第5話 森の狩人

俺たちは来た道を戻って森に入った。だが、森の中は霧が濃くなにも見えなかった。

「コンパス機能も役に立ってはくれないな」

「ここはナイトビジョンか熱源探知機能を使いますか?」

「どれも霧のせいで障害がでて使えない」

俺はため息をつきながら相棒と歩いていた。歩いているとなにか当たる音がした。

「なんか当たったか?」

「はい、矢が当たりました」

「矢?」

地面には何個もの矢が落ちていた。相棒に当てたのだろうけど、NCのフルアーマーはそう簡単には貫けない。

「パイロット、そろそろこのボロボロのアーマー脱いでもいいですか?」

「アーマーの処理方法が分かったら脱がせてやるよ」

俺はこの世界で俺たちの異物が見つかり活用されてしまったら、良からぬことが起きるだろうと分かっていた。

「ですが、パイロット。重量が重い分燃料の消費も激しいですよ」

「分かってる。お前の燃料も見つけないとだな」

相棒たちがnuclearと呼ばれているのは燃料も関係している。国々はNCが出来るまでは核兵器を持っていたがNCの活躍で大量の核廃棄物の処理に困っていた。でも、もし核廃棄物を燃料にしたらすさまじいエネルギーになるのではないかと考える者がいた。実際に凄いエネルギーになり核廃棄物は無くなった。戦争が無ければもっと綺麗になってたと今でも思う。

