Ep.05【05】「罠」
「よし、倉庫内のセキュリティーは大丈夫だ。
監視カメラにはダミー映像ぶち込んでるから、気にしなくて良いぞ。
ただ、通行人とか定時以外のセキュリティーが来るかもしれない、慎重にな」
エア・インカムからハヤテの通信が入る。
「いいか、入るのは倉庫Aだけだぞ。隣のBは監視ドロイドの保管区だ。
間違えても、絶対に入るなよ!」
ハヤテから更なる激が飛ぶ。
「了解!Aだけ!でも・・・・・Aだけって言われるとB行きたくなるけど・・・!
まぁいいや!Bね!」
セスティアが素なのかボケなのか解らない返答をする。
「・・・・・・・・・・ティア、今のは聞こえなかったことにするわ」
リオはまたしても頭痛を覚えた。
ノヴァ・トーキョー湾岸地区・・・周囲は港からの貨物と資材を保管する為
多くの倉庫が立ち並んでいた。
時間は午前2時。
時折、深夜便の無人大型トラックが走り去る以外、人の気配は無い。
遠くに光るネオンと、港に設置されたガントリークレーンの赤色灯が反射し
都会の喧騒は遠く、ただ時折低い霧笛が小さく鳴り響く。
そんな静かすぎる倉庫街をリオとセスティアは足早に目標へと向かっていた。
「目標の『タイタン・ロジテックス』のA棟に到着したわ。
セキュリティーの巡回時間は?」
リオが小声で手短に問う。
「午前1時に定時パトロールが来たはずだから、あと2時間は来ない。
だが、何が設置されているかは不明だ。
もし、ヤバくなったら、一目散に逃げろ、こっちから迎えにいく」
社屋から1ブロック離れた場所にファントムを停め
ハヤテはそこから指示を飛ばしていた。
「了解、その時は速攻で来てよ!」
「頼みましたよー!師匠ぉ!」
潜入する2人は路地裏で声を潜め応答する。
そこからは隣接するB棟の窓越しに150体の監視ドロイドが見えていた。
ドロイド達に光は無く、ただ静かに倉庫内で眠りについている。
時折、何かの光が反射し、ドロイドの赤いレンズが不気味に光る。
「う・・・・やっぱ・・・・Bはナシ・・・・・」
セスティアがその光景に身をすくめた。
「大丈夫よ、コイツらは保管されてるだけなんだから、襲ったりしないわよ」
リオが潜入する社屋を見ながら言う。
「さて・・・入ろうか・・・・」
リオが舌なめずりして外周フェンスをよじ登っていった。
その頃、事務所ではステラがNTPDの情報を監視しながら、皆の帰りを待っていた。
もし、NTPDに侵入者ありの報告があった場合、即座に連絡を飛ばす手筈なのだが
ステラとしては、無茶な事をして怪我でもしないか・・・そちらが心配の種だった。
「リオ姉様・・・ティア姉様・・・神様・・・・・どうか皆、無事に帰ってきてください・・・」
目を閉じ、彼女はそっと胸に手を重ね、無事を祈っていた。
「う・・・・・っ!引っかかる!!!」
セスティアが小さな窓枠に引っかかり、うめき声を上げた。
リオが何事か・・・とセスティアに振り返ると、彼女の豊満な双丘が
窓枠に引っかかり、身動きが取れなくなっていた。
「姐ぇさん、ごめん!ちょっと引っ張って!!!」
セスティアの願いを聞いたリオは何となく・・・ホントに何となくだが
理不尽な物を感じずにはいられなかった。
リオが力任せに引っ張り上げ、セスティアは社屋に転がりこんだ。
「ぶへぇ~~~~~~~~・・・もっと広いところから入ろうよぉ・・・・」
床に寝転んだセスティアが息を切らせながら不満を漏らす。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・ティアのおっぱいが悪いんじゃんか」
リオがボソッと小声で何かを呟いた。
「え?何?姐ぇさん何か言った?」とセスティア
「なぁあああああああんにもっ!!!行くよ!!もぉ!!!」
リオが何故かいきなり不機嫌な声になったのを、セスティアは不思議に感じるのだった。
窓に月明かりは無く、社屋は酷く暗く、非常灯だけが煌々と光っていた。
事前に社内の見取り図を覚えていた2人は迷う事無く、サーバールームへと到着。
ドアを慎重に開け、素早くサーバーへと移動する。
リオがサーバーのアクセスポートに端末を差し、セスティアはドアの向こうを警戒
すぐさま、端末がサーバー内の情報を読み込んでいった。
「アクセス開始した。どう?何か情報出てきた?」
リオがハヤテに通信を入れる。
「ちょっと待て・・・・よし、アクセスログのコピー終了。
そこに小さい長方形のメモリーが見えるだろ?そいつを抜け」
ハヤテの指示を聞き、リオがサーバーの下に刺さる小さなメモリーを引き抜いた。
メモリーの側面には“HoloPort NodeID: 73‑XY‑FPkkkg”の文字が刻まれている。
「メモリーを回収した。
でも・・・本当に良いの?これ持って帰ったらバレない?」
リオがメモリーを見ながら疑問を口にする。
「大丈夫だろ。
むしろ、コイツが無くなる事で、ハッカー共はこの会社を踏み台に出来なくなるんだ。
感謝されても良いくらいだぜ」
何となく、見えないハヤテが踏ん反り返ってる姿が目に浮かぶ。
「まぁ、良いわ。
んじゃ、とりあえず任務完了!脱出するわ」
リオがそう伝え、端末をサーバーから切り離した瞬間・・・
パチッ!という音と共に端末画面に警告ポップが立ち上がる。
「ん?なんか触った?」
リオが聞く。
「え?なーんにもないよ?」
セスティアが答える。
「おい、下手に触るな。・・・・・・いや、待て。なんかログにノイズが走ったぞ」
ハヤテが何かの異常を伝えてくる。
「「 え? 」」
リオとセスティアが同時に声を上げた。
その頃・・・・・・隣接するB棟のドロイド達から一斉に起動音が鳴り響き
人工関節のギアが擦れるノイズが漏れ出す。
次の瞬間・・・・・150体のドロイドのカメラアイに獰猛な赤い光が宿った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます