第十七話 助っ人のお出まし

 再び川野先輩を探そうと、私は椅子から立ち上がる。とは言っても、この教室はくまなく捜索した。間違いない。かくれんぼは昔から得意だったんだ。実を言うと。

 それはさておき、先輩の寝言は相変わらず複雑怪奇だったという他ない。ひつじに挨拶するって、いったいどんな夢なんだ?先輩の居場所も気になるところではあるけど、夢の内容の方も気になるというのが正直なところ。私はそんなファンシーな夢、見たことないなー。

 捜索がてら、先輩の夢について考えていると、二つの足音が近づいてきた。

「雫ちゃん、やっほ~。」

「こんにちは。」

今日は大丈夫そうだ。よかった。元の先輩に戻って。

「皐月ちゃん探してるんだけど、ここにいるって聞いて。」

「えーっと、そうですね。ここにいるというのは間違いないんですけど…」

自然とそこで言い淀んでしまう。なんて説明したものか。

「どうかしたの?」

「私もまだ、見つけられてないんです。」

「え?」

先輩は目を丸くして驚いている。こんな顔、見たことないかも。

「さっきまで一応、手あたり次第探してみたんですけど、いないんです。」

「そうなんだ…。ごめんね、探してくれて。」

「あー、いや、私もちょうど気になってたっていうか、声が聞こえたもので…」

「声?」

「はい。川野先輩の声だけは聞こえるんですけど、肝心の姿が見当たらなくて…」

先輩はそこでうなずくと、やけに自信たっぷりな顔を見せた。

「だったら私に任せて。皐月ちゃんとの付き合いは長いからね。」

「ちなみに、どのくらいなんですか?」

「小学校からだから、十年近いかも。」

「そうなんですね。」

だからあんなに仲いいんだ。どこか羨ましい気分になりながらも、私は西垣先輩とバトンタッチすることにした。

 果たして川野先輩は、どこにいるのか。そして、どんな夢を見ているのか。謎は深まるばかりだ。

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