窓辺
雨宮吾子
窓辺
内と外とを区切る窓辺に立つ。見えてくるものは、庭内を区分けするための垣根の陰で接吻をする男女と、眠りこけている番犬ばかり。祖父を狙う闖入者の影が見えたような気がしたが、月に問うてみてもその姿が照らされることはない。
バルコニーに出る。私を甘やかす祖父の言葉には、幾万もの人々が銃を取って海を越えていくだけの霊力が宿っているらしい。祖父の若い頃に瓜二つだと評される私には、庭の植栽が月影の騎士たちのように思えてくる。
やがて祖父の部屋で起こった椿事が漏れ伝わってくる。ここにいては危ないからと促されながら邸を後にする車中の、鉛の空気。あはは、と笑う私を憐れむ女中の瞳には、未来の簒奪者が映っていた。
窓辺 雨宮吾子 @Ako-Amamiya
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