エピローグ2 再起動した物語
楽器を片付け終えた奏太と結月は、音楽室を出て校舎の屋上へと向かった。文化祭の賑わいが聞こえる中、二人だけの静かな時間を過ごしたかったのだ。
屋上からは校庭が一望でき、露店や出し物で賑わう様子が見える。秋の風が心地よく頬を撫でる。
「もうすぐ進路を決めなきゃね」結月がふと言った。
「ああ」奏太も頷いた。
「私、音楽大学を受けようと思う。ピアニストになりたい」
「前世からの夢だね」奏太は微笑んだ。
「うん。でも今度は、自分の意志で選んだ道」
「俺は……音楽制作の方面に進みたいと思ってる。作曲とか、音楽プロデュースとか」
「素敵」結月の目が輝いた。「将来、私の演奏の曲、作ってくれる?」
「もちろん。いくらでも」
二人は並んで手すりに寄りかかり、文化祭の喧騒を見下ろしていた。
「あのね」結月が静かに切り出した。「最近思うんだけど、私たちが出会ったのは、やっぱり『未完の想い』のおかげだと思う」
「そうだな」
「でも、これからも一緒にいるのは、もう『未完の想い』のせいじゃない」結月はまっすぐに奏太の目を見た。「今の私たちの選択だよね」
その言葉に、奏太は心から同意した。彼らは前世の記憶に導かれて再会したかもしれないが、今の関係は完全に自分たちの意志で築いたものだ。
「前より、今の方が好きだよ」結月はふと呟いた。
「俺も」奏太は彼女の手を取った。「今の君が、前よりずっと好きだ」
結月は嬉しそうに微笑み、奏太の肩に頭を寄せた。二人は静かに文化祭の様子を眺めながら、これからの日々について語り合った。進学のこと、音楽のこと、そして2人の未来のこと。
夕暮れ時、文化祭も終盤に差し掛かり、奏太と結月はクラスの出し物の片付けを終えていた。
「今日も送るよ」奏太が自然に言った。
「ありがとう」結月は彼の腕にそっと手を回した。
学校の門を出ると、紅葉が始まった並木道が夕陽に照らされて美しい。
「あのね」結月が歩きながら言った。「大学、同じところを受けるのはどう思う?」
「え? でも、お前はピアニスト志望で、俺は音楽制作だよね?」
「うん、でも総合音楽大学なら両方の学科があるところがあるの。もちろん、それぞれの夢を追うのが一番大事だけど……できれば、同じ場所で頑張りたいなって」
その言葉に、奏太は心が温かくなるのを感じた。
「それは……嬉しいな」
「本当?」結月の目が輝いた。
「ああ。俺も、できるだけお前と一緒にいたいから」
未来は決して平坦な道ではないだろう。しかし彼らは、どんな道のりであっても共に歩んでいくことを選んだのだ。
結月の家に近づいたとき、彼女が静かに言った。
「前世では、私たちは別れを選んだ。あなたが私のためを思って、私の選択肢を奪ってしまった」
「ああ」奏太は少し苦い記憶を思い出した。
「でも今度は違う。今度は二人で選択していく。どんな困難があっても、一緒に向き合っていく」
「約束するよ」奏太は強く頷いた。「今度こそ、最後まで一緒に」
結月の家の前で、二人は短い別れの挨拶を交わした。明日もまた会えるという安心感と、これからも長く一緒にいられるという確信があった。
「また明日」結月は微笑んだ。
「ああ、明日も、その先もずっと」奏太は答えた。
結月が家の中に入っていくのを見送った後、奏太は静かに夜空を見上げた。星々が瞬き始めた空の下で、彼は心から感謝の気持ちを抱いていた。前世からの「未完の想い」が彼らを再び引き合わせ、そして今、その絆は新たな形で続いている。
『エターナル・モメント』から『リスタート』、そして『プロミス』へ。彼らの音楽も、関係も、物語も、確かな進化を遂げていた。
奏太は帰り道、小さく口ずさんだ。彼らの新曲『プロミス』のメロディを。それは過去ではなく、未来に向かって開かれた歌だった。
前世で閉じた本を、今世で再び開き、そして新たな章を付け加えていく。彼らの物語は、確かに再起動していた。
―― 完 ――
元カノ転生~未練はないって、言ったはずだったのに~ ゆうきちひろ @chihero3
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