Ep.02【06】「なんか色々あって・・・」






ドアを開けると、そこにはハヤテが待ちかねたという表情をしていた。

「おぅ、お疲れぇ・・・・って・・・どしたぁ?ふたりとも?」

ハヤテは倒れる寸前という顔をした二人に驚きを隠せなかった。

「もうね・・・・無理・・・・・」とリオが力無く言う。

「限界っす・・・・師匠・・・・・」とセスティア。

店内から漏れ聞こえる歓声と熱気で、何となく察する。

「あー・・・まぁ、ああいう連中のテンションの高さはなぁ・・・うん」

思わず同情するハヤテ。

そう言ってる最中、リオもセスティアも長ソファーに溶け込むように崩れた。

「ちょっと・・・・ゴメン・・・・もう限界・・・・・休憩させて・・・・・・」

「今はなーんにも考えられないデス・・・・師匠ぉ・・・・」

疲労困憊、心身衰弱・・・時間にすれば3時間弱なのに・・・・とハヤテは思う反面

11時の開店から、ずっと慣れない接客業をやったのだしなぁ・・・・・とも思う。

だが、ここは心を鬼にして進めるべきだ!・・・・と決断する。

「疲れてるのは解るが、まずは本業が先だ!って・・・おい!?」

「ゴメンちょっと寝る・・・・・」とリオ

すでに小さなイビキをかいてるセスティア

こりゃイカン!とハヤテが二人を起こす。

「ま・・・!待てって!報告が先だ!起きろーっ!!!!」

「「えーーーーー・・・・・・・・・」」二人の文句がハモる

「簡単に済ましてやっから、ちょっとだけ耳と頭働かせろ」

「「えーーーーー・・・・・・・・・」」

ほぼドロドロの状態の二人は最後の気力を振り絞る。

こりゃいかん・・・とハヤテは要点のみを纏めた。

「あのサル店長は雇われで、本物の店長はアンジー・ベナンバって野郎。

で、売上32%がピンハネされてる。」


「「へー・・・・・・」」

「32%ぁ・・・・アタシらの達成金よか低いんじゃない~」とリオが溶けながら言う。

「え~、サル店長・・・カツラ代も抜いてるんですか~?」と液状のセスティアのご意見。

ホントに大丈夫かコイツら・・・・と思いつつもハヤテは続ける。

「ピンハネしてんのはサルとアンジーの二人でやってる・・・が其処はそもそもどうでもいい・・・・この店の元経営のほうが問題だ」

「それぇとウチらへの依頼と関係あるんでしゅか~」とセスティア

いかん・・・・ ひと言言う度、ホントに溶けかかってやがる・・・・ハヤテは更に急ぐ。

「ここの経営は「紅蛇(こうだ)」ってマフィア組織で大元まで遡ればオメガ・シンジケートまで行く。

で、今回俺等に依頼してきた「イトウ商事」は紅蛇と対立するヤクザの表向きの通名だ・・・って・・・・・・お前ら理解してるか?」

「解ってるよー・・・・紅蛇とイトウがライバルなんでしょ~・・・・で?」とリオが急かす。

「ホントかよ・・・そのイトウ商事は「イトウ組」な訳だが、組長のタカシ・イトウの一人娘が救出対象のミカ・イトウってこった・・・・・ここまで理解出来たか?」

「だいじょうぶ~~~~~・・・」と眠そうなリオ

「らいよーふれふ・・・・ごひゅいんしゃまぁ・・・・」と、ほぼダメなセスティア

無いこめかみを押さえながらハヤテは続ける。

「簡単に要約すると「家出した娘の奪還に俺達はまんまと利用された」

って事だ・・・OK?

で、その件のミカとサル店長は恋仲ってのも解った」

 

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・は?」」

 

 

その一言で二人はでガバッと身体を起こし、目を覚ました。

「あのサルと?ミカが?ミカって、目ぇ腐ってんじゃないの!?」

「うわー・・・・ミカちゃん趣味わるい・・・・でもサル店長、ミカちゃんにはデレデレでしたよね?・・・・・・でも・・・・うゎぁ・・・・」

「なんだお前ら・・・・・保護対象の趣味にケチつけてんじゃねえよ。問題はだなぁ

同棲中で、しかも同伴出社で確保困難って事だ。」とハヤテは呆れ顔だ。

「そういう事で帰りに確保って手は使えんかもしれねぇな」

「でも最悪、強引にでも確保してNTPDに引き渡しちゃえば良くない?」

リオは色々と考えながら提案する。

「ま、最後の手段だな。」とハヤテ

「先にそれとなく聞くってのは無し?」とセスティア

「無理だろ。同棲までしてるのに説得で帰るなら、そもそもこんな事にはなんねーって」

ハヤテは腕組みをして考え込んでいた。

「でも、面倒だね。もし、ミカがイトウ組の一人娘って紅蛇が知ったら・・・・」

とリオが当然の疑問を投げかける。

「家出・・・娘・・・利用ぉって・・・ミカちゃんお嫁に行きたくないんですか~?」

セスティアはまだどことなく頭が寝ているようだ。

「違うわよ!イトウ組の箱入り娘が紅蛇の店にいるって、絶対ヤバい状況よ」とリオ

「んじゃあ、サル店長が紅蛇を裏切ったって事?」とセスティアが続ける。

「なら何で今もここの店長代理やってる?ピンハネまでして・・・」とリオが返した。

「結婚資金かな?サル店長もミカちゃんも」

「店の用途内訳に『ラメスーツ改装代』とか『金髪カツラ予備10着』って項目があるから、それとは別に何かあるな・・・ただ、金額がな・・・」

「ここの売上のピンハネ分、32%の一部だよね?」とリオが聞く。

「5万なんだ」とハヤテ

「「しょぼっ!」」思わずリオとセスティアが声を漏らす。

ミカがこの店に留まる理由は何か、紅蛇はミカがイトウ組の一人娘と知っているのか・・・

そうこう考えてるうちに控室のドアが勢いよく開き、満面の笑顔でセリアが言う。

「二人とも初日で疲れてるのにゴメンねー♥ 

今から御主人様と「じゃんけんキスゲーム」の時間だからステージに来てねー♥」

 

「「「・・・・・・・・・・・・は?キスゲーム???」」」

 

リオとセスティアは猛烈に嫌な予感がしていた。

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