第2話 変わる日常
「ウッソだろ……」
そこは俺の知っているものは一つもなかった。空を見上げれば炎を吹く空飛ぶトカゲ、遠くには中世のヨーロッパの町、周りには見たこともない動物たち……。なにもかもが不思議で満ち溢れていた。
「パイロット、ここは地球とは違うようです」
「だろうな、どう見てもそう言える」
俺は、科学者が見つけたマルチバースがあるということを実感した。
「はぁ……俺ってついてないな」
「そうですか?」
「せっかく、ボーナスが手に入るところだったのに逃しちまったよ」
「でも、ここは比較的平和でボーナスよりも良いと思いますけど」
「それもそうなんだけど……まぁいいや、サバイバルキットを取り出すか」
軍曹から、もしものためにと渡されたサバイバルキット……まさかこんなところで役に立つとは。中には、ナイフとハンドガンに弾薬、レーション、水と豊富だった。そして万能デバイス、これは装着型のデバイスで自分の位置情報や敵の場所、娯楽など様々な用途で使われる物。これ一つあれば一年は遊べるほどの品物だ。
「要らないって言ったのに……」
「パイロット、なにかが近づいてます」
俺はまた相棒に乗った。
「なんだ一体……」
「どうやら、馬車と後ろに盗賊らしき者どもが見えます」
追われてこっちまで来たのか厄介なものだった。
「無視して逃げるぞ」
「助けないんですか?」
「厄介ごとは嫌なんでね」
「でも、助けたらなにか褒美とかくれたりするんじゃない?」
「分かった、ライフルの準備を」
背中に背負ってある一丁のライフルを取り出した。
「残弾数は少ないので注意を、あと自動照準が壊れてるので手動でお願いします」
俺はコックピットの上にぶら下がってる照準器を使った。
「……」
手に汗を握った。間違って馬車を撃ってはしまうのかと思ってしまったのだ。
「風速、距離に問題ありません。いけます!」
そして撃った。静かな森で一つの大きな音が響いた、それは雷鳴のごとくだった。
「成功です」
「やっぱり、自分で狙うのは嫌だな」
「パイロット、まだ後ろにいますよ」
「知ってるけど撃ったら冷却しなきゃいけないんだよ」
ライフルは一発一発が強いがその都度冷却しなければ一瞬で銃身を持ってかれる。
「このまま、あいつらに突っ込むぞ」
「はい」
俺は相棒を動かし馬車の方に向かった。馬車は車輪が外れて止まり中からは人が出てきて剣を構えてた。その時、俺はそいつらをまたいで盗賊どもの前に立ちはだかった。
「あ〜……そこの金が欲しいって考えてる君たちに警告だ、今すぐ此処から立ち去れ」
俺は拡声器を使って喋ったが反応はなかった。言語が分からなかったからだ。
「立ち去らないようだな」
「ならばやりましょう」
なぜかこいつはウッキウキだった。
「なんでそんなに楽しそうなんだ?」
「実は私、こういう異世界に憧れてたんです」
そういえば最近、いろんな情報を入手してたな。異世界というものに関しては熱心に喋ってたのを思い出した。
「異世界で初悪党退治といきましょう」
「はいはい」
俺は相棒の脚を動かし盗賊の一人を踏み潰した。赤く光る水がじわじわと広がっていったのが見えた。盗賊の一人が杖をこちらに向けてなにかを喋っていた。
「なに言ってんだあいつ」
「あれは……まさか魔法!」
「魔法?なんだそれは」
「魔法ってのは異世界ではあるあるのものでして……」
長くなりそうだから俺は、ミュートにして話を聞き流した。
「って話聞いてます?」
「あ〜大丈夫大丈夫」
「もう……高エネルギー反応あり」
どうやら魔法というものの準備が終わったようだ。此処で避けてしまえば後ろの人たちに当たってしまう。そう考えた俺は魔法を受け止めることにした。
「アーマーを盾にしろ、どうせ使わなくなる」
「了解です」
火の玉が直撃したがなんともなかった。
「弱いな、これがお前の期待してたものか?」
「えっと……」
予想外れにも程がある。あんなにも熱心に語っていたのに。流石に盗賊どもは逃げ出し、戻って来ることはなかった。
「任務完了、戻るぞ」
「パイロット、馬車に乗ってた人たちが怯えてますよ」
それもそうだ、こんなものがいきなり出てくるんだから無理もない。
「敵ではないことを証明したらどうですか?」
「めんどくさいけどやるか」
俺はハッチを開けて外に出た。
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