第6話 残り時間
異世界に来てから一日目。俺は自分の首の中にある自爆機能に悩んでいた。取り外し不可で残り時間はたったの一週間。まさしく絶望の淵に立っていた。それでも俺は気にしてなかった。死を怖くないから?それとも諦めてるからか?いやどれも違う。本当は死ぬのは怖いし諦めたくもない。ではどうして気にしてないのか。それは分かっていたことだからだ。
「なぁ、相棒。明日はこの世界についての収集とお前の修理でもするよ」
「それよりも、その爆弾をどうにかしましょう」
「やんなくていいよ、俺ら軍人は祖国を見捨てたら死ぬ以外方法はないさ」
「でも、今のパイロットはアウトローでは?」
「あれか、ただかっこいいと思ったから言っただけ」
その時、部屋の扉で物音がした。
「誰だ?」
俺は片手に銃を持ち扉を開けたが誰もいなかった。
「気のせいか?」
俺はベッドに潜り込み、岩のように寝た。朝起きるとアリスが俺の毛布の中にいた。なんか、重いし柔らかいものが当たってるのが分かった。
「……」
「なにしてんだ……?」
しがみついていてなかなか離れてくれなかった。仕方がないから起こすことにした。
「おい、起きろ」
「……」
「はぁ……朝からこれかよ」
俺はデバイスで朝の起床ラッパを鳴らした。部屋全体に響き、流石に起きたようだ。
「何事?!」
「やっと起きたか」
なんか混乱してるようだが起きれたならよしとしよう。
「なんで、俺の部屋にいんだ?」
「えっ……えっと……起こそうと思って」
「……」
なにか怪しいと思ったけどなにも言わないことにした。
「まぁ、いいから退いてくんない?」
「あっ……ごめん」
俺の上からアリスは降りてくれた。流石に、ずっとしがみつかれても困るものだ。あと、いろいろと退かすのがやりづらかった。
「今度からはしがみつくなよ?」
「分かりました。あと、下で朝食ができてます」
「そうか、なら先に行っててくれ」
俺は自分の身支度をすませて、一階に向かった。下はレストランになっていて、人間以外の種族がいた。
「なんだこれ」
「デルター、こっちこっち」
アリスが誘導してくれたおかげで朝食にありつけることができる。と言いたいが、料理は未知な物で食えるのか分からなかった。
「あぁ……」
「どうしたの?」
「いや、見たことない料理があるからさ……」
「あぁ、そういうことね」
見た目は普通のトマトスープに近い物だが、中身が分からなかった。
「大丈夫だよ、全て採れたてだから美味しいよ」
「ならいいんだけど」
一口食べてみたが……なかなか美味しかった。いや、美味しいということを忘れていて思い出したのかもしれない。
「どうしたの固まって?」
「なんでもない」
俺は朝食を食べ終えて相棒の元に向かった。相棒はあの後、大木の近くで待ってると教えてくれた。
「パイロット、アリス様、おはようございます」
「おはよう、NC八」
「どうも……」
「アリス、こいつは俺の相棒のNC八だ」
「パイロット、早速女をひっかけたのですか?」
「スクラップにしてやろうか?」
そんな雑談を楽しんでから書庫に向かった。まずは、この世界の地形や地名についての本を読みあさった。そして、種族の本についても。エルフ、獣人、鳥人、海人、亜人などなどと種類は幅広かった。中でも気になったのがあった。
「魔族ね……」
魔族、それは魔法を極めた種族で人間に近いが人間ではないようだ。
「なぁ、アリス。魔族ってのはどんな奴らなんだ?」
「魔族……。彼らは、恐ろしい存在だよ。種族の中で最も恐れられているものだよ。最近は、人間と敵対してるとか聞いた」
「あぁ、その情報は多分デマだから、信用するなよ」
「えっ?そうなの!?」
俺が王様の話を聞いてる最中にデバイスを使って相手が嘘をついてるか調べていた。案の定、全て嘘っぱちだった。
「たった、一つの情報に流されんなよ」
「えぇ……」
そんな、つまらない話をしていたら山積みになっていた本を読み終えていたようだ。
「次は、相棒の修理か。また後でな」
俺は書庫を後にし相棒の元に向かって中からリペアキットを取り出した。
「さぁ、頭部をこっちに下ろせ」
「了解」
まずは、問題のあるモニターの修理をした。モニターはコックピットから周りを見渡すために必要な部分でもあるから損傷すると見づらくなる。
