第4話 老舗ーーに食される
暗い空間のなか手を縛られる感触、身動きをとろうにも縄らしきものに食い込むように擦れ、痛みがはしる。ただ何者かの足が見え、それが徐々に近づいてくる。
???「お前がオレらの包丁を奪いに来た奴か?」
その容姿は中年のふくよかな男性で厨房のほうを見た時、微かに見えた。だが、頭に巻かれたタオルは無くなり、えぐれたような古い切り傷がそこにはあった。恐らく隠しているのだろう。
李「オレはここの店長『李』だ。まさかなあ、他殺撲滅委員会さんに見つかって死ぬと思ったが運よく助け船が来てよ~ありがとな!!!」
李は大きな声で穢く嘲笑いケントを見る。
日本他殺撲滅委員会が!?なんでそんな犯罪を助けるようなことをするんだ?
颯田「おい、なんで日本他殺撲滅委員会はお前らを助けるんだ?おかしいだろ、相手は他殺をなくしたいのに」
李「はっ、そんなのも知らねえのかよ、お前らGATHERはブラックリストだろ、言ってしまえば戦力は使いたくないのだろうな」
ブラックリスト......?どういうことなんだ、でも何か理由があるということか......
李「お前を殺せばオレら家族は生きていけるんだ......生きていけるんだ......」
その男は包丁を強く握りしめ、筋肉がこわばっていく。そこには束縛から逃れられるという強い考えが芽生えていた。
颯田「......」
どうすれば助かる?体は動かない、ここまで来ては言葉で説得する、などできるわけがない。
李「死んでもらうよ!!!!お前がこの包丁で斬る最後の贖罪だ」
ケントはただ黙ってその時を待つほかすることは無かった。
ドン!ガラン!バリリン!!!キュゥゥゥイイイ!!!!!!!
シャッターを突き破る大きな音、店内の椅子や机が何かとぶつかって吹っ飛び、タイヤが地面と擦れる非現実的な音がした。その出来事があまりにも一瞬で、どこか頭の片隅においていた出来事だったからなのか、瞬き一つもせずにそれをただ眺めていた。
鷺島さんがバイクで店内に強行突破した。
颯田「鷺島さん!!!」
鷺島「鷺島さんじゃなくて『リツ』って呼んでよ」
開口一番にいうことなのだろうか、よくわからないが安心感が頭の片隅から全体へと広がっていく。
鷺島「とりあえず、あいつを片付けよ」
李「ぐっ、轢きやがったか......」
先ほどケントの近くにいた李はリツの乗っていたバイクによって吹き飛ばされていた。血まみれながらそれは表面を擦りむいたことによって生じたものであるように見える。実際、李は軽く立ち上がってみせた。
鷺島「轢いたのに立ち上がれるというの!?」
李「お前らと違って国の支援を受けているからな、それに家族がいるんだ。こんな傷一瞬で治せなきゃどうするんだよ!!」
威圧するように見下すように叫ぶ。その言葉には威厳がほのかに感じ取れた。
鷺島「くっ、ならば......」
ミニガンを構えて引き金を引くたちまち回転し、それは銃弾を多くの発射する。全弾、命中した。でも李の勢いが死ぬことは無かった。
李「お前ら諸共全員殲滅してやる!!!!!!」
体中に弾丸が埋もれた男はそれを感じさせない勢いでこちらに来る。
......リツを守らないと!
僕はリツの前に立ち、振りかぶらされる中華包丁を見る。
くっ......!
???「あれ?意外と頑張ってた?」
階段を下ってきたその男はある時は隣人、ある時は路地裏で僕を殺そうとした上井であった。
その姿を見て李の顔は青ざめていく。
李「お......おい!片手に持っているそれは......!!!!!!!!!!!!!」
上井が持っていたのは黒く細い糸のようなものであった。それらいくつもが束ねられ残酷な情景を引き連れていた。
李「............なぜ?」
上井「本当はね~君の家族について話そうかと思っていたんだよ、少しでも颯田に他殺への恐怖を与えたくてね」
階段を降る足音、乱雑に鳴る頭蓋骨と胴体、四肢、それらが全て不協和を響かす。
李「殺す......殺してやる!!」
だが上井はそれを軽くあしらう。
人間技とは思えない蹴りを入れられ、李は吹き飛ばされる。もう店内はあの時の暖かさを持っていない。
上井「もう君が守るものは何もないんだよ、李くん」
李「......いや......い.......や.........」
李はもうおきあがることはないだろう。
その姿を見て、上井は顔色変えずに淡々と話し出す。
上井「こいつは守るもののためには何でもする男だ。でもその守るものが無くなれば何もしないし生きることも捨てる」
ケントの怒りがこみあがってくる
颯田「何でこんなことするんだ!!!!」
上井「おっと、効果はあったかな。なぜか?それはなこちらの戦力を使わずともGATHERのような組織を壊滅させたいからだよ」
ケントはいつの間にか銃を撃っていた。それは殺しを知っているからこその怒りの表れだった。
上井「...容赦なく撃つようになったか。常人では考えられない成長スピードだ。とりあえず目標は達成したから......」
そう言って上井は過ぎ去るように逃げて行った。弾丸は上井に当たらず壁に埋もれていた。
空間には赤い鮮血の匂いと四人家族の屍しかなかった。
ケントはそれをみてただ自分の気持ちの矛盾を感じる。
この人はあんなことをされるほど酷いことをしたのか?......それともなにも悪いことをせずただ殺傷能力がある刃物で料理を提供していただけなのか?
