Ep.03【02】「ジャンク屋にて」




「とは言えだ、ウチもそんなに裕福でもねーんだから、予算は10万だ。

それ以上は逆立ちしたって出ねぇからな!」

というハヤテのお達しにより、頭を悩ました結果・・・


「まぁ・・・仕方ないわよねぇ・・・10万じゃ・・・」

リオがポツリと言う。

「でも、なんか宝探しっぽくないですか?これっ!♪」

完全に遊びモードのセスティア。

「二人とも気合入れて探せよぉ〜!何としても掘り出し物探すんだ!」

何やら気合充分なハヤテ。

 

三人は湾岸地区の端にあるジャンク屋に来ていた。

店・・・・とは言っているが、外から見るとただの廃材置き場にしか見えない。

確かに設定した予算額では新品のドロイドなんて頭金にもならない。

中古でも大して変わらず、結局の処、ジャンクヤード等から格安で買いたたき

自分たちで修理する・・・という事に落ち着いたのだった。


「ここはネットにも何処にもマトモに住所も屋号すら出てねぇ・・・・

まぁ、そういうお察しの店だ。

こういう所にこそ、ワケありの物だが良品が転がってるってぇもんだ」

訳知り顔でハヤテが言う。

「ホント~??」

と、リオがひどく訝しげな表情をしてハヤテの顔を見ていた。

「ま、こんな店の前でグダグダ言っても仕方ねぇ。入るぞぉ」

ハヤテがカチャカチャと足を鳴らしながら店へと入ってゆく。

リオとセスティアは顔を見合わせ、まぁ・・・仕方なしといった感じで後を追った。



店の中は薄暗く、左右にはうず高く積み上げられた機械たち。

ドロイドやドローンはもちろんの事、用途不明な機械等が雑多に積まれ

来る者を威圧するかのよう。


「あ~・・・・・?誰だぁ〜??勝手に入んじゃねぇぞぉ〜・・・コソ泥かぁ?」


奥からノソリと出てきたのは、汚い服装の背の低い小太りの中年男。

禿げあがった頭髪、爛れた目つき、咥え煙草に腕には龍を象ったタトゥー。

片手に安酒を持ち、近づいただけで強烈な酒臭さが周囲に漂ってきた。


「アンタがここの店主かい?ちょっと中を見させてもらうぜ」

ハヤテは臆することなく店主に言う。

「あ~?なんだオメェら警察かなんかかぁ?あ?」

店主が明らかに嫌そうな表情で問うてきた。

「警察じゃないわよ。ちょっと探し物をね」

リオが毅然な態度で、腰に手を当てて言う。

「探しもんだぁあ??? てめぇら・・・・何処のもんだ・・・・?」

店主はリオの前に立ちはだかり、酒臭い息で捲し立てる。


だが・・・・


「ほぉ・・・・・その腕のタトゥー・・・・見た事あるな。

こう見えて、オレもこの娘(こ)も元・警察関係者でなぁ・・・何なら当ててやろうか?」


ハヤテが低い声で店主に詰め寄った。


店主は言葉を聞くと、突然何かに怯えたような表情となり、顔ひきつらせながら

「勝手にしろ!」と大声で言い放ち、店の奥へと足早に消えていった。


「さぁーて、探すぞぉお!」

気を取り直し、ハヤテの号令で三人がお目当ての家政婦ドロイドを探しだした。

 


そして、探索開始から2時間が経過していた。


店は入口こそ狭いが、奥には広大な敷地が広がり

そこにも所狭しとジャンク品がうず高く積まれていた。

探索するハヤテの元にセスティアが駆け寄ってきて小声で話しかける。

「師匠・・・ここ、かなりヤバイですよ。

パッと見ただけでも、アタシがNTDF(軍)で戦った事のある

敵ドロイドとか自爆ドローンっぽいのまで転がってる!!」

彼女には珍しく、かなり真剣な表情で伝えてきた。

「ああ、確かにな。そこに転がってるのも、恐らくNTPD(警察)のドロイドだぜ」

「姐ぇさんも言ってた・・・『証拠はないけど、NTPDなら一発で飛び込む案件よね』・・・って

・・・・なんなの・・・ここ・・・・・?」

 

ハヤテは何となく察しがついていた。

恐らく店主はオールド・トーキョーから「資源」として

ここに密輸しているのだろうと。

オールド・トーキョーからの廃材は再生可能資源として

ノヴァ・トーキョーに持ち込まれる事が多い。

当然、武装した物や法に反する物は輸入禁止だ。

だが、その監視の目は甘く、犯罪の温床になっている事はよく知られていた。


「まぁ・・・見てない事にしとけ。色々と面倒だしな」

ハヤテはセスティアを見ながら言う。

「え・・・・?う・・・うん、わかった・・・・」

何となく納得出来ない風ではあるが、彼女なりに理解したのだろう。

また、倉庫奥の探索へと戻っていく。


「ま、遅かれ早かれ、ここは何かしらのトラブルには巻き込まれるだろうがな・・・」


ハヤテはポツリと独り言を漏らした。



それから更に数時間・・・・

3人とも埃や油ですっかり汚れきってしまい、陽も傾き出した頃。

リオが倉庫の一番奥でシートを被った、ある物に気づいた。


「ん?なにコレ?」


シートを剥がすと・・・・・

そこには、この店に全く似つかわしくない「物」の姿が目に飛び込んできた。


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