「止まれそこのゴーレム!」

勇ましい声とともにフードを深く被った少数の集団が出てきた。俺は道に迷っていたのでその集団に道を聞こうと思った。

「なぁ、あんたらこの森を抜ける方法を知らないか?」

俺は相棒から降りて言った。

「なっ……中から人が……」

「なぁ、すまんがこの森から抜ける方法を知らないか?」

問いても誰も反応せず黙っていた。

「あの〜?」

「何故、人間が居るんだ……」

何を言ってんのか意味が分からなかった。

「はっ?あんたらも人間だろ」

「いえ……私たちはエルフです」

そう言いながらフードを外した。長い耳に白い髪と人間に近いようで違う種族だった。

「まじかよ」

「いいから、何で此処にいるのかハッキリ言えよ」

そう言って一人の女性エルフがズカズカと割って入った。

「あっ?なんでそんな喧嘩腰なん?」

流石に、初対面に対してこの態度なのは苛ついた。

「早く言えよ」

「ちっ……。俺は森に入って歩いてたらいつの間にか霧のある場所まで行って迷ってたんだよ」

俺は舌打ちをして不機嫌そうに話した。

「あのね、普通此処に人間がいることはないんだよ」

「知るかよ、現にそうなってんじゃねぇか」

こんな言い争いをしてるうちに遠くの方からデカい音が聞こえた。

「今度はなんだよ」

「まずい、奴がこっちに来る!」

そう言ってエルフは隠れてしまった。悪寒が俺の背筋を流れた。

「パイロット、搭乗してください!」

「分かった」

そう言って、俺は相棒に乗り込んだ。

「なにが来るんだよ」

「大きな猪が接近してます!」

「イノシシ?」

そう言うと本当に大きな猪が木を薙ぎ払って出てきた。

「まじかよ!」

「避けてください!」

「無理に決まってんだろ!」

俺は避けきれず猪に体当たりされてふっ飛ばされた。

「アーマー破損、モニターに損傷あり、危険危険……」

「うるせぇ、黙ってろ!」

俺はふっ飛ばされた影響で少し苛立っていた。

「このままでは相手のスピードには追いつけません」

「ちっ……仕方がない。アーマーを外せ」

「了解」

俺は全身に付いてるアーマーを外して相棒を身軽にした。

「NC八、フルアーマータイプからアサルトタイプに換装しました」

「なら、ここから離脱するぞ」

「助けないんですか?」

「あんな奴ら、どうなったって俺の知ったこっちゃない」

俺はその場を離れようとした。その時、小さい子供までが弓を使って戦っているのがモニターに映った。俺はその姿を見て小さい頃の自分を思い出してしまった。

「くそっ……どうしてこんなことをしなければいけないんだ。はぁ……ライフルの準備をしろ!」

俺は背中に担いでるライフルを取り射撃態勢に入った。

「手動で照準をする。風速と風向き、距離の測定をしとけ」

「了解」

出力を最大にし大きな猪に狙いを定めた。

「全て問題ありません」

「撃て!」

その時の一撃は鼓膜を破るほどの一撃だった。猪の体はライフルで貫かれて内臓や血が飛び出てた。

「これで、ライフルも使えないな」

「銃身が焼けてしまったので交換するまでは使えません」

「あと、なにが残ってんだ?」

「肩ミサイルとチェーンソード、左腕のガトリング、腰のグレネード、右腕のナイフです」

「厳しいな……」

元々、俺の機体は機動力を重視した機体であんまり武器を積めないようしていた。だが、そのせいで武器不足で困ってしまった。

「パイロット、さっきのエルフたちがこっちに来ます」

「なんだ、まだ用があるのか?」

俺は不満そうに言った。さっきまでの態度をされては機嫌は悪くなるものだ。

「その……さっきはすまなかった!」

「えっ……そうですか。それ以外用がないならもう行きますんで」

俺はそのまま森を抜けようとした。

「待ってくれ、その……お礼がしたいんだ」

エルフは何故かもじもじ顔を赤くして言った。

「えぇ……」

「パイロット、ここは素直に受け入れた方がいいですよ」

「……分かったよ」

俺は相棒に言われるがままにエルフたちに連れられて里に着いた。俺は相棒から降りて辺りを見回した。そこは、奥に大木が生えて周りには木製の家が建っていた。

「なかなか、綺麗な場所だな」

「この里を汚すものは入れないようにされてるんだ」

集団の中にいた一人のエルフに言われた。

「まさか、あの霧?」

「そう……なんだけど何故か君たちは引っかからなかったね」

「俺の心は紳士そのものだからな」

「最低そのものではなくて?」

「相棒は黙ってろ」

さっきの女エルフはずっと後ろでゴニョゴニョ喋っていた。何言ってんのか全く聞こえんがな。俺たちはエルフに案内されて大木に着いた。

「デカくね?」

「何億年も生き続けてるんだから当たり前でしょ?」

「だとしてもこれはデカすぎるだろ」

相棒を置いて中に入って行くとそこには何人かの護衛と里の長老らしきエルフがいた。全員が俺の方を見た。

「なんで此処に人間がいるんだ……」

「人間が此処に居たら災いを招くのでは……」

などが聞こえてきた。エルフはどうも人間を嫌っているみたいだ。

「これはまた珍しいの」

長老らしいきエルフが俺に近づいた。

「婆さん長生きしてるな」

「うむ、かれこれ何千年も生きてるわい」

「元気な婆さんだな」

俺が婆さんと楽しそうに話していると周りのエルフは膝づいていた。

「なにしてんだ?」

「ばっ……お前も伏せろよ……」

女エルフは俺にも膝をつけと言ってきたが俺は嫌だった。

「なんで?」

「この方はこの里の長老なんだぞ……」

「へぇ〜」

長老と言われたが予想は当たっていたようだ。だからといって俺は膝をつきたくはない。

「それでなんで俺を連れてきたん?」

「……ただの挨拶だ」

「なんの?」

「っ……なんでもいいだろ!」

「静かにせんかアリス」

「もっ……申し訳ございません!」

「お前、アリスって言うのかよ」

俺は名前を聞くのを忘れていた。

「すまないな、お主の名はなんと?」

「あぁ、俺はアウトローのデルタ。外にいんのが俺の相棒NC八」

「そうかそうか、君のことは聞いてるよ。我が民の危ないところを助けてくれたんだってね」

「あぁ、別に気にしなくていいことさ」

「そうなのか、でもお礼ぐらいはしないとだな」

お礼なんて言われても思いつくのはこの世界の地図と知識が欲しいぐらいだった。

「なら、この里に書庫みたいなのはあるか?」

「あるにはあるが、そんなのんでいいのか?」

「十分さ。と言いたいが流石に明日見に行くよ。今日はもうヘトヘトさ」

「そうかそうか、なら旅での疲れを癒すために宿を一部屋提供しよう」

「ありがとうよ、婆さん」

「いえいえ」

俺は、一日でいろんなことがあり過ぎて疲れてしまった。俺たちはアリスに案内されて宿に向かった。周りを見渡しても全員楽しそうに生活していた。

「此処が貴方の部屋よ」

「どうも」

遂に、一人での休憩時間ができた。

「相棒、聞こえてるか?」

「もちろんです、パイロット」

俺は耳に付けたデバイスで相棒と連絡を取り合えるようにした。

「今日はいろんなことがあったな」

「そうですね、私は異世界に来れて興奮が収まりません」

「暴れる前に抑えろよ」

「難しいです」

そんなふざけた話をしていたが相棒は真剣な声で話始めた。

「パイロットも気づいてますか?」

「とっくにな。俺の自爆機能のことだろ」

「そうです……」

俺たち、軍人は敵に捕まったり逃亡をしてしまった者は自爆するように首に付けられてる。これは、もし敵に寝返ったらすぐに排除できるようにという名目で付けられた。NCはプログラムで登録された物しか乗れないがパイロットは違う、だから自爆機能を付けられてるのだ。

「仕方がないことさ、俺は敵前逃亡しちまったんだからな。」

「でも、死にたくはないですよね?」

「誰も死にたくてこんなの付ける訳ないだろ」

「じゃあ、外そうとはしないんですか?」

「勝手に外しても爆発するだけさ」

「でも、なにか方法があるはずでは?」

「なにそんな必死になってんだ?」

いつもの相棒とは違っていた心配そうに話していた。その内容は俺の残り時間のことだった。

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