第6話 勉強
テストが近くなって1週間前になった。分からない問題もちょくちょくあるため先生に聞いたりして頑張っていた。だが……それでも分からない問題はやはり出てくる。
「これ……どうやったらこんな答えになるんだよ……」
俺は頭を抱えながらシャーペンを計算用紙に途中計算をしていた。
「悩んでるね」
ひょっこりと横から"アサ"がでてきた。
「何の用だ?」
「様子を見に来ただけ」
「なら帰ってくれ」
「困ってるなら一緒に勉強しようよ」
「一人でもどうにかなる」
「そんなこと言ってずっと手が止まってるけど……」
「……」
"アサ"の言う通りだ。俺はさっきから間違っている計算を繰り返して解き直してるがどうしても模範解答と同じにならない理由がまったく分かってなかった。ここで分からないことを聞くのが無難なのかもしれない。
「じゃあ勉強を手伝ってくれ」
「いいよ。ならいつにする?」
「いつ?」
「ほら、勉強を一緒にやる日」
「今教えればいいのでは?」
「そうやって後から分からないのがでてまた聞きに行くのはめんどくさいでしょ?」
「それもそうだな」
「だからいつ、どこでやるのかを決めようよ」
学校で2人っきりでやるとしてもクラスメイトがからかってくるかもしれない。だからと言って金をかけてお店でやるのもめんどいし、図書館でも人の目があるから嫌だな。僕の家だと見つかってはいけないものが大量にあるから絶対に駄目だ。
「……もし嫌じゃなければ私の家に来る?」
「へっ?」
なんとここで"ワタシノイエニクル?"という魔法の言葉を使ってくるとは想定してなかった。
「アサさんの親とかに迷惑かけない?」
「大丈夫。なんともないよ」
ここで断ってしまえびせっかく仲良くなれるチャンスは水の泡になってしまうかもしれない。ここは断ってはいけないとそう本能が俺に言っている。
「お願いします」
「じゃあ今週の日曜日に一気に終わらせよ」
「ありがとうな」
「別にいいよ。大したことじゃないから」
放課後になって僕は今日のことをずっと考えていた。
「アサさんの家……」
気になるあの子の家に行ける滅多にないチャンスが到来して頭を悩ませていた。思い返せば後悔と嬉しさが混ざった気持ちでいっぱいいっぱいだった。
「落ち着くんだヨル。僕はグリムリーパーのゴーストだろ……」
そんな時に1つの電話が入ってきた。受話器を手に取ると政府からの連絡だった。
「なんだよ、俺は今休暇中だぞ」
「そんなことはもちろん知っている」
「じゃあなんだよ?」
「なにかここ最近変化はないか?」
「は? 何言ってんの?」
「変化無しと……」
「用が済んだなら切ってもいい?」
「いや、あと一つだけ聞きたいことがある」
「なんだよ」
「ベルセルクのことなんだが奴となにかあったか?」
「?」
「最近任務の最中にボーっとしているときがあるんだ。それで最近一緒に任務をした奴が君だったのだよ」
「俺にはなんのことかさっ……」
待てよ……。俺は最近"ベルセルク"と任務なんてした覚えが一切ないのだが。
「ないか。それではまた連絡する」
「おい待て……!」
俺が止めた時には既に電話は切れていた。
「切れちまった……。最近あいつと任務なんてしてないよな……?」
疑問だけがそこに残っていたが俺はテスト勉強に専念した。
「やばいやばい。課題がまだ終わってないんだよ!」
そうして僕は寝るまで課題とテスト勉強に追われてそのまま力尽きた。そんな日が日曜日まで続いていた。
「死にたい……死にたい……」
既に身体は限界を迎えていた。だがそんな日に限って僕は予定を入れていた。
「今日か……」
日曜日に"アサ"の家で勉強をするのをすっかり忘れていた。
「さっさと準備しないと……」
だが久しぶりに私用の外出をするため服があるかは分からなかった。
「この前整理したときに捨てたかも」
今さら断ることはできないしどうするか考えていた。
「家に呼ぶしかないかも」
恐る恐るメールを送ってみるとすぐに返信が返ってきた。
「よかった……こっちまで来てくれるのか」
一応のため住所をメールで送っといた。
「今のうちに片付けをしとかないと……」
部屋はいつも通り綺麗だがクローゼットの中やタンスの奥など、いろんなところに装備品が隠してあるためそれを風呂場に集めて収納した。
「これならバレないだろ」
「ヨルくーん。着いたよー」
ちょうどよく"アサ"が着いてくれたようだ。
「いらっしゃいアサさん」
「おはようヨルくん」
僕はリビングまで案内して早速分からないところを教えてもらうことにした。
「まずこの大問なんだけど……」
「あぁこの問題ね……」
そうして時間はどんどん過ぎていき、いつの間にか夕方になっていた。
「疲れだー」
「お疲れヨルくん」
「アサさんは何時頃に帰るんだ?」
「ん? 夕飯を外で食べるからもうそろそろかな」
「外で食べるの?」
「うん。親がいないからね」
「ならさ……今から料理するから食べてく?」
ここで食事を誘うなんてどうかしてるだろ僕! 絶対にやめたほうがいいと分かってるのに身体は言うことを聞いてくれなかった。
「ホント? じゃあお願いしちゃおうかな」
「じゃあちょっと待っててよ」
僕は台所に行ってカレーライスを作ることにした。一番シンプルで一番やりやすい料理の方が失敗しにくいからな。
「ちなみに辛いのは得意?」
「得意だよ」
僕はいつも中辛のカレーライスを作るので確認をとった。そして1時間ぐらいかかってようやくカレーライスが出来上がった。
「どうぞ」
「ありがとうヨルくん」
「さてと……いただきます」
「いただきます」
「味はどう?」
「ん……辛くないね……」
「えっ? 中辛だよ?」
「いや、ヨルくん。中辛は辛くないよ」
「嘘だろ」
「でも美味しいよ」
「ほっ……よかった」
「ヨルくんは今回のテストはいけそう?」
「なんとかね……。仕事の方が邪魔してるけど」
「大変だね」
「仕方ないよ。やらなきゃいけないんだから」
「ヨルくんはその仕事は辞めるの?」
「う〜ん……。高校卒業後に選べるんだけど迷ってるかな……」
「そっか……」
一瞬気まずい雰囲気が流れたのは気のせいか?
「……そういえば大学行くの視野に入れてなかった」
「私は指定校推薦で行くよ」
「凄いな。僕も指定校で行きたいけど行きたい大学がないからなぁ〜」
「ヨルくんは……」
「?」
「ヨルくんはさ……その仕事で嫌なことはなかったの?」
「感じないから分からない」
「同じ人を殺すのは辛くないの? 罪悪感とか感じないの?」
"アサ"は問い詰めるように話してきた。
「おっ……落ち着いて」
「私はヨルくんが辛いことをやって欲しくないよ……」
暗い話をしてしまったせいか"アサ"は涙を零していた。
「あっ……ごめんねヨルくん……」
「疲れてるんだよきっと……」
僕たちは気まずいまま勉強会を終えた
「ごめんねヨルくん」
「いいんだよ。おやすみアサさん」
「……おやすみなさいヨルくん」
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