第十八話 空に浮かぶ羊
結局、岬ちゃんも加わって、三人体制で探すことになった。
「先輩、どこにいるんですかね?」
「うーん、一応私も頑張ったんだけど、なかなか見つからなくて…」
机の下や掃除用具入れ、さらにはベランダまで、とにかく隅々まで探していく。
「紬ちゃん、寝てるね。」
「はい。仮眠してるんだそうです。」
「ふふっ。かわいい。」
慈しむようなその声音を聞いて、私は紬のことを羨ましく思った。私も言われてみたい、そんなこと。
優雅さを取り戻した先輩と、懸命に川野先輩を探す岬ちゃんを見ていると、なんだか心がほっこりしてきた。突如として始まったかくれんぼに興じていると、放課後の穏やかなひとときは、あっという間に過ぎていく。
「雫ちゃん。さっき声が聞こえたって言ってたけど、ちなみにどんなのだった?」
「うーんと、なんか、羊に挨拶してましたね。」
言っていいのかどうか迷いつつ、私は正直に寝言のことについて話した。
「相変わらずだね~。」
懐かしむようなその表情に、先輩たちの親しさの原点が垣間見えた。
「よくこんな寝言言ってるんですか?」
「うん。ひつじのほかにも、パンダとか、鳥とか、猫とか…とにかく、動物がたくさん出てくるんだよね。」
「そうなんですか。」
やっぱりかわいいな。そんな夢、私も見てみたい。
「羨ましいです。」
岬ちゃんも嬉しそうに、顔をほころばせている。
「ちなみにですけど、その夢ってどうやったら見られるんですかね?」
西垣先輩は、待ってましたと言わんばかりに口を開いた。
「皐月ちゃん曰く、『動物さんたちと仲良くなりたいなーって思った』ら、自然と夢に出てくるんだって。」
「「かわいい。」」
重なった声に、思わず笑みがこぼれる。岬ちゃんと顔を見合わせて、はたと呟く。
「やってみたいね。」
「ですね。」
「私も。」
西垣先輩も一緒になって、川野先輩のかわいらしいエピソードを堪能していると、不意に、のんびりとした声が聞こえてきた。
「もうちょっとだけ…寝かせて…」
かわいらしいその寝言は、あろうことか、天井から降ってきた。さながら、雲の上で二度寝をする天使のようだった。
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