!」
ヤスさん....。
「ゆうは私の隣に座って♡」
「じゃあ優奈さんとゆう君をサンドイッチにしちゃいましょ♡♡」
俺は母さんと萌華さんの間に座ることになった。
「そ、それじゃあ!店が心配だから俺は帰るわ!」
「僕も!お婆様を手伝ってくるね!」
智輝とヒロは喫茶店から抜け出した。
「あら?ゆうから女の匂いがするわね?」
「「はぁ!?」」
モカ姉と萌絵が一瞬でこちらに来た。
「・・・どういうことかな?ゆうちゃん???」
「ゆう!...ホントだ。女の匂いがする」クンカクンカ
二人の光のない目が怖すぎる
「モ、モカ姉、お、お店は?」
「皆が集まった時点でお店を閉めているわよ!看板あったでしょ?・・・・さぁ答えなさい?」
怖い。
「えっと、べ、別に女の人と遊んではいないよ。えっと、ゲーセンに行ってたから電車とゲーセン内にいた女の人の香水とかの匂いが移ったのかも...しれません。」
実際今日は男としか遊んでないから言いがかりをつけられても困る。
「・・・わかったわ。ごめんなさいねゆうちゃん...お姉ちゃんちょっと言いすぎたわ。」
「いや、モカ姉がいつも「女は急に何するかわからないから用心しなさい!」って言っていたことの確認みたいなものでしょ?むしろ心配してくれてありがとね。」
モカ姉は昔から他の女性に注意することを俺に説いてきたので、おそらく俺が無理やり何かされたのではないかと心配してくれていたのであろう。
「ゆうちゃん...♡」
「相変わらずモカちゃんはゆう君を溺愛しているんだな!」
「優成君は危機感が足らないところがあるからね」
智子さんと広子さんが俺とモカ姉のやり取りを見て笑っていた。
「萌絵も落ち着いて、ね?」
「・・・わかった。」
鮎川姉妹は普段通りに戻ってくれた。
「しっかし、ゆう君は女っ気はないんか?」
「ないですねー。俺だけじゃなく、智輝とヒロもないですよ智子さん。」
「そうかい?案外早くできるかもよ?」
「はい!はーい!私がゆう君の彼女になりまーす♡♡」
「アンタは黙ってな!」
「そんな〜」
萌華さんと智子さんが仲良さげに、その瞬間だけ学生のやり取りに見えた。
4人は学生時代の先輩後輩の間柄だからそう見えたのだろう。
「にいちゃ!おかえり!」
少し経つと二階の住居スペースからいっくんが降りてきた。
「「ゆうにぃおかえり!」」
「ゆう兄様、おかえりなさい。」
双子ちゃんと日葵ちゃんも降りてきた。どうやらいっくんと遊んでいたようだ。
「ただいま。っと、いっくんにお土産のぬいぐるみをどうぞ♪」
「!?ありがとー♪♪」
「そいで、双子ちゃんと日葵ちゃんにはこれ、デカいポテチとうんまいぞ棒大量にあげる。」
「「ゲーセン限定のやつだー☆♪」」
「わっ♪わっ♪」
双子ちゃんと日葵も喜んでくれて良かった。
俺は母さん達の席から離れて小学生組と遊ぶことにした。
〜母4人+鮎川姉妹視点〜
「...ゆう君は良い男だな!」
「当然!私の息子ですから!」
「優奈を見ているから優成君はしっかりしているのね。うちの息子もあれくらい女子に対してしっかりしてほしいわよ。」
「泉ちゃんもママの私よりゆう君に懐いているから少し寂しい感じがしますよー。」
「ははは!それは仕方ないだろ。まぁ泉君だけじゃないだろうけどな♪ゆう君に好意を抱いている鮎川家の人間は...な?モカに萌絵?」
「えぇ、大好きですよ?他の女が近付けないように気合い入れている程には愛していますよ?智子さん」
「ゆうはモテるから、目を光らせないといけないからね!モカ姉と協力体制ですよ。」
「あっはは♪相変わらず重いな二人は。まぁ私も幼い頃から知っているゆう君をどこの馬の骨かしらん女に取られるのは嫌だから頑張りな!」
「そうね。私も親しみやすい子が娘になると嬉しいわね♪あ、萌華は考えさせてね♪」
「私だけ!?何でなんですか!?」
急遽休業した喫茶店は賑やかだった。
男女比1対7の割合の世界のとある町の商店街で生活している男 フカヒレ @waka9029
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