Ep.04【03】「AIリオ起動!」
「これで基礎設定は完了ですね。」
ステラがタブレットを見ながら試作バイクのセッティングをしていた。
「おー!これでAIちゃんとおしゃべり出来るの?」
やはり、説明にあった”多少”の部分が欠落しているようで
「えー・・・っと、おはよー!!AIちゃん!!!!」
バイクのディスプレイに向かって挨拶し始めた。
その姿を見てステラは少々困惑した表情になる。
「姉様、まずは再起動してからです。
再起動が終了したら、そちらのスタートボタンでモーターが起動します」
「にゃははは・・・あーそうそう、再起動ね再起動 ♪」
セスティアは照れ隠しなのか右手で後ろ頭をぽりぽりと掻いていた。
再起動が終了し、早速モーターを起動させる。
ファントムとは違い、低めのモーター音がガレージ内に轟く。
コンソールにも各種メーターが表示され、AIの起動音も鳴り響いた。
「おーっ!動いたぁ!!」
セスティアは大喜びし、ステラは起動チェックを行う。
「ティア姉様、起動成功です。これで、何時でも動かせますよ」
「OKぇ!んじゃ、早速グルッとこの辺、パトロールにでも回ってこようかな」
セスティアがアクセルを軽く回すと、モーターの回転数が高まり低い振動がバイクを揺らす。
「姉様!本当に大丈夫ですか!わたし、正直心配です!」
エンジン音で聞こえにくいと思ったのか、ステラには珍しく大声で声を掛ける。
「だーいじょうぶだから!!すーちゃんもオンラインでモニターしてて!」
セスティアも少々大声でにこやかに返す。
「はい!!!わかりました!!!」
やはり不安で今にも泣きそうな表情のステラ。
その時、セスティアが身を乗り出して、ステラに近づいたかと思うと・・・・
チュッ ♥
セスティアはステラの唇に軽くキスをする。
「 ~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!! 」
ステラが思わず両手で口を押さえ、真っ赤な顔で後ずさった。
「んじゃ、行ってきまーす!!!!」
そう言い残して、バイクはタイヤスピンをさせながら
けたたましい音と共に猛スピードで発進して行く。
残されたステラは、真っ赤な顔で未だ両手で口を押さえたまま、呆然としていた。
「えーっと・・・確かこれを押して・・・・よし、これでライドサポートOKっと」
セスティアはバイクを走らせながら、コンソール操作を行うという、危なっかしい事をやっていた。
すると、コンソール画面が切り替わり、簡素なAIアバターが小さく映し出される。
「現在、ライドサポートモードです。
モードを維持する場合、そのままハンドルのみ保持してください」
非常に平坦で簡素な音声が流れる。
「おおお!これがAIフルサポートなんだーっ ♪
えーっと、アタシの音声って認識出来てる?」
わくわくしながらセスティアは聞く。
「音声入力問題なし」
やはり、簡素な受け答え。
「ねぇねぇ?なんかさ、聞いてた話と違うくない?
もっと、おしゃべり出来るって聞いてたのにぃ~。
あとさ、ちょっと遅くない?せっかくのバイクなんだし、パーっと行こうよ!」
言うが早いか、セスティアはアクセルを開け、加速し始めた。
先程まで横に並んで走っていた、自動運転の車をグングンと追い抜いてゆく。
「ひゃほーーーーぃいい!!!♪」
セスティアは風を切って走る爽快感で有頂天だ。
「法定速度を20%超過しています。
現在は追跡活動中ではありません。直ちに減速してください」
AIがエア・インカム越しにセスティアに警告するが無視される。
「現在速度83Km/hから加速中。
当道路の法定速度は50Km/hとなっています。
直ちに減速してください」
AIが何度も警告を繰り返す。
「現在速度92km/h・・・・・・直ちに減速して・・・」
AIボイスが微妙に変化していく。
「あれ??なんか声質が・・・姐ぇさんっぽい?
まっ、気のせいっしょ!!ひゃほーぃいい!!! ♪♪」
バイクは加速を続けていった。
その時・・・コンソールに小さな警告文が表示される。
【人格参照モード・・・・・・・オート起動完了
人物参照・・・R-07A】
「よーし!んじゃあ、フリーウェイにでも行って、かっ飛ばそうかなぁ!!」
セスティアが満面の笑顔でアクセルを更に開けようとした時・・・
『いい加減にしろ!!!このバカ!!!!
スピード緩めろっていってんでしょ!聞こえないの!!あほ犬!!』
聞き慣れた声が響き、思わずアクセルを緩め減速した。
「んなっ!?・・・・・姐ぇさん!!!!?????」
だが、そんなはずはない。
リオは今、ハヤテと一緒に退屈な会議に出席中のはず。
気のせいかなぁ・・・・と思いつつ、再びアクセルを握り込もうとすると
『だから何度も言わせんな!!!
法を守りなさいって言ってんでしょ!!アホ!!!』
ビクッ!と反射的にスピードを再度緩め、路肩にバイクを停止させた。
セスティアがコンソールを見ると、簡素なAIアバターが怒ってるようなグラフィックに変わっていた。
「あの・・・・もしかして・・・・いまの・・・AIちゃん?マジで??」
恐る恐る聞くセスティア。
『そうよ、アタシが言ったのよ。
あんたが調子に乗ってスピード出すから、何度も警告出してんのに無視してるからよ。
事故ったらどうすんの!!アンタ一人の話じゃないのよ、解ってんの!!??』
「えーーっ!!なんで姐ぇさんっぽくなってんの!?」
セスティアは思わず路上で頭を抱えてしまった。
「へくしゅっ!!!!!!」
リオは思いっきりくしゃみをした。
「ん?誰かウワサでもしたかな?」
鼻をコシコシしながら考える。
周りは静かに講習を聞いていて、水を打ったように静か。
講師の声だけが講堂に響いていた。
「まっ、いっか」
リオが向き直ると、誰かが肩を叩く。
「でよ、その前に言う事あんじゃねーか?」
ハヤテが小さな声で言う。
「ん?」
リオがハヤテを見ると、思いっきりくしゃみが掛かったようで・・・
「くしゃみするなら、口を抑えるとかしろよ!きたねーな!!!」
「あっ、ごめん・・・」
リオは思わず口を手で塞ぐ。
「はい、そこ。静かにして!」
「「はーい・・・・・・」」
リオとハヤテは講師に怒られ、小さくなっていった。
「ねぇ!すーちゃん!!AIちゃんが姐ぇさん化してんだけど!なんかそういう仕様なの!?めっちゃ怒られたんだけど!!!」
未だ路上に停車しているセスティアがステラに連絡していた。
「え?リオ姉様にですか?? いえ、そういう機能は無いはずですが・・・・
こちらでも調べてみますので、一旦帰られますか?」
そうステラに言われるが
「ん~・・・もう結構遠くまで来てるから、このまま試乗続けるよー。
何か解ったら連絡ちょうだい」
「わかりました。
もし、AIに不具合があったら、すぐに路肩に停車してくださいね」
ステラがディスプレイ越しでも解るくらい、心配そうな表情をしていた。
なので、努めて明るく
「だいじょうぶだって!んじゃ、何か解ったら教えてーっ!」
そう言うと、セスティアは通信を切ってしまう。
「ま・・・・・・大丈夫っしょ ♪」
そう言うと、また路上へとバイクを滑らせていった。
『・・・・・・まったく、懲りないわね、このアホ犬』
そう呟く声はセスティアの耳には届いてなかった。
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