第一部 第一章『GATHER』
中華編
第3話 老舗中華を喰らう
中華料理屋を狙う...日常の中でGATHERの任務は遂行されていたんだ、知らなかった。
颯田「何で中華屋を狙うのですか?」
ウッドストン「それはな、その店が禁止された中華包丁を使っているからだ」
中華包丁とは鋼やステンレスでできた長方形の形をした刃物である。鋭い切れ味や叩くなども可能なため案外万能なのだ。
ウッドストン「調査員が仕事の帰りにその中華料理屋で飯を食ったら異常に旨かったらしく、それからそこで調査して、今に至るわけだ」
飯食ったら分かるってどういう舌の肥え方しているんだ......頭おかしいなその人(のちに登場します)
鷺島「どうやってその包丁を奪うの?」
ウッドストン「作戦は簡単だ、閉店十分後に閉められたシャッターをぶっ壊しながら突入して後は店主を脅せばいい」
滅茶苦茶大胆な計画だな...
ケントはあまりの大雑把な計画に呆れを感じた。
ウッドストン「さあ、そろそろ移動してもらうよ、後ついでにその店の料理も食べて教えてくれ」
今から滅ぼす店に対してする行動なのか、命に感謝的なこと?
鷺島「じゃ、行こっか颯田くん」
ウッドストン「その前に鷺島、少し残ってくれるか」
何か重要な話でもするのかな?
ケントは何かを察し会議室の外に出る。
会議室にはリツとルータの二人だけになった。
ウッドストン「颯田の感じはどうだ?」
鷺島「至って健康ですよ」
ウッドストン「そうではなく、どう思う、颯田に対して」
リツはルータの問いに少し照れを顔に映し出す。
鷺島「どうって……不思議な感じの人ですよ、いい仲間って感じの」
リツの言葉を聞いて、ルータは微笑みを浮かべる。どこか安心したような表情だ。そしてどこか見守るような雰囲気だ。
ウッドストン「もし、颯田ともっと仲良くなりたいと思ったら協力するぞ」
鷺島「え!い、いやだいじょうぶだよ…うん、だってルータにも思い寄せている人いるでしょ?」
その言葉を聞いてルータは途轍もなく驚いてしまう。
ウッドストン「おい!どこでそれ聞いた!アイツには届いていないよな?」
鷺島「ふふ、どうだろうねぇ」
ウッドストン「逃げるな~!」
リツは仕返すかのようにその言葉を言い放つ。だけどそれを聞いたルータは怒りを覚えることはみじんもなく、やはりほっと安心した表情であった。
良かった……鷺島も普通の女子高生として人生を歩めるんだ……期待してるぞ颯田。
□ □ □
リツが会議室から出てくるのを目撃する。どこか赤みを帯びた顔をしている。体調悪いのかな?
颯田「大丈夫ですか?」
鷺島「うん、だいじょうぶ、じゃあ行こっか」
二人はエレベーターに乗り、上に上がっていく。
この感じ…GATHERって地下にあるんだな。
目的の階層につき、ドアが開くとそこはケントが見慣れた商業施設であった。
ここって、吉祥寺だったのかよ……
何事もなくリツがエレベーターを降りるのでそれを真似して同じように降りる。
そして二人は外に出て交差点を渡り駐車場まで行く。
鷺島「移動するからヘルメット被って」
そう言われてヘルメットを受けとったがどこか違和感を感じる。
鷺島さんって同い年だよな…てことは15歳?
颯田「鷺島さん、バイクって法律で、駄目じゃないですか?」
鷺島「ふふ、安心して。GATHERは反社会的勢力だから身分証の偽装もできるの」
改めてやばい組織に入ってしまったのだな、自分は。
ケントはリツの後ろに乗る。エンジンのかかる音がする、そしてリツが前傾姿勢になる。
鷺島「初手から全速力を出すよ!捕まって!!」
強い風が向かい風となって顔面に直撃していく。反射的にケントはリツを抱きしめる形になる。
あったかいなぁ…鷺島さん……
髪がなびいてほのかに香る切なさと女の子のように甘い思いが走り出す。
全速力で高速道路を駆け抜け、ふたりは中華街に辿り着く。
颯田「中華料理屋はここのどこらへんにあるの?」
リツは携帯を取り出し、今回の計画のメモを開く。そしてそれをケントに見せる。
そこには中華街の簡易的な地図と作戦の手順、また仲間や自分が敵に捕らわれた時の対処方法について書かれていた。
鷺島「中華街を進んで丁度中間のところにあるね。時間は......まだまだあるね、味の感想聞かれていたから何か食べよっか」
何かというのは正しくは敵地のど真ん中で、という意味になるのだよな......
店の前には中華的な提灯や、赤い表面に黄金の文字で「○○料理」とでも書いていそうな看板、そして現代的な光源で彩られていないため、目立つ店舗だとは思えない。だが、それだからこそ感じられる老舗の暖かい空気はとても星五レビューで溢れていそうだった。
だが、ドアには「本日をもって閉店します。ご来店ありがとうございました。」と書かれていた。
ケントの心にはこのあとこの店を襲撃することになるのかというものさみしい痛みを抱き始める。
これは本当にして良い行いなのか?......
ケントは微かにそう思う。
鷺島「入ろうか」
ドアの取っ手に手をかけ扉を開く。店内は調理音と美味しそうに食べるお客さんの話声で満たされている。
美味しそう......
