第3話 異世界
外に出たら甲冑を着た男に話しかけられた。でも、言語の違いがあるのか、なにも伝わらなかった。
「パイロット、デバイスの翻訳機能はどうですか?」
「いや、あれは導入されてる言語を翻訳してるだけだから意味ないと思うけど」
「やってみる価値はありますよ」
どうだか、半信半疑で俺はデバイスをヘルメットにつけて翻訳機能を使った。翻訳には数分かかったが最も近かったのは日本語だった。
「日本語か……」
日本……その言葉を口にするといつも恐怖で震える。俺のいた地球での日本は死を恐れないゾンビ軍団だった。周りは敵で包囲されているのに爆弾を体に巻き付けて突撃してきた。その行為は、恐怖を知らない者どもだった。
「助けていただきありがとうございます」
どうやら翻訳が機能してるようだ。
「いえ、通りすがっただけなので」
一応、相棒の言う通りに喋っているがなんか俺には向かない話し方だ。
「それにしても凄いですね。こんなにも大きいゴーレムを従えてるなんて」
「お前のことゴーレムだってよ……」
「誰が土人形ですか!」
「どうして盗賊に追われていたのですか?」
一番の謎はここだった。理由もなしに追われる訳はないし、ましては盗賊どもの仲間だったら厄介だ。
「馬車で移動してる最中に倒れてる人がいたので助けようとしたら盗賊だったのです」
「そうだったのですか」
怪しいけど、まぁよしとしよう。
「もう出てもいいですか?」
馬車の中から女の声が聞こえた。
「姫様、もう少しお待ちを……」
「姫様?」
俺はとんでもなくめんどい人に出会ってしまったのではないかと思ってしまった。そして馬車からその姫様が出てきた。まだ成人にもなってなかった。
「先ほどは盗賊からの襲撃を守っていただきありがとうございました」
「はぁ……」
「私の名前はエメラルド王国の王女ロザミー・エメラルドです。こちらの騎士はジュラルドです」
なんで宝石が名前なんだよって言いたかった。
「俺の名はデルタ、こっちの相棒はNC八」
「どうも、お姫様」
「珍しい服装ですけど、どちらからいらしたのですか?」
ここで下手にアメリカなどと言って通じるかは分からなかった。
「遠いところから」
「そうなのですか。それは大変だったのでは?」
「全然です」
めんどくさいと思いながら話し合っていた。
「それでは、私はこれで……」
「姫様、それが馬車の車輪が壊れてしまいまして……」
「パイロット、こんなときは……」
相棒は俺が運びますよっと言えと言ってきた。ただでさえ、お腹は空いてるし喉は渇いてるので今すぐレーションと水を飲み食いしたい。
「はぁ……。すいません、困ってるななら手伝いますよ」
「本当ですか?ありがとうございます」
「ほら、運ぶぞNC八」
「了解です、パイロット」
俺はNC八を使って馬車を片手に持ちもう片方には姫様たちを乗せた。
「ほんじゃあ、出発〜」
俺はNC八の中でレーション食っていた。着くまでには結構時間がかかるのだ。
「缶詰、缶詰、チューブ、また缶詰、粉ジュース、キャンデイとこんなもんか」
俺は一つ目の缶詰から開けた。中身はクラッカーだった。
「期待はしてなかったけど、これかよ」
クラッカーは長期保存もでき、腐りにくいので長年使われているがものすごく水分がもってかれるため、俺の苦手な食べ物だ。
「軍曹は唾も一緒に作って食えって言ってたけど無理だろ」
「軍曹は人間とは思えないですよね」
「全くもって同感だ」
軍曹は俺が十歳の時に出会った。その時はまだ曹長だった。そして俺が軍曹の隊に入ったときは死ぬかと思った。まず、常人とは思えない訓練をやらされる。例えで言うと二十秒以内には敵の小基地を制圧しろと言ってるようなもんだった。
「あの人もこっちにいるのかな……」
「流石に難しいでしょう、あの人は基地の制圧に行っていたので向こうで無事だと思います」
「お前は寂しくないのか?」
相棒は元々、軍曹の機体だった。昔は軍の予算もほぼなく、NCを作るのも費用がかかるため全員自力で直していた。俺も新しいのを貰えず、帰ろうとしてたら軍曹が相談に乗ってくれて、仕方がないから俺のをやると言ってきた。相棒と軍曹は昔からの戦友であり家族みたいなもんだった。それ以降、俺は最新式が出ても相棒をずっと既存のパーツを使って直して戦い続けてた。
「まぁ、軍曹はすごい方でしたよ。できないことを成し遂げていましたから」
「例えば?」
「攻略不可と呼ばれていたロシアの要塞を攻略したり、世界最強と謳われていた日本の海軍を沈めたりとかしてました」
「やっぱ化け物だな」
「そうですね」
俺は次にチューブを開けた。
「これ、林檎をペースト状にしたやつだ。林檎かぁ……」
「なにか、心残りでも」
「ちょっとね」
俺の戦友のシグマは林檎農家になって林檎農場を作るのが夢って言っていたのを思い出した。
「林檎農場ですか……難しい話ではなかったのですか?」
「いや、それでもあいつは諦めず計画や費用も計算して必死に考えてたよ」
いつか、あいつの林檎を食べてみたいそう思っていたが今ではその願いも叶うことはできなかった。
「どうして、林檎農家が夢なんですか?」
「初めて食べた果物で印象的だったって言ってた」
「デルタさん、そろそろエメラルド王国に着きます」
見た感じ、それはとても広く、中には城までもあり一つの要塞に見えた。俺は王国の門の前で止まりロザミーたちを降ろした。
「これって入れてもらえるのですかね?」
「さぁな」
一時間ぐらいかかってようやく入れる許可を貰った。「よし、入るか」
門が開いた瞬間、そこは活気のある国だと瞬時に分かった。
「なかなか、賑やかですね」
「そうだな」
「デルタさん、このまま城まで向かってください」
俺はロザミーの言われた通りにした。人々は俺たちを驚いた目で観ていた。そして、城に着いたと思ったら今度は相棒は入れないので降りろものことだった。
「確か、ハンドガンがあったよな」
「もしものためですか」
「まだ信用した訳ではないからな」
俺は相棒を降りて、ロザミーたちと城の中に入った。王の間まで辿り着いた俺はこの国の王とご対面した。隣にはロザミーが立っており、ジュラルドも立っていた。
「我は、このエメラルド王国の王であるアルバート・エメラルドだ」
「俺はデルタだ」
俺は膝をついて挨拶をした。これが、俺にとって最もめんどくさいものだった。
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