第六話 予期せぬ事態

「いや~、まさか楓ちゃんが忘れてるとはね~。」

皐月先輩がのんびりとつぶやいた。

「いや、私はその、なんていうか、その…」

戸惑う西垣先輩が、どこか新鮮に映る。

わたしたちは校門をくぐり抜け、急坂を下りている途中。散ってしまった桜の花びらが、私の足元を駆けていく。

「あれ、そういえば、紬ちゃんは?」

やっとの思いで言葉をつないだ西垣先輩の言葉に、私も同意する。

「昨日一番息巻いてたのに…」

どこ行ったんだ、あいつ。と思ったら、当の本人が姿を現した。

「よっ、雫。」

急に肩をたたかれて驚いた。

「よっ、じゃない。ったく、昼休みはどこにいたの?」

「あー、先輩すみません。私、ちょっと気になることがあって茜先生の所に行ってたんです。」

「あー、そうなんだ。何か分かったの?」

「はい。世紀の大発見かもしれませんよ。」

ふふふ、と謎めいた笑い声を出しながら、人差し指を掲げた。

「なんで私の質問はスルーしてるんだよ。」

「スルーなんかしてないよ。先輩に挨拶するのは常識でしょ。」

「まあそうだけど…」

私をスルーするのはいいのか?

「まあまあ、二人ともけんかしないで。」

なだめる西垣先輩の声にほだされて、反撃を諦める。この人に言われちゃ仕方ない。

「それで紬ちゃん、その世紀の大発見って、一体何なの?」

西垣先輩の質問に、紬は誇らしげに答えた。

「実はですね~、私、おととい変な夢を見たんです。」

私が取り合わなかったやつだ。

「それが、夢の中でも寝てるっていう夢だったんです。」

改めて聞くと、なかなかにややこしい話だ。

「不思議に思って先生に聞いたら、どうやら…」

三人で、思わず息をのむ。

「現実と夢が、つながってたんじゃないかって。」

あれ、私たちって今、何してるんだっけ。

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