「よし、次は動作テストをしろ」
「動作テスト中……動作テスト中……。他に問題は見つかりませんでした」
「よし、終わり。でも、こいつは簡易的に直しただけだから、どっかで本格的に修理をしないと……」
「パイロット、修理している間に我々の部品がないか探した所、各所で見つかっております」
「そいつは……まずいな」
この世界で悪用されてしまってはせっかく手に入れた平穏がなくなると考えていた。
「一番近い所は?」
「ここから森を出て西に二十キロ」
「今すぐ、行くぞ」
里の出入り口まで来たら、アリスが立っていた。
「なにしてんだ?」
「私も連れてってもらえませんか?」
「は?」
急に意味分からんこと言ってしまい止まってしまったが、ここでアリスを連れていけば最短で森を出られるのではないかと考えた。
「分かった。早く乗れ」
「ありがとうございます」
俺はアリスを乗せて森を出ることに集中した。
「でも、なんで来たんだよ」
「さっき、貴方たちが西に行く話をしていた時にそこら辺で異常な魔力を検知したんです」
「それはまた……」
「魔族かもしれません」
魔族……。俺はついにご対面できるのかと思っていた。相棒はもっと興奮していたがな。こうして、俺たちは森を出て西に向かって行った。目的地に着いたがまだ誰もおらず、デカいポッドだけがあった。
「まだ、見つかってないな」
「う〜ん……確かに反応があったのに」
「今のうちに回収しましょう」
ポッドを開けてみると、NCの換装用装備が入っていた。
「おいおい、なんでこんなのがあるんだよ」
「妙ですね」
「デルタ!なにか来るよ!」
「おい、今度はなんだよ」
向こうから一人の人間らしき人物がこっちに向かって来てる。それも飛んでな。
「まさか、あれって……」
「魔族だ!」
「パイロット、ポッドを持ってそこから離れてください!」
俺はポッドを背負いそこから退散した。流石に、今の状態では勝ち目はなかった。
「スモークを使う、グレネードの中身を変えろ」
「了解」
俺は腰に付いてるグレネードを取り、ダイヤルを変えスモークに変更した。そして地面に投げた。
「今のうちに隠れるぞ」
「逃げないんですか?!」
「燃料が少ないんだ!今更、逃げられない!」
どうにか木々の後ろに隠れてやり過ごそうとした。
「なにか言ってる……」
「集音機能作動」
俺たちはひっそりと話を聞き始めた。
「魔王様、例の場所に着きましたがなにもありませんでした。はい、分かっております。人間共の侵略は必ず食い止めてみせます。それでは……」
そう言って、どっかに飛んで行ってしまった。
「見つからなくてよかった」
「パイロット、残りの燃料が少ないです」
「それって……大丈夫なの?」
「いや、かなりマズイ」
俺はそう言って、急いで里に着いた。
「パイロット、燃料の交換を……」
「ポッドの中に燃料があったはず」
そうして緑の液体が入ったカプセルを6個取り出し、コックピットの後ろにあるハッチに入れた。
「どうだ、いけるだろ?」
「助かりました」
「残り10%は危なかったわ」
俺はその後アリスを長老のところまで連れて行った。魔族が近くに現れたこと……人間が侵略をしてることを……。
「そんなことが……」
「今すぐにでも逃げたほうがいいと思いますよ」
「長老、どうされますか?」
「ふむ……」
「なぁ婆さん……助けてやろうか?」
「いいのか……? お主も人間だろ?」
「あんな権力の言いなりになった犬共と一緒にすんな」
「すごい言うね……」
「ムカつく奴が2名いるからな」
俺はあのゲーム感覚でいる勇者と聖女に心底ムカついていた。奴らは本当の戦いを知らないただの馬鹿共だ。
「ただし取引だ」
「取引?」
「金か情報を提供するのどっちかさ」
「……」
「後払いか前払いで」
「人間ごときが調子に乗るなよ!」
「ふざけたことを言うな!」
長老の親衛隊みたいな奴らは俺に批判的だった。
「いや……情報を提供しよう」
「分かってるじゃねぇか婆さん。相棒、ポッドの中に入ってた装備を準備しろ最短で終わらせるぞ」
「了解です。パイロット」
「じゃあ婆さん。戦える奴を集めといてくれや」
俺はそう言って相棒の戦闘準備をしに行くのだった。
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