席に着き、メニューを見て何にしようかと迷う。麻婆豆腐、回鍋肉、八宝菜、青椒肉絲......どれを頼んでも期待を超えてくるだろう。
鷺島さんは何を頼むのかな?
テーブルの向かい側に座るリツを見る。
じゅるり......
メニューに載っている料理の写真を見て、これでもかと食したい気持ちをあらわにするリツがそこにはいた。
颯田「鷺島さんは何を頼みます?」
鷺島「......あ!えっと~私は八宝菜にしようかな」
颯田「ふふ、じゃあ僕は麻婆豆腐と小籠包頼みますね」
リツは微笑みに近い笑い声に突っかかりを感じた。
鷺島「え~と、私なんか変?」
颯田「変じゃないですよ......」
後に出てくる言葉をケントは喉に引っかかって出せなかった。ケントはふとあることが思い浮かぶ。
鷺島さんは自分が他と違うことを恐れているのかもしれない。そりゃそうだ、さっきどこか不完全な笑を浮かべていた。何か他に理由があるのか......?
鷺島「そっか.....」
リツの息には安堵した気持ちが流れている。
ケントたちが注文の品を決めたことを察したのか店員の方が近づいてくる。
店員「ご注文伺います」
颯田「八宝菜、麻婆豆腐、小籠包でお願いします」
店員「ご注文承りました~、ごゆっくりどうぞ」
そそくさと店員の方が厨房のほうに向かっていく。
僕は先ほどの店員と厨房にいる人物の顔の雰囲気がにていることに気づく。恐らく今日は家族で営業しているのだろう。
リツはまださっきのケントの微笑みを引きずっているようだ。
鷺島「ちなみに、さっきは何で笑ったの?」
颯田「あんなに美味しそうにメニューを眺める人初めて見て」
ケントはやはり微笑んだ表情を浮かべる。
少しすると先ほど注文した料理が届いた。
店員「お待たせしました~.........ご注文の品は以上でしょうか?」
颯田「はい、大丈夫です」
テーブルには、純白の豆腐とコントラストを際立たせるあの赤みがかった部分が絡み合い形成された麻婆豆腐。
これまた純白の生地でまだ目にすることは叶わないその料理の要となる激熱スープを隠し持った小籠包。
僕の席の反対側のテーブルには彩り豊かな野菜と海老やイカなどの海鮮が程よく配置され、じゅるりと声を出してしまいそうになるのも容易に考えられてしまう八宝菜。
じゅるり......
そう、実際に聞こえてしまったのだ、しかもそれは半径1メートル程のことで二度起きたのだ。
鷺島「いただきます」
リツは恐る恐るそれを掬い上げ口元に運ぶ。それは口の中全体に電撃を走らせ同時に表情筋を心地よくこわばらせる。
鷺島「............」
美味しそうに食べるなぁ......
表情すべてに料理人やスタッフの方々が『ここまでやってきたかいがあった』と考えてしまいそうな表情であった。
鷺島「...~ん」
ケントはリツの表情にうっとりしていたため気づけなかった、自分の口元に小籠包が運ばれていたことを。
『颯田くん硬直してる......引いてるのかな。さっき調べたら相手の口元にケーキとか運ぶと仲良くなれるみたいなの書いていたから試してみたけど......侮辱的なことなのかな,,,,,,』とリツは考えていた。
鷺島さん......どういうことなんですか!?き...急に口元に小籠包......もしかして
□ □ □
金崎『女子の間では男子を焦らすのが常識なのよ!』
赤沢『ケント......そんなことも知らなかったのか?経過観察なんてしないほうが良かったな』
という僕の知らない常識なのか!?......いや、それとも............
□ □ □
ウッドストン『鷺島、颯田の口元に食べ物を持っていくのが常識なんだ、やってみなさい」
鷺島「わかった」
鷺島さんに存在しない理を吹き込んだのか!?いくらなんでもそれは酷い!
□ □ □
要らぬ邪推はいらないな、鷺島さんに従おう。
ケントは口を開き、小籠包を食す。生地が破くとそこには激熱のスープが!
颯田「あっつ!?」
鷺島「颯田くん大丈夫!?」
やっぱり、私はやっちゃいけないことをしてしまったんだ......
ケントはどうにかそれを飲み込んだ後、れんげと箸を持って小籠包を掬う。
颯田「鷺島さん、小籠包はこうやって食べるんだよ」
ケントはれんげに乗せた小籠包の皮を箸で裂いて中のスープを開放する。そして調味料を軽くかけて、リツの口元に運ぶ。
颯田「一口で食べると火傷するから気を付けて」
リツはそのれんげに乗せられた小籠包から溢れたスープを軽く飲み、それから本体を頬張った。
美味しい......熱くないし、暖かい。なんだろう、心も暖まっているような......
リツとケントの二人は美味しく互いの注文したのも食べあって存分に中華を食したのであった。
午後10時手前、間もなく閉店する頃、ケントとリツは作戦の準備をしていた。
鷺島「......ていう感じね」
突入方法など念入りに確認してここから実行に移す。
ケントの心臓は初めてのことに強く音をたてる。
シャッターを突き破りながら突入し、銃を突きつける、それだけでいいんだ。僕でもできる。
鷺島「5秒数えるからそしたら作戦開始ね」
5......4......3......2......1......
ケントは正面のシャッターに走り出す。
このままシャッターを突き破れる......はずだった。
シャッターが開いて......くっ!?
シャッターが少し開き、その隙間からロープが飛び出てケントの方へと向かっていく。
「危ない!」と時間差で突入する予定だったリツが声をあげようとそれは届かなかった......
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