第7話 新たな勇者
「相棒。新しい装備の状態はどうだ?」
「パイロット。この装備を使うことはあまり推奨できません」
「なんでだ?」
「見てもらえば分かると思います」
そう言って相棒は俺にポッドの中身を見せてくれた。中にはショットガン、2丁のサブマシンガン、複数のジェットが付いた薄い装甲……。
「これ……コンバットタイプじゃん」
コンバットタイプ……。"NC"専用近接戦特化型装備だ。装甲を薄くすることで動くスピードを極限まで高めて重量を軽くししてあるのだ。そのかわりに装甲が薄いから敵から攻撃を受けるとすぐに壊れてしまうという自爆装備だった。
「まずいな……」
「他の方法を推奨するか諦めるかの2択です」
「じゃあ他の方法で」
「決闘をするのです」
「は?」
「敵の大将と決闘をし勝った方は退くのです」
「そんな約束守るのか?」
「敵の大将を討ち取れば敵の戦意は失くなります」
「ホントかよ……」
半信半疑のまま俺は今回の作戦について話た。まず敵の大将と俺が交渉し決闘をする、エルフたちは敵が不正を行わないか監視をして見守る。
「こんな感じでいいか?」
「本当に言ってるのか?!」
「死ぬだけだぞ!」
「これしかないし今の俺の装備だとこれが限界だ」
「同意するしかないようだな」
「長老!?」
「賛成してくれて助かる」
「お主とは取引したからな勝ってもらわないと困るからの」
「負けはしないさ……絶対に」
一応、作戦に対して全員賛成はしてくれた。あとはどこまでできるかだ……。
「パイロット悩んでるそうですね」
「あれにかけてみようかなってね……」
「システムですか……」
俺が生まれる前、軍曹が若かった頃の時代では戦争を終わらせるためのシステムを少数の"NC"に取り付けた。最初は愛国心を込めて"PATRIOTシステム"と呼ばれた。だがシステムを発動したその戦い方は強力過ぎてパイロットの負担がデカく、とても人が扱えるものではなかった。そして"PATRIOTシステム"は試作段階のまま終わってしまった。システムにも種類がありその中でも強力なシステムを俺の相棒には装備されていた。システムの名前は何年も前に軍曹が気に入らなかったのか変えてしまい、今では"OMEGAシステム"と呼ばれてる。
「人の名前をシステム名にするのはどうかと思うわ」
「偶然ですよ」
「ホントかよ……」
「それよりもOMEGAシステムは使いますか?」
「どうだろう……。プロトタイプだし専用の冷却システムと排熱用の部品がないから長いことは使えないと思う」
"OMEGAシステム"は強い……でも排熱や冷却しなで使い続けると機体の中は80℃を超える暑さになりコンピューターが壊れてしまう。一応、制限をかけて顔に付いてるバイザーとマスクを外して排熱をすれば扱うことができる。
「タイミリットは1分だけです」
「それまでに終わらせる」
「流石ですねパイロット。決闘をするために手紙は送っておきました。あとはどんな人間が相手をするかでね」
「ちゃんとした猛者だったら厄介だな」
「そう言っても殺すんでしょ?」
「任務は必ず遂行するのが俺のモットーだからな」
「それではこちらの方でシステムの調整を行います」
「頼んだぞ」
俺は装備の最終点検に向かった。夜になって明るい里を見渡せる丘の上にいた。
「静かだな……」
涼しいそよ風に当たりながら久しぶりに感じたその静けさは俺の心と精神を安らかにしてくれた。戦争続きで心を落ち着かせるタイミングなどはなく、いつも脳を回転して体を動かしていた。
「いいものだな……」
「まだ起きてるの?」
アリスがこちらに近づいてきた。
「装備の最終点検さ」
「早く寝て明日に備えたほうが良いと思うけど」
「分かってる。でもこっちが終わらないと寝ることは無理」
「なら手伝うよ」
「だったらそっちの方でジェットが動くか見といてくれ」
俺は装備のテストプレイに入りアリスに見てもらうことにした。
「大丈夫だよ」
「じゃあ点検は終わりだ。手伝ってくれてありがとうな」
「見てただけだけどね」
点検の片付けをしている俺とアリスの間で気まずい雰囲気が流れ出していた。
「そっ……そういえばオメガはどんなところにいたの?」
「騒がしいところさ。毎日悲鳴と叫び声に血や泥が飛んでいた賑やかっだった」
「とても良いところとは言えないね……」
「そんな良いところじゃなくても戻らなければいけないんだよ」
「どうして?」
「祖国を守るのが俺の任務だからな」
今の俺は祖国を見捨ててしまった身。一刻も早くアメリカに戻って戦闘に参加して守らないといけない。
「辛い思いをしても守る意味はあるの?」
「さぁね」
意味がないかもしれない……。それでも俺は祖国を"守る"ためだけに生まれた兵士だ。戦争が終われば用済みとして処分されるかもしれないだろう。
「少し喋りすぎたようだ……。俺はもう寝るからお前も帰れ」
「ねぇ……」
「なんだ?」
「ここに住もうとは思わないよね……?」
「残念だけもそれはないない。俺は祖国に戻らなければいけない身だ。長いは無用」
「そっか……」
"アリス"は少し悲しい目をして走って里に戻って行った。
「明日はどうなることやら」
俺はため息をつきながら里に向かうのだった。翌朝、俺は作戦通り森を抜けて約束の地にやってきた。既に数え切れない程の兵隊が並んでおりその数は万を超えてるだろう。その中からいかにも隊長らしき人物が前に出てきた。
「森に住む呪われたエルフ共よ! 我が王の命令により貴様らを聖なる剣で浄化してくれよう!」
「おっさん。さっきからそんなに大きな声出すなよ」
「貴様! 何者だ?!」
「お前らに決闘を申し込んだ者」
「あのふざけた手紙のことか?」
「そうそう」
「馬鹿なこと言うな。邪魔だからどいてろ」
「逃げるのか?」
「なんだと?」
「気高い騎士様は決闘を申し込まれたのにそれを無視して逃げるとはなんて卑劣なんでしょうか」
「貴様……さっきから言わしておけば……」
俺は騎士どもを煽らせて決闘をする流れにするつもりだったがその時一人の男が出てきた。
「騎士団長。そいつは僕がやります」
「おぉ……勇者様!」
「勇者?」
俺はまさかと思い見てみるとあの時の勇者ではなかった。
「流石に違うか」
「おいゴミ」
「あっ?」
「今からこの僕が貴様と決闘をしてあげるんだから名乗れよ」
「……俺の名はオメガ」
「僕の名は……」
「ごめんだけど君みたいな粗大ゴミの名前は興味ないから早く殺りましょう」
「……後悔するなよ……」
そして俺は敵の勇者と決闘をすることになった周りは兵隊どもで囲まれており逃げるすべはなかった。そして俺は勇者と向かい合った。
「おいゴミ。武器すらないのかよ」
「あるよ。今呼ぶから」
「呼ぶ? 何言ってんだこいつは?」
俺が相棒に合図を出すと森から相棒が出てきた。
「おいなんだよこれ!? 反則じゃないか?!」
「手紙には"なんでもあり"って書いたから別にいいだろ。もしかして勇者様は怖じ気ついちゃった?」
「てめぇ……殺してやるよ」
「パイロット。いつでも搭乗してください」
俺は相棒に乗り決闘の始まりの合図を待った。
「両者ともに正々堂々も戦ってください……。始め!」
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