第三話 のんびりお話タイム 

「失礼します…」

恐る恐る入ってみると、思いのほか和やかな雰囲気を感じた。

「こんにちは~。」

「こんにちは。」

椅子に腰掛けて何やら作業をしていたのは、保健室の先生。白衣がとても似合っていて、集会で姿を見かける度に素敵な人だなーと思っていた。

「先生、この子、あの委員会に興味があるみたいですよ。」

「え?そうなの?」

「あはは…まあ、そうですね…興味があるというか…」

反応に困り、つい苦笑いしてしまった。

「嬉しいな~。メンバーがなかなか集まらなくて困ってたところだったの。」

「そうなんですね。」

物珍しげに辺りを見回していると、ベットがもぞもぞと動いているのが見えた。もしかして、具合が悪い人が寝てたのかな…。これは申し訳ない。

「そういえば先生、皐月ちゃん知りませんか?」

「ん?さっきまでその辺にいたんだけど…」

「もしかして、あそこにいる人ですか?」

私がベットの方を指すと、美人さんは少し困ったように笑いながらそっちに歩いて行った。

「皐月ちゃーん、いつの間に寝てたの?」

皐月ちゃんと呼ばれたその人は、ゆっくりと体を起こすと、気持ちよさそうにあくびをした。

「ふあ~、あ、楓、おはよ~。」

「おはよう皐月ちゃん。いつから寝てたの?」

優しげに問いかける姿になぜかどきっとしてしまった。

「ん?あー、いつだったかな~。分かんない。」

「ふふ。よく眠れた?」

「うん。ここはやっぱり寝心地がいいなー。ね、先生。」

ゆったりと話すその様子に、とある動物が目に浮かぶ。

「寝心地がいいのは分かるけど、具合が悪い人が来たらちゃんと譲るんだよ。」

「は~い。了解です。」

なぜか敬礼をしながら布団を抱きしめている。何というか、すごく癒される。

「あ、そういえば自己紹介がまだだったね。私は養護教諭の瀬本って言います。よろしくね。」

「水無月雫って言います。こちらこそ、よろしくお願いします。」

「三年の西垣楓です。困ったことがあれば何でも聞いてね。」

「ありがとうございます。」

「ちなみにこの子は、同じく三年の川野皐月って言います。とっても優しくていい子だから、仲良くしてあげてね。」

「よろしくね~。」

「はい。よろしくお願いします。」

何だろう、この空間。全体的にのほほんとしている。でも、私でもいけそうな気がする。

 穏やかな雰囲気に身を委ねていた私は、数十秒後、その心地よい静寂が破られるなんて思いもしなかった。

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