第十六話 寝言の行方 

 私の夢が突破口になるのは嬉しいけど、とどのつまり、どういうことなのか分からない。今日も今日とていつもの教室に向かうと、そこに広がっていたのは混沌だった。

「紬、今度は何やってんだ。」

「何って、そりゃあ昼寝に決まってんじゃん。」

「もう昼はとっくに過ぎてるでしょ。」

「じゃあ仮眠だね。」

「いや、そういうことじゃなくて、なんでこんなところで寝てるの?」

「私が突き止めようと思って。」

「何を?」

「そりゃあ、昨日言ってたやつだよ、先生が。」

「あー、あれね。」

この前スズメバチが入ってきて大騒ぎになったとは思えないほど、教室は穏やかな雰囲気に満ちていた。

「ふふふ。ひつじさーん、こんにちは~。」

この声、聞き覚えがある。そして、何やら意味の分からないことを言っている。どこだ?

「紬、川野先輩は?」

再び布団をかぶりかけていたのか、声が少しくぐもって聞こえる。

「ん?あー、私も知らない。」

「え?そんなことある?」

「あるんだな、これが。」

コントみたい。私に見つけられるかな。とりあえず起こさないように静かに室内を歩き回ってみるも、その姿は見当たらない。どこだろう…。もしかして、天井とか?一応見上げてみても、そこにあののほほんとした先輩はいなかった。ってまあ、そりゃそうか。

 小一時間探したものの、結局先輩は見つからなかった。謎は深まるばかり…。椅子に座って川野先輩のありかを探すため、目をつぶり、意識を耳に集中させてみる。また何か寝言を言うかもしれない。

「せ、先輩。」

肩をぽんぽんとされて、ようやく気が付いた。

「あ、ごめんごめん。どうしたの?岬ちゃん。」

少し心配そうな瞳が、私を覗き込んでいた。

「いや、あの、先輩が…」

もしかして、先輩を見つけたのかな。

「西垣先輩が、川野先輩がどこにいるか知らない?っておっしゃってたので。」

え?そんなことある?

「そうなんだ。たぶんだけど、この部屋にいると思うよ。」

私もまだ見つけられてないけどね。

「あ、そうなんですか。分かりました。西垣先輩に伝えておきますね。」

「うん。ありがとう。」

西垣先輩にかかれば、一瞬で見つかるだろう。私は安心して、夢日記用のノートを取り出した。

 まさか、ここから壮大なかくれんぼが始まるなんて、私は夢にも思わなかった。

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