Ep.04【04】「こんなAIに誰がしたっ!」
『だから!何でアタシが指示したルート通りに走らないのよ!
これじゃナビゲーションの意味ないじゃない!!』
「でも、こっちのほうが早いんだってば!!!遠回りじゃんか!」
『あんた、これパトロールって解ってる!?
こんな裏道通って、何か意味あるの? 無いでしょ!!もぉ!!』
「あ~~~もぉ!!姐ぇさんよりウルサイぃい!!!」
セスティアはバイク搭載のAIと走行しながら、あれこれ言い合いをしていた。
周りから見れば、一人でブツブツ言う変な人に見えた事だろう。
「もーちょっとフレンドリーな感じだと思ったのにぃ・・・・・。
これじゃ姐ぇさんと回るのと変わんないよ!もぉ!」
『なんか言った!?』
「なーーーーーーーんにも!!!」
『そう。ならいいけど』
コンソールのAIアバターがジト目になっていたように見えたのは気のせいだろうか。
バイクは軽快に走り、住宅街付近まで来ていた。
その時、セスティアのエア・インカムに通信が入る。
「ティア姉様、ご無事ですか!?」
ステラが心配そうな声で聞く。
「うん!大丈夫!・・・・なんだけど・・・AI姐ぇさんが・・・・」とセスティア
「そのAIが何故リオ姉様っぽくなったか、何となくですが判明しました」
「え!わかったの!?なんでなんで!?」
セスティアはこの不思議な事態の答え合わせにご執心だ。
「恐らくですが・・・当初、試乗はリオ姉様と神様で行う予定でしたので
初期設定としてメイン搭乗者をNTPDの開発部門に登録する必要性がありました。
神様はそのメイン搭乗者としてリオ姉様を登録したようです」
「ふむふむ・・・・で?それがどうして・・・・??」
セスティアは未だ理解出来ていない。
「搭乗者の性格やクセといった物を分析して、ライドサポート時の修正パラメーターとして活用する、というのが今回のAIの特徴のようです」
「えっと・・・・・・あ・・・・うん・・・・うん?」
セスティアの雲行きが怪しくなる。
「で、本来なら搭乗者の性格や技術を精査したデータを活用するはずだったのですが
どうも、神様は「 神様視点で見た”リオ姉様” 」の性格やクセといった生データを
丸ごと送りつけたみたいでして・・・・・・・・っと、ティア姉様?」
説明の途中でセスティアの気配が薄くなったと思ったステラが声を掛けた。
「う~~~~~っ・・・・つまり、師匠が横着してリオ姐ぇさんの生データを送ったせいで、こんな風になっちゃった・・・・・・・・でOK?」
「あ・・・・・・はい、その認識でよろしいかと。
これはあくまでもわたしの想像ですが・・・その・・・神様の事ですから・・・・
「めんどくせっ!!」とか言われて、そのままかと」
「あー・・・まぁ・・・師匠だもんねぇ・・・」
「はい・・・・・・・・」
言ったステラはもちろん、セスティアでさえ納得した。
「ただ、かなりデフォルメが入ってるみたいですね。
試作品だからでしょうか?」
「わかんない・・・・体感だとリオ姐ぇさんよかウルサイかな」
「あー・・・では、ライドサポートをOFFにされては?」
ステラが提案する。
「いや、このままやってみるよ。
だって、このAIちゃん使うのもテストの内なんでしょ?なら使うよ」
セスティアはディスプレイのAIアバターを見ながら言う。
「わかりました。では、また何かありましたら、すぐご連絡ください。
こちらでもリアルタイムでサポート致しますので」
ステラの言葉にセスティアは安心を覚えた。
「うん!すーちゃん!頼りにしてる!!!」
「姉様、お気をつけて!」
そう言うと、バイクを軽く加速させパトロールを続行した。
「ぶえっきしゅ!!!」
一際大きなクシャミが静かな会議所に響き渡る。
なんだぁ?誰かウワサでもしてんのかぁ・・・?
ハヤテが無い鼻を擦りながら考えた。
ふと、隣を見ると、事案説明を行うリオが真剣な表情で資料を読み上げている。
「・・・・・・・という事態であり、被疑者への説得と投降を呼びかけましたが
一向に応じる気配もなく、やむを得ず実力の行使に至った次第です」
『実際は犯人が暴れて、お嬢の胸を掴んだんで、ぶん殴っただけどな(ボソボソ)』
「なお、その際に被疑者への過度な攻撃行動等は一切行っておらず
最小限の逮捕・捕縛術により、被疑者の確保に成功しました」
『数発ぶん殴って、顔とか身体をボコボコ蹴り倒していたけどな。
最後なんて犯人のヤロウ泣いてたし(ボソボソ)』
「ゴホン!・・・・・・・・・その後、NTPDの迅速な対応により、被疑者確保と
引き渡しは問題無く行われ、本事案は完了致しました」
『いぬ子と警官が殴るのを止めただけなんだよなぁ・・・お嬢羽交い締めにして。
しかも、それでも犯人蹴りまくってたけどな(ボソボソ)』
「い ち い ち ウ ル サ イ !!報告してんだから黙ってなさいよ!!!」
リオが隣のハヤテに大声で文句を言う。
会議場は静まり返り、参加者全員の視線がリオに集まる。
「あー・・・・・シスター・リオさん、会議中ですので無用な発言は控えるように。
ここはケンカをする場所では無いのですよ」
司会進行役のNTPD警備本部長から窘められた。
「あ・・・・・すみまセン・・・・」
リオが小さくなり席に座り、隣のハヤテを他人が見えないように小突いた。
「いてぇな!何しやがる!(ボソボソ)」
「アンタ!後で覚えときなさいよ!(ボソボソ)」
「ゴホン!!!」
本部長がこちらを睨みながら咳払いをし、参加者の冷たい視線が再び集まる。
・・・・・・・・・・・・・・二人は更に小さくなっていった。
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