Ep.04【05】「いぬのおまわりさん?」
天気はうららか、バイクは低いモーター音を響かせながら
軽快に住宅街をすり抜けていく。
「な~んにも起きないねぁ・・・やっぱさぁ、フリーウェイにでも行って・・・・」
『だから何度も言ってるでしょ!これはパトロールなの!!
ツーリングやってるワケじゃないのよ?ホントに解ってるの?』
セスティアとしては、バイク=爽快にぶっ飛ばすという謎定理があるようで
サポートAIの言う事がいまいち承服できなかった。
「ちょっとくらい良いじゃんかーっ!」
『何度もいわせんな!アホ犬!!!』
「犬いうなーっ!!!」
そんな時、歩道の花壇にポツンと俯いて座る幼い女の子が見えた。
「ん?なんだろ??」
気になったセスティアがバイクを路肩に停車させ、小走りで女の子の元に
駆け寄っていき、静かに女の子の視線に合うよう腰を降ろす。
「こんにちは、お嬢ちゃん。どうしたの?こんな所で・・・お家の人は??」
セスティアが優しく声を掛けると、女の子はハッとした表情で顔を上げた。
「あのね・・・あのね・・・リカ・・・おうち・・・わかんなくなったの・・・
ワンちゃんとね・・・・遊んでたらね・・・・ママがね・・・・・・・」
涙をたっぷり溜めていた瞳から、ついには溢れ泣き出してしまった。
「ママー!!!!ママー!!!!リカおうちかえるー!!!!!!!!
リカのおうちかえるのーーーーーーーーーーーー!!!!!」
「あーーーー!リカちゃん!大丈夫!!だいじょーぶだよ!!!
おねぇちゃんに任せて!!!!すぐお家探してあげるから!ねっ!!!」
おろおろするセスティアにAIリオが声を掛ける。
『アンタまでテンパってどーすんのよ!
その子の首に掛かってる星型のヤツ、ちょっとコッチに持ってきて!」
そう言われ、セスティアがリカの首元を見ると
確かにメルヘンチックな星型のアクセサリーがぶら下がっていた。
「あ~~!リカちゃん、泣かないでーっ!
あ、そうだ!このお星さまって何?おねぇちゃんに教えてくれる?」
セスティアが優しく語りかけると、泣きじゃくっていたリカが鼻を啜りながら
「ぐすん・・・ぐず・・・ごれね、ママが・・・まいごになったら・・・グズ・・・
おまわりさんに・・・・グスっ・・・・・みせなざいって・・・・・ママ・・・・・
ママーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!おうちかえぅのーっ!!!」
一瞬会話が出来たと思っていたら、またもや大声で泣き始めた。
「あーっ!あーっ!だいじょーうぶだよ!!!
おねぇちゃん、警察の人っぽい事やってるから!!まかせて!!!!」
『警察の人っぽいって何よそれ・・・・』
セスティアはリカを抱っこし、バイクに跨らせる。
転げ落ちないように、セスティアはしっかり・・・されど優しく後ろから支えていた。
その瞬間、今まで泣いていたリカが驚きの表情になる。
「わーーーーーっ・・・・・オートバイだぁ・・・・・・」
目をキラキラさせ、忙しなく顔をキョロキョロと見回していた。
『こんにちは、リカちゃん。
かわいいお星さんね、ワタシにもお星さん見せてくれる?』
AIリオが今までの暴言がウソのような優しい声でリカに話しかける。
「!!!!バイクさん、おしゃべりしてる!!!すごーい!!!」
リカは目を丸くし、コンソールのAIアバターをジッと見ていた。
「すごいでしょー!このバイクさん、おしゃべり出来るんだよー!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アタシには口悪いけど・・・・・」
セスティアの言葉は最後のあたりボソボソと。
そんな些細な愚痴を無視してAIリオがリカに話しかける。
『ねぇリカちゃん?そのお星さまってリカちゃんママがくれたの?
かわいいねぇ!!アタシにも見せてくれる?』
「うん!!バイクさん!はい!!!!」
リカが首の星アクセサリーをコンソールにペタリとくっつけた。
『国民基本データバンク アクセス・・・・・・・照合開始。
該当者:ホシノ・リカ(4歳)
現住所:セイジョ6-15-7・・・該当あり。
保護者:ホシノ・ルリ、ホシノ・イタル』
『――ふむ、事件登録はなし。お家の場所も確認できたわ』
当地よりのルート検索・・・・・・・・・・ルート確定』
『リカちゃん、ありがとうね。
かわいいお星さんがリカちゃんのお家までの道、教えてくれたよ!
アタシに乗って、いぬのおねぇちゃんといっしょに帰ろうか!』
そうAIリオが言うとリカの表情が花が咲いたような笑顔になる。
「ホント!おうちかえるの!?バイクさんといっしょに?」
リカがキャッキャとはしゃぐ姿を後ろで見ていたセスティアが関心したような
困惑したような、複雑な表情をしていた。
「いぬのおねぇちゃん・・・・・・・???なんで・・・・・??それにしても・・・
ほぇー・・・・・・・・・・星さんすごっ・・・・」
『アンタねぇ・・・・あの星型アクセサリーって照合チップが入ってるIDカードよ。恐らく、母親が何かあった時用に持たせてたんでしょうね』
「AI姐ぇさんもスゴっ!」
『アンタは観察眼を養いなさいな』
思わぬとばっちりを受けるセスティアだった。
その後、安全ベルトで固定したリカを抱っこして、そっとセスティアの前に乗せる
『しゅっぱーつ!』
「おー!!!」とリカ
「おーーーー!!!!」とセスティア
『いや、なんでアンタまではしゃいでんのよ』
リカの自宅までは、今までよりもゆっくりとバイクを走らせた。
道中は自分が迷子で泣いていた事も忘れたようにはしゃぎ
見覚えのある風景になると、リカは色々と説明をしてくれていた。
そして、自宅に到着すると、事前に連絡が入っていたため
玄関先で母親が首を長くして、到着を待っていた。
「ママっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ベルトを外すや否や、パッっと母親の胸に飛び込むリカ。
しばし、母子が抱き合っているのを見やって、静かにバイクを発進させた。
その音に気付いたリカは、千切れんばかりにブンブンと手を振り見送る。
「ばいばーい!!バイクさん!!いぬのおねぇちゃーーん!」
母親もリカを抱き抱えたまま、深々とお辞儀をして見送っていた。
親子が見えなくなり、セスティアがボソボソと聞く。
「AI姐ぇさんってさ、何でアタシとリカちゃんで、そんな対応違うのさ。
もっと優しく接してくれても良いじゃんよー」
ディスプレイのAIアバターが「やれやれ」という表示になり
『アンタ、4歳の子供と同じ扱いにしてほしいの?
わかったわ、いぬのセスティアお嬢ちゃん!』
「いぬ言うなーーーーーーーーーーーっ!!!!」
セスティアの叫び声がバイクの軽快なモーター音と共に
閑静な住宅街に響き渡った。
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