第9話 リリーの最高の笑顔

 腕試しが終わった。校長はちょっと早いが帰って良いと言われたので、馬車に向かっていた。


 そこで、レノアが来て、


 「あなたは一体何者なんですか?」


 と授業を抜け出して、ヒカルに質問した。


 「ただのボンボン貿易平民だよ。」


 まだ迎えの人間は来てないので、そう、レノアに伝えると自分で馬車の馬を使って、屋敷に帰った。


 早めに帰ったが、屋敷では、皆が掃除していた。帰りを伝えると慌てて、執事が


 「ヒカル様、帰って来られたのですね?もう学校の方は終わったのですか?」


 「ああ、もう終わったよ。とりあえず、部屋に行くね。」


 そして、部屋を開けると、リリーが掃除していた。リリーが気付いて、


 「申し訳ありません。ヒカル様。掃除をさせて頂きました。」


 「ありがとう。本当によく働くね。無理はしないでくれ。」


 リリーが突然泣いた。だから、


 「大丈夫?何かあった?」


 と訪ねると、


 「ヒカル様。すみません。ヒカル様があまりにも優しいので、自然と涙がこぼれました。」


 「そういえば、リリーは何故メイドを?」


 そう訪ねると?


 「私は今年で19歳です。ですが、18歳になり、ハート様にお使いするまでは、10歳から両親が死別し、別の貴族の屋敷のメイド兼慰め役を仰せつかっておりました。

 しかし、殴られ、罵られる日々がほとんどでした。そこで、ハート様が来て、私をこの屋敷で雇ってくれました。

 そこで、ヒカル様がやってきて、今までの御主人様とは違って、優しく扱ってもらって、つい嬉しくて、、、」


 リリーは顔を手で覆い、完全に号泣してしまった。


 「リリー、俺にできる事があったら、いつでも言ってね。」


 リリーは涙を自分のハンカチで拭って、


 「ヒカル様。私を今、抱いてもらえませんか?」


 突然の一言にビックリした。だけど、ここで拒否をしたら、誰がリリーに寄り添うんだ。と思い。


 「分かった。今日だけだよ。」


 リリーは、


 「ありがとうございます。だけど、この傷を見てもそれを言えますか?」


 そう言って服を脱ぐととても女性とは思えない、傷ばかりだった。


 「そうか。こんなにもか、、、」


 ヒカルはそれを見て、リリーがいかにひどい扱いを受けて、俺に頼んだ理由が分かるような気がした。


 そして、リリーをできるだけ、優しく抱いてあげた。リリーを心を癒す為に、、、救う為に、、、


 夕方になり、リリーとの行為も終え、リリーは仕事に戻る前に、


 「ヒカル様に甘えてしまって本当に申し訳ありません。私などの願いを聞いて、本当にありがとうございます。

 私は本当にここまで幸せな気持ちになったのは両親に誕生日を祝ってもらった時以来です。

 時間が経つに連れて、幸せが大きくなって来てます。だから、ひょっとしたら、それ以上かも知れません。

 では、失礼致します。」


 今まで、鉄仮面みたいに感情を出さない話し方が変わって、本当に笑顔になり、心からの笑顔になった話し方になって、ヒカルは安心した。


 それでリリーが出ていき、ドアが閉まって、、、


 「リリー、本当に良かった。今の君が本当の心を取り戻してくれたから、、、」


 ヒカルも頭の中でそういう経験をしている記憶はあるが、実際とはかけ離れていた。一緒に苦しみを分かち合うような体験だった。

 ヒカルはリリーがいかに今まで、寂しかったのか、伝わって来た気がした。


 「リリー、本当に今まで大変だったね。」


 ヒカルもリリーに対して、特別な親近感が湧いたのが分かった。


 そして、次の日から、全く同じ女性とは思えない、最高に可愛い笑顔の顔のしたリリーがそこにはいた。

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