自分の中の人を殺める心は虚しさへと変わっていく気がする。
ケントは自然と手を合わせる、それしかできなかった。
颯田「御馳走様でした.........」
颯田はーー包丁を手に取った。重くずっしりとしていた。それは家族の愛なのか、それとも重い運命なのか。
二人は外に出る。外は今から日を浴びようとしていた。暖かかった。
鷺島「ふわあ~、疲れた、とりあえず目的は達成できたね」
颯田「ねえ、あの惨事をほっとくの?」
ケントは店内を指差す。確かにそれは悲惨なものだった。当然、何かがあったのだと確信が持てる。
鷺島「あいつらにバレてるし、普通の人が見ても気にも留めないよ」
颯田「何で?こんな異常なのに?」
リツは顔色一つ変えずにあることを口にする。
鷺島「だって、誰も他殺を知らないでしょ?」
それはスッと出てきた言葉だった。この世界の歪みを象徴するものをケントは再確認した。
どこか重い足取りでケントは、軽やかな足取りで歩くリツを追いかけながら、バイクに乗る。
髪がなびいてほのかに香った切なさは冷酷さなのかと思い始める。
高速道路の途中、サービスエリアの椅子に座り、リツが一人話し出す。先程まで互いに口を開いていなかった。
鷺島「私さ、驚いちゃってさ、颯田くんが手を合わせているところ見て」
真剣な声色で話す。
鷺島「私、やっぱり壊れちゃったのかなって」
乖離した世界と自分を慰めるような描写だった。だが、午前九時手前、とても暗い話が出来ないような環境であった。
鷺島「颯田くん、酷い話していいかな?」
ケントは何を言い出すのかとヒヤヒヤしたが、とてもじゃないが、断ち切れるような声じゃなかったので静かに頷く。
鷺島「私が、小学生の頃のことなんだけど......」
リツは記憶の一片を話だした。
鷺島「私さ、親が手を汚していたからさ、よく狙われたわけなの、その当時は知らなかったけど......」
リツは話の途中でふと感じた。
あまり...暗い話はしない方がいいよね......
鷺島「ううん、やっぱりいいや、この話は重すぎる」
ケントはその出来事がリツの人生の舵をねじ曲げたのだと知った。記憶に残る大きすぎる一片が。
明るい面、冷酷な面、その原因となった闇深い面、リツのもつ三つの側面が露になった。
リツは過去になにがあったんだ......
その真相は高速道路から横に見える東京湾に沈んでいた。
長い時間考えていたんだ......僕は......
GATHER本部に着く。そこにはルータ・ウッドストンがいた。
ウッドストン「お疲れ、ちゃんと目的は達成したか?」
颯田「はい、これです」
ルータはケントからーー包丁をもらう。そして同時にケントの片腕に違和感を感じる。
ウッドストン「確かに受け取った。颯田、申し訳ないが精密検査を受けてもらえないか?」
颯田「え?どうしてですか、体に悪いところは無いですよ」
ウッドストン「なんっか、違和感感じるんだよな......」
颯田「いやいや、何処も悪くないですよ~、そんなねえ、特別、"骨折"とかするようなことしてないですし......」
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医者「左腕の骨折です、他にもいつかひびがあります、入院してください」
堂々と宣告されたその言葉はでしょうね、て感じであった。
骨折か......でも、現代の技術なら1日とかで......
医者「期間は......一週間ですかね」
え?長!?ゴールデンウィークなのになにもできないの......
ケントは徐々にこの世界と調和しだしていった。
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