第七話 気のせい
結局、夢日記を書くことが睡眠の質を向上させることにつながるのかどうかは、まだ分かっていない。それに、紬が見たという不思議な夢は、どうやら笑い飛ばすには値しないものらしい。自室で独り言つ。
「夢と現実って、つながってるのかな?」
その言葉は、開け放たれた小窓から、ゆっくりと飛び去って行った。
あっという間に時は経ち、再び朝を迎えた。寝ぼけた頭で夢日記を綴ろうとするも、シャーペンはなかなか動かない。なんだっけ…。思い出せない。
進む時計に急かされて、私は一旦回想を中断した。
学校に着いてしまえば、意外にも昼休みはすぐにやってくる。
「んで、あんたは一体何やってんの?」
「え、何って、そりゃあ昼寝に決まってんじゃん。ですよねー、皐月せんぱーい。」
空き教室の扉を開けると、そこには布団が敷いてあった。どこから持ってきたんだ?それ。
「ふふふ…分かってるねー紬ちゃん。」
二人して、何やら笑い合っている。ま、まあ、皐月先輩が言うんじゃ仕方ない…。朝中断した夢日記の執筆を再開するべく、私は手近の席に着いた。えーっと、何だっけ。なんか、教室が出てきたような気はするんだけど…。
「みんなー、お菓子買ってきたよ~。」
え?
「やった~。ありがとうございます。茜先輩。」
「茜ちゃんは優しいね~。」
何やらお盆の上にお菓子をてんこ盛りにした先輩が、意気揚々とやってきた。
「疲れた頭を癒すには、やっぱり甘いものが一番だからねー。」
その言葉につられて、寝そべっていた二人がお菓子の山に手を伸ばす。あれ、私、今何やってたんだっけ…。
「雫ちゃんも食べよ~。」
「あ、はい。ありがとうございます。」
私はシャーペンを置き、三人の近くに移動する。
「私これ好きです。」
「え、ほんと?私の一推しなの。」
そう言って嬉しそうに笑う西垣先輩が、昨日の慌てぶりが嘘みたいに頼もしく見えた。結局何だったんだろう、あれ。
色々考えていると、お盆の横にいつの間にかペットボトルが四本置かれていた。え?どこから出したんだ?速すぎて見えなかった。
「好きなの一本どうぞ~。」
「ありがとうございます。先輩先にどうぞ。」
「ありがとー。じゃあ、これにしようかな。」
「茜先輩も、先にどうぞ。」
「いいよいいよ。私は最後で。」
「じゃあお言葉に甘えて…これにします。」
「雫ちゃんは?」
「え、あー、えーっと、じゃあ、これで。」
そう言って手にしたのは、やっぱりレモンティーだった。お気に入りのドリンクのふたを開けて、私は上機嫌にのどを潤す。くう……やっぱりおいしい。
「雫ちゃんも遠慮せずに食べてね。」
「はい。ありがとうございます。」
私たちはめいめいに好きなお菓子をつまみ、ドリンク片手に談笑し、ささやかなティータイムを楽しんだ。あれ、何か忘れてるような…。まあいっか。
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