第7話 英雄
中間テスト当日になり4日間受け続けた。そして念願の休みを手に入れたと思ったら仕事が来るという地獄に遭っている。
「……」
「だからこれからガードマンと仕事だ」
「休暇……」
「もう使い切ったろ」
「……」
「なんだ? この仕事をやめたいのか?」
「そういう訳では……」
「いいか? もし仕事を辞めることになったら孤児院連れてってやるからな。お前は我々政府が特別許可して孤児院に行かず済んでいることを分かってるだろうな?」
「もちろんです……」
孤児院……昔はそこに入っていたが環境が酷すぎたせいか毎日虐められて僕は嫌になった。でも今はそんなところから抜け出して"普通"の暮らしを手に入れた。またあんな所にはもう2度と戻りたいとは思わないだろう。
「分かったならさっさとガードマンの迎いに行くんだな。ガードマンはこの病院にいるぞ」
「分かりました……」
次の任務はガードマンと共に連日続いてる子供誘拐事件の犯人を突き止めて排除することだった。
「迎いに行くか」
僕は憂鬱な気分のまま外出した。"ガードマン"……チームの中で最年長でありチーム創設からずっと勤務し続けているのだ。昔はいろんな国を渡り戦って"英雄"とまで言われていた。
「こんにちは。本日のご要件は?」
「あ〜……203号室の十蔵さんの面会に来ました」
「かしこまりました。203号室はここから渡り廊下を歩いて突き当たりにあります」
「どうも」
扉を開けて中に入るとそこには横になっている爺さんが1人いた。この爺さんこそが"ガードマン"なのだ。
「やぁ爺さん」
「ん?」
「手土産を持ってきたぞ」
僕はそう言って政府からの命令書と硬い煎餅をあげた。
「おぉ……この煎餅……! ダイヤモンドよりも硬いと言われてる悶絶煎餅じゃないか!」
「いや煎餅よりもこっちを見ろよ」
僕はそう言って命令書を十蔵に見せた。
「んん? これはこれはお主はゴーストか?」
「どうもガードマン」
「久しぶりじゃないかゴースト」
「2年ぐらい前の任務以来ですね」
「あの頃は大変じゃったけど今回も嫌な任務を受けたなぁ」
「仕方がないですよ」
「それじゃあ支度するとしようかのぉ。と言うことでこの場所まで連れてってくれや」
「ここは……!」
僕は十蔵に言われた目的地の児童保護施設に着いた。
「どうしてここに?」
「しーっ……少し静かに……」
「?」
十蔵はこっそりと中で1人本を読んでいる子供を見ていた。
「あの子は?」
「ワシの孫じゃ」
「孫? 両親はどこに?」
「息子たちは何年も前に事故で死んだ。それも見るに堪えない姿でな。1人になってしまったあの子がどうしても不憫に見えてしまってなワシが引き取ったのだが、この仕事と子供を世話するのはこの老体ではキツくての……。結局この保護施設に入れたんじゃ」
「そうしてたまに元気にしてるのか見に来てるのですか?」
「うむ」
見た感じ年は俺と同じぐらい?な感じの子だった。
「爺さん、そろそほ仕事に戻らないとだぞ」
「分かっとるわい……」
そうして俺は十蔵と仕事に取り掛かることにした。時刻は夜中の3時。
「クソ眠い……あの爺さんはまだかよ」
「すまんな遅れたわい」
「遅ぇよ」
振り返ると"ガードマン"全身が厚い装甲で覆われており俺の身長の2倍はあった。
「それ動けるのか?」
「馬鹿にするんじゃない。ワシはこいつと何十年やってきたと思っとるんだ?」
「はいはい」
「それで今回の任務は?」
「読んでないのかよ……。子供を誘拐してる犯人を探せってな」
「それはいけないな」
「それでその誘拐犯がこの倉庫にいるんだよ」
「ならな突入するか?」
「いや、まずは俺が偵察するから合図が出るまで待機しててくれ」
「早くしてくれよ、老人はすぐにどっか行っちゃうからな」
中には武装してる護衛が10人ぐらいに誘拐された子供たち5人がトラックの荷台に乗っている。ここは突っ込むのはあまり得策とは思えないな。
「なぁガードマン……ここは……ってどこ行った